Mobilesuit Gundam Magnificient Theaters
An another tale of Z ATZ資料集(28)




11.戦え!ビシェッツ小隊

 第三十三話の割愛部分、ATZの場合、尺の都合で先が見えているような戦いはモビルスーツを発進させるだけとか、主砲を撃って終わりというのが少なからずあるのですが、実は少しは書いています。





〇〇九八年三月二〇日
モビルスーツ「リック・ディアス」 ビシェッツ中尉機


進するエイジャックスから発艦したビシェッツの小隊はすぐに「ギア」のティターンズ機と戦闘になった。部下のガリバルディ三機を率い、ビシェッツは飛来するハイザックの編隊に突進する。ゲアリらも突進し、戦艦対戦艦の砲撃戦の最中、ソロモンとティターンズのモビルスーツ隊は乱戦になった。エイジャックスより大きな「ギア」はより多数の艦載機を搭載しており、四〇〜五〇機のハイザックが対空対艦さまざまな装備で旗艦目がけて突撃する。
「おっと!」
 不意にビシェッツの目の前をビーム兵器の火線が走った。「ギア」からのものではない。コンピュータがフル稼働で機影を解析し、過去にこの機体が幾度となく交戦した敵機のデータが弾きだされる。
「RX−178、ガンダム!」
 この名前の響きはパイロットたちにとっては特別な響きを持つ。連邦の「ネモ」も初代RX−78とほぼ同性能の機体だが、連邦が最高の技術を結集して作り上げた最新鋭機というのがビシェッツらの持つこの機体の印象だ。強敵の出現に彼はすかさず麾下の三機に包囲網を敷くよう指示する。
「うわ、ガンダムだよ。」
 動揺するバベッジ少尉らをビシェッツが叱咤する。
「ただのガンダムだ、ゲアリ中佐たちは「ギア」の攻撃に向かっている。俺たちでこいつを落とすぞ! かかれ!」
 そう言うとビシェッツは彼にビームを撃ちかけた機体にライフルを撃ち込んだ。巨体に似合わず俊敏な動きでそのビームはかわされたが、アフターバーンを点火し、突進するビシェッツは敵機との間合いを詰めた。背後からはレフチェンコらの二機、そして側面からはバベッジの機体がガンダムを襲う。






モビルスーツ「ガンダムマークU」
ジェリド少佐機


いディアスを中心にしたソロモン機の迎撃を受けたジェリド少佐は対艦装備を持つパク曹長のハイザックに戦艦を攻撃するよう命じた。
「パク曹長、俺がこいつらを引き受ける、貴官らはエイジャックス攻撃に向かえ! むっ、こいつは!」
 センサーがけたたましく鳴り、急速に接近する漆黒の機体に彼は強烈なプレッシャーを感じた。彼がスーパーライフルを向け、急進するディアスが横に飛んだ瞬間、彼は側方からガリバルディ三機の銃撃を受けた。
「姑息な手を使う!」
 ジェリドはスロットルペダルを蹴飛ばしてそれを回避したものの、マークYの一弾が避けきれずに彼の機体の右足に命中し、耐ビーム装甲と荷電粒子力場が悲鳴を上げる。バルカン砲でガリバルディを牽制し、ライフルを構えた彼の機体の目前を彼の真下から急上昇したディアスのビーム剣の光条が擦過する。追撃するジェリドのビームをかわし、大柄な機体はアフターバーンを点火して彼の後ろに廻り込む。
「ガンモード!」
 ビーム光が機体の直近で拡散するのを見たジェリドはライ


フルをレールガンモードに切り替えた。彼の機体と同じく、目の前の機体は高機能な対ビーム装置を備えており、通常のビームライフルは通用しない。それは彼は地球上空の戦いで知っていた。あの時は赤い機体だったが、今度は正規軍用の黒だ。ジェリドはブーストを上げた。一瞬隙を見せたガリバルディの一機に彼はレールガンを撃ち込んだ。






ソロモン艦隊 戦闘巡洋艦「エイジャックス」

ニオン潜宙艦の雷撃で戦いの機先を制したエイジャックスは操艦の自由を奪われ、反撃も後手に廻っているドゴス・ギアに対して有利に戦いを進めている。マーロウは速度を維持しつつ、「ギア」を囲繞するように艦の旋回を命じた。敵の命中率が低いことを見て、定速定舵角で射角を固定したマーロウの艦は命中率も散漫な砲撃を繰り返す「ギア」より優っているようだ。刻々と位置を変える艦にギアの旋回砲塔は追いつけず、総合火力では優っているものの各砲塔の連携が不十分で火力の集中ができないでいる。戦いは一方的で、すでに十数発を被弾した「ギア」に対し、高速で旋回しているマーロウの艦はほとんど傷ついていない。
 モビルスーツ隊による援護も効果的に作用しているようだ。ゲアリ中佐らが対地バズーカで戦艦を爆撃しているが、残りの半数であるマクガイアの防空隊もハイザックをほとんど寄せつけていない。
「ライヒとキムの駆逐艦隊(キングフィッシュ)があれば、この場でとどめを刺すのだが。艦長はガディ・キンゼーだな、ティターンズであの大艦をここまで動かせる艦長は他にはいない。」
 砲撃を監督しつつ、炎上する戦艦を遠目で見たマーロウはブッダ艦長に言った。H級駆逐艦、新型のハンター級は「ギア」でも竜骨を折って沈めうる六八〇mmの重ミサイルを搭載している。
「でしょうね、土星以来の因縁です。今のところは三戦二勝で我々が勝っていますが。」
「三回も勝つのは悪いから、今回は一分けにしよう。適当な時期に砲撃を切り上げ、シャリアに帰還する。」
 余裕さえ感じさせるほどの落ち着きぶりで、マーロウは艦長に指示を下した。






戦艦「ドゴス・ギア」

くティターンズ本部」、ドゴス・ギアはティターンズの威信を賭けて建造された全長四八〇メートル、一八万トンの巨大戦艦だが、思わぬ伏兵の出現で苦戦を強いられている。元々エイジャックスは彼らの艦より高速である上に、ユニオン潜宙艦の雷撃で左舷のスラスターがほぼ全壊し、エンジンも被弾したことから、艦位を保てない「ギア」は高速で悠然と彼らの周囲を旋回するエイジャックスのつるべ撃ちに遭っている。すでに一二基ある主砲塔のうち八基が全壊し、残る砲座も半数が壊滅している。大破し、火災を発生した艦で、艦橋のガディ大佐が乗組員を叱咤している。
「本艦の方が大きく、砲の数でも優っているではないか。あの程度の船、なぜ撃ち落せぬ!」
 煙の立ち込めた艦橋の司令席で、クロスボーン軍司令官鉄仮面が不利な戦況に苛立ちを見せている。これも数では優っているはずのモビルスーツ隊も、エイジャックスの高速と艦載機隊に阻まれ、ほとんど艦にダメージを与えることができないでいる。エイジャックス自体の防空火力もかなりあるようだ。
「第二、第四エンジンの修理はまだか!」
「右舷一五番砲塔大破!」
「第四格納庫炎上中!」
 艦載艇の格納庫に被弾したことを知ったガディは応急班に消火を命じた。艦のダメージは急速に拡大しており、このままでは撃沈もありうる状況になっている。ガディはタイロンのティターンズ基地に応援を要請した。
「退却すべきではないのか。」
(つづく)




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