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An another tale of Z ATZ説話集(178)




49.ヘインズ級駆逐艦

 ソロモン共和国の駆逐艦開発はやや混乱しています。後でインタビューも付けますが、紆余曲折を経て開発された対潜護衛艦ヘインズ級の挿話。アガスタ派遣艦隊は最初の駐留時にはヘクター級、後にハンター級、ヘインズ級と護衛艦を変更しています。





〇〇九八年四月
ソロモン艦隊 巡洋艦ポインター


 ハイジャック事件が解決してすぐに、シャリアに待機していたライヒらの艦隊に出動命令が下った。ソロモン共和国が正式にクロスボーンに宣戦を布告し、付近の宙域を脅かす潜宙艦隊に対し掃討命令が発令されたためである。シャリアから出港したライヒの艦隊はサイド4ユニオンの駆逐艦「ル・グリュエ」と合流した。エーグル級駆逐艦は潜宙艦を探知しうるソナーと対潜ミサイルを備えており、その点、ソロモンの艦より優れている。ライヒらの艦に後続し、シャリアに避難していた輸送船団が続行する。
「ここはユニオンに一歩譲るが、我々の軍隊も捨てたものじゃない。」
 ライヒは副長のハリスに船団の後衛についたヘインズ級駆逐艦について言った。後ろ半分に飛行甲板を持つこの新鋭駆逐艦はエーグル級同様、ユニオン製の対潜機「ボリノーク・サマーン」を着艦させることができる。作戦本部は一〇機を購入し、建造が中止されたヘクター級駆逐艦の船殻を改造して母艦となる新鋭駆逐艦を就役させた。ヘインズ級は派遣が決定された二月以前には図面さえ存在しなかった軍艦である。聞けば本部ではキーゼ博士が潜宙艦隊に対抗しうる共和国艦隊の装備改善の陣頭指揮に立っているという。本国の対応の速さにライヒは舌を巻いた。
「いずれにせよ、袋叩きだ。」
 政府の外交も作戦本部も対応は文句の付けようがない。あとはライヒら作戦要員が実際に潜宙艦に打ち勝ち、これを掃討しうるかに掛かっている。






戦闘巡洋艦「エイジャックス」

 まるで連鎖反応(チェーン・リアクション)だな。派遣艦隊の司令として自分がシャリアに着任したのが今年の二月二九日、それから「ギア」との戦いがあり、副大統領誘拐事件があ


り、連邦大統領によるクロスボーン討伐が決められたのが四日前の話。わずか三〇数日の間にサイド2情勢の有様はまるで変わったものになっている。
 ソロモン艦隊が空母に命じてフロンティア01の潜宙艦基地を叩いたことは大きな影響がある。と、マーロウは思った。これによりクロスボーン潜宙艦隊は工場と備蓄を破壊され、強力な「Gミサイル」を使えなくなった。現在のクロスボーン潜宙艦は通常弾頭を装備している。この弾頭は威力が小さく、艦隊の脅威たり得ない。また、「ギア」を排除したことは外交で得点を狙っていたバンカー大統領の介入の口実を容易にした。
(自分の取った作戦と副大統領誘拐の二つが相乗効果を生み、結果としてクロスボーン国それ自体を抹殺してしまった。これは首相は企図していなかったことだし、おそらく、自分にも責任のある話だろう。)
 おそらく、クロスボーン国は滅びる。サイド2の不穏要因が一つ取り除かれるのは嬉しい限りだが、それだけで済むとも思えない。占領とその後の統治は別の問題だ。
(条約に従い、最小限の戦力でアガスタへの内戦の波及を防ぐだけの計画が、結果として第三艦隊という、とんだ化け物を呼び込んでしまった。人間は全知全能ではないのだな。)
 アガスタ共和国におけるソロモン艦隊の駐留期限はまだ切れてはいない。小声でボソボソと呟いているマーロウの艦には、アルカスル付近で連邦第三艦隊がクロスボーン艦隊と戦闘に入った旨の報告が入っている。






フロンティア沖 巡洋艦ポインター

 先鋒を行く「グリュエ」が潜宙艦を捉え、ライヒの艦はユニオン艦が指図した宙域に突進した。ダブルマルチ爆雷を投下し、宙域に潜む潜宙艦を追い立てる。反撃した潜宙艦の放ったミサイルはQシステムが迎撃した。艦から発進したガリバルディが潜宙艦を反対方向から追い立てる。
「三二〇o対潜ミサイル装填、数が少ないから確実に撃墜せよ。」
 ライヒは本国から送られた新型ミサイルの装填を命じた。改良型のレーザーセンサーで宙域を走査し、クッキリと浮かび上がった潜宙艦の影に彼はミサイルを発射した。宙域に閃光が走り、コロイドを吹き飛ばされた潜宙艦が浮かび上がる。
「連射(ラピッド・ファイア)!」
 浮かび上がった潜宙艦にライヒは主砲の連続射撃を命じた。強力な速射砲でもあるポインターの三二〇o砲が連続して火を吹き、全長七〇メートルほどの艦は瞬時に火だるまと化す。別の宙域では潜宙母艦から発進したモビルファイターとアロイス大佐のモビルスーツ隊が交戦している。この一週間の戦いで、ライヒの艦隊は潜宙艦三隻を撃沈した。他の艦隊の活躍もあり、クロスボーンの潜宙艦はもはや壊滅状態のはずだ。
「ソロモン艦隊「ポインター」、掃討作戦に感謝する。」
 潜宙艦を撃沈したライヒが左舷を見ると、フロンティアに向かって突進していく大艦隊があり、空母から発進したモビルスーツ隊が彼らの横を飛び過ぎていく。
(つづく)




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