Mobilesuit Gundam Magnificient Theaters
An another tale of Z ATZ資料集(34)




14.ムラサメの記憶

 第三十八話でジェリドに撃墜されたエマさんですが、四十七話ではちゃっかりエウーゴに復職しています。その間の彼女がどうだったか、食人植物に食べられかけるというのもありましたが、他にも色々書いてはいました。彼女と四部で再登場するフォウ・ムラサメの記述が主ですが、彼女の記述は断片的で、まとまった話になったものはありません。





〇〇九八年六月一〇日
サイド2 アルカスル周辺宙域


ーッ!ピピーッ!、ビームライフルに狙われている警報アラームの音がだんだん短くなる。脈拍が上昇し、額に汗を浮かべたエマはペダルを踏んで機体をロールさせ、操縦桿を思い切り倒した。大柄な機体に重装備のアッシマーはバレルロールで背後に食いついて来る。目の前にコロニー「ミンゾ」の姿が飛び込み、アラームの音が最高潮に達した時、エマは脱出カプセルのハンドルを引いた。
 カッ!
 射出の際に電源が切り替わったため、操縦席のモニタが一瞬消え、射出Gと再び点灯したモニタで彼女が周囲を確認した時、彼女の乗っていた機体はビームライフルの直撃を受けて爆発四散していた。その上空を彼女を撃墜したアッシマーが通過していく。しばらく回転し、躯体に衝突する破片の音が止み、周辺が静かになったところでモニタを消した彼女はバックパックを背負い、接続されていたハーネスや酸素供給装置のチューブを外すと、カプセルのハッチを開けて外に出た。すでにかなり近づいている。ミンゾがどの勢力の所属かは彼女は知らなかったが、遭難者がいることを知れば少なくとも救助はするはずだ。エマはカプセルの外蓋を開き、中から光反射性の微粒子を放出するとカプセルの周辺に漂いつつ、救助を待った。





 作者としてはZZの「幻のコロニー」みたいな話を考えていたのですが、、

〇〇九八年六月一〇日 二二時
エウーゴ艦隊 戦艦「ラーディッシュ」


覚だった、敵の一機が離脱しなければ、あのまま撃沈されていたかもしれない。新型の攻撃型モビルアーマーの話は聞いてはいたが、今回の戦いでは完全に敵に先手を取られた。ヘンケンはぼやきつつ、行方不明の戦隊長の消息をオペレータに尋ねた。ラーディッシュの艦載機六機のうち四機があっけなく撃墜され、腕利きのモビルスーツ戦隊長が行方不明になったというのは指揮官として相当情けない話である。
「サイド2の連邦警備隊からの報告でも、エマ少佐の足取りは不明。遺棄された脱出カプセルがミンゾ付近で発見されましたが、少佐の生死は不明です。」
「ミンゾ、ね、これは少し厄介なことになるわ。」
 情報部のレコア中尉がオペレータの報告に怪訝な顔をする。
「だから新鋭機を早く配備しろと言っていたんだ。」
 ヘンケンが憤懣やるかたないと言った顔で司令官のブレックスやエウーゴ本部に対する不平を言った。ティターンズはどんどん新型機を実戦配備しているというのに、月の連邦警備隊の下部組織だかなんだか知らないが、エウーゴの装備はいつまでも遅れている。
「だいたい情報部がもっと早く、、」
「艦長、アーガマから通信です。」
 レコアに日頃の不満をぶちまけているヘンケンの目前のモニタに渋面をしたブレックスの顔が出た。艦隊司令官は彼の前ではいつも渋面だ。開口一番、司令官はエマ撃墜について艦長を非難した。
「エマ少佐が戦死したそうだな。」
 誰が伝えたんだ。よそ見をしているレコアを恨むような視線で睨むと、ラーディッシュの艦長は畏まった顔で質問に答えた。
「戦死かどうかは分かりませんが、戦闘中行方不明(MIA)であることは確かです。」
「装備と指揮の悪さで優秀なパイロットを失うことは避けたいものだな。」


 クスクスと笑っているレコアを睨むと、ヘンケンは捜索隊を出して捜索すると返答し、ブレックスは艦長に今後はモビルスーツ隊と艦隊の連携を密にするよう言い渡すと、他にも何か言いたいことがありそうだったが、通信はそこで切れた。
「やれやれだ。」
「捜索には私が行きますわ。あのコロニーは、その、、艦長の手には負えないと思います。」
 少し遠慮するようなレコアの顔にヘンケンが不服げな顔をする。
「君まで私を無能扱いするのか。」
「そういうわけではございませんけれども、この任務は私の方が適任と思いますわ。」
 下艦許可を求める中尉に捜索を許可すると、ヘンケンは膨れ面をして艦長席に座り込んだ。哨戒任務は継続しており、失われたモビルスーツについてはブレックスが補充を約束したことから、当面の間、彼はこの宙域にとどまることになる。






〇〇九六年六月一一日
ストーン・リッジ


ム・シチで派遣会社に紹介された「株式会社ハジャック・クリーンサービス」のビジネスはコロニー清掃と廃品回収業だが、清掃といっても内戦で荒れ果てたコロニーに清掃業者のニーズがあるはずもなく、廃品回収といっても回収された残骸は文字通りの意味のくず鉄で、オンボロの回収船を操っているゲモンがどうやって生計を立てているかはジュドーにも謎であった。それでも回収業に従事して三ヶ月目の彼の口座にはバイト料がちゃんと連邦フェデリンで支払われたし、その金額自体、アルカスルのオーブル労働者の平均月収から見れば目の玉が飛び出るような金額だ。
「二ヶ月と半分付き合ってみて分かったが、お前は信用できる奴だ。」
 ゲモンはそう言い、例の回収船を操船して彼をヘルメス・ピーク近くの暗礁に案内した。船には他にジオンから出稼ぎに来た数名の労働者やアルカスルの沖仲仕などがいるが、社長によると連中には航路については教えていないという。ジュドーはゲモンの指図でテレグラフを操作し、六分儀を操って船の座標を宙図に記入している。
「男一匹この乱世で暮らすにゃ、人に言えねえ飯の種も持ってなきゃいけねえ。」
 ヘルメス・ピークの緑色の光を「見るな」と大きな手で覆ったゲモンは今、船は強放射線宙域の限界スレスレに来ていると彼に言った。古い宙図には宙域を直接突破するルートが載せられているが、その宙図は被曝を恐れたアルカスルの業者が想像で記入したもので、本当のルートは別なのだという。
「宙図のルートはここよりも簡単に突破できるが、被曝したんじゃ元も子もねえ。」
 ゲモンの言葉は後に的中し、数ヶ月後にティターンズがこのルートを使って暗礁帯縦断を試みたが、この時は指揮官のアヤチ中将を含め、多大の犠牲者を出す「ヘルメス越えの悲劇」と呼ばれる惨事になっている。これまで行ったこともない危険なルートを敢えて操船する社長にジュドーはピンと来た。
(密輸だな。)
 ジュドーたちの船は間もなく暗礁を抜けた。会合点にはそれらしいザウエルX型の宇宙艇が到着しており、船腹に「ガウ・ギラス」と書かれた船にゲモンは発光信号を送った。






〇〇九八年六月一五日
コロニー「ミンゾ」 ムラサメの山荘


 この話はもう少し膨らませても良かったかもしれない。

リプスで除隊したことは聞いていたが、また宇宙に出てきているとは知らなかった。コロニーの丘にある一見ロッジ風の宏壮な邸宅の一室でエマ・シーン少佐はバルコニーに立つ若草色の髪に色白の女性の立ち姿を眺めて思った。
「すっかり回復したみたいね。」
 若草色の髪の女性、被弾してアレキサンドリアに収容された時のムラサメは全身火傷で、ありえないことに被弾して破れたRX−178の装甲の破片をその身に受け、暴走した核
(つづく)




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