作品プロット


(作者メモ)
 2006年に制作したATZ版デラーズ事件を巡るプロットです。話は書きませんでしたが、この辺のプロットは作中でしばしば出るこの時代の話の下書きになっています。主役はマシュマーですが、どちらかと言えば彼以前の同盟軍の中心メンバー、マクニールやガーフィールドの話も多く含まれています。



46.自由コロニー同盟成立前史


フェーズT.胎動

 一年戦争から3年後、サイド3の古いコロニー「ジオンスドルフ(ジオン村)」では村長選挙が行われていた。選ばれたのは一年戦争での従軍経験を持つ若き青年団長コウ・ウラキ(26歳)、コウは過疎化が進むジオン村を建て直すべく、州知事や国民議会の議員に働きかける。ジオンスドルフはかつてジオン・ダイクンが嘱託教員として6年間を過ごしたジオンゆかりの地でもあった。かつて嘱託教員ジオンが妻アストライアを追い返した「ジオン妻返しの松」の前で、ウラキは同級生でアナハイムに就職したクラスのアイドル、ニナ・パープルトンに観光産業によるジオン村振興計画を饒舌に語る。

 一方、ジオン大学卒業後、ジオン銀行に就職したケリー・ギャレットは若手のキャリア行員として順調にキャリアを積んでいた。ジオン村支店長として村に赴任したギャレットは饒舌に村起こしを語るウラキに共感を覚え協力を約束する。そんな折、ウラキと共に村おこし計画を進めていたギャレットはシン・マツナガからの呼出状を受け取る。マツナガの待つモスクでかつての上官と再会したギャレットは彼と共にいたアナベル・ガトー、ジョニー・ライデン、そしてジオン最大の戦略家エギーユ・デラーズに同志として紹介される。「ジオン村」をミサイル爆弾に地球全滅を目論むデラーズの計画に戦慄するギャレット、しかし、恩義のある上官には逆らえず、ギャレットは不承不承で計画への協力を約束する。

 同じ頃、26国に分かれたサイド5最大のコロニー「オルドリン」の警備隊司令官を務めていたキャサリン・マクニール大佐はよそ見運転で一人の初老の男を跳ねる。男はかつての226戦隊の整備兵で戦後クビになったドルンベルガー伍長だった。示談を拒絶してマクニールの交通刑務所行きを検事に訴える偏屈なドルンベルガーに、留置場に送られたマクニールを見舞ったリーデル弁護士は男の警備隊再就職による和解を勧める。元宇宙船工場主のドルンベルガーは該博な艦船工学の知識を持つ、後の自由コロニー同盟軍の要となる人材だった。釈放され、ドルンベルガーと話した彼女は彼が必要な人材であることを強く感じる。

 かつての戦艦ヒベリオン艦長、ユーリ・ヤゾフ准将がアドバイザーとして彼女の傍らにいたものの、戦後3年のサイド5の軍隊は未だ不完全で、治安も悪い状態にあった。マクニールは新型護衛艦タイプ83と新型ミサイル、独自開発の新型モビルスーツに期待を繋いだが、前二つはともかく後者はいつ形になるかも分からない状況だった。友人で建設会社からオルドリン市長に転身したギラスは焦る必要は無いと彼女を窘めたが、サイド5には正体不明の艦船が出没し、ジオン残党の秘密基地の存在がまことしやかに囁かれていた。

 そして、ルウム防衛隊については、演習でのマクニールの艦隊運動のあまりのまずさに査閲官を務めていた連邦軍のガーフィールド中佐が呆れ顔をする。演習結果への率直な講評を自分への誹謗と受け取ったマクニールは査閲官を冷たくあしらう。そんな折、同盟国であるサイド5の基地からパトロールに出動していた連邦軍のマシュマー・セロ中尉のGMが謎のモビルスーツ団に襲われて消息を絶つ。捜索活動に出動したルウム防衛隊はサイド5の一角にデラーズの拠点「茨の園」を発見する。混迷続くサイド5で何事かが起きようとしていた。同時期、地球トリントン基地ではガトーが連邦軍の隙を突いて核爆弾を強奪、広大な「茨の園」の一角に核を隠す。そしてデラーズはジオン軍内の同志を募って艦隊の大型戦艦「グワデン」強奪に成功し、宇宙の何処かに姿を消す。


フェーズU.星の屑作戦

 偵察中にヘルシングらのモビルスーツに襲われ、コロニー「アルビオン」に漂着していたマシュマーはとある民家で介抱を受けていた。既に「アルビオン」はデラーズの計画に同調しており、市長ボーデンシャツは地球全滅の暁にはデラーズからサイド5の支配権を得ることを約定していた。決起集会でボーデンシャツの傍らにギャレットの姿を認めたマシュマーは策謀の気配を感じ取る。そのままデラーズ兵に混じって「ジオン村」に向かったマシュマーは途中でデラーズの計画を知る。そして、「茨の園」にデラーズの戦艦「グワデン」と艦隊が入港する。デラーズの目的はサイド5に駐留する、コロニーの軌道を操作しうる地球連邦工作艦の全滅だった。

 一方、デラーズの艦に乗ってジオン村に戻ったギャレットはウラキに帰省中のニナを連れて村から出るように強請する。しかし、ウラキは計画に協力的だった支店長がなぜ急な出村を勧めるのか理解できなかった。直後にウラキを訪問したマシュマーにより、デラーズの計画を知ったウラキはギャレットの真意はともかく、デラーズが自分らを生かしておくはずがないことを悟る。ウラキはその足で町の長老フジモリを訪れ、農学博士の彼のアドバイスである計画を立案し、マシュマーに協力を求める。そして決行日、ウラキに出村の意図が無いことを知ったギャレットはG3ガスをコロニーに注入し、小さな古いコロニーは瞬く間に致死性のガスに充たされて光を失うのだった。

 サイド3の1コロニー「ジオンスドルフ」が突如通信を絶ち、ラグランジュ軌道から外れて漂流し始めたことにジオン艦隊司令部と地球連邦参謀本部は動揺する。ジオン艦隊は直ちに工作艦を派遣してコロニーの軌道の修正を試みるが、モビルスーツに乗るギャレットの妨害により作戦は失敗、ジオン艦隊を攻撃するモビルスーツの中にはかつてのギャレットの部下、19歳の少年パイロット・ヘルシングの姿もあった。デラーズはコロニーを月のグラナダ市に直撃するよう偽装し、衝突の直前に核パルスエンジンを点火して高速で月を迂回する。デラーズ艦隊の所在不明も併せ、迷走するコロニーとゲリラ的に跳梁するギャレット、ガトー、マツナガらのゲリラ戦にジオン軍と連邦軍は翻弄され続ける。

 ようやくコロニーの軌道を割り出し、阻止限界点がサイド5近郊の宇宙空間であることを突き止めたルウム防衛隊はマクニール大佐の指揮の下、処理部隊を出動させるが、大佐の座乗する新型艦、タイプ83「アライアンス」は設計上の不良から出港直後に真っ二つに折れて爆沈する。この艦が構造上の問題を持つことは既にガーフィールド中佐が口を酸っぱくして彼女に説明していたが、ルウムの技術者の能力を信じる彼女は連邦軍人の彼の言葉には耳を貸さなかった。負傷したマクニールは病院に運ばれ、以後の防衛隊の指揮はヤゾフによりガーフィールドに一任される。

 ルウム防衛隊が頼りにならないことを見た連邦軍は自らコロニーを処理すべく、ソロモン要塞から工作艦を出動させるが、既にその時、アナベル・ガトーの操縦する核搭載ガンダムが要塞の至近に到達していた。出航する連邦艦隊の直上で炸裂する核爆弾、核の閃光は連邦工作隊を全滅させ、阻止限界点を越えたコロニーに第5艦隊司令官ブルックス大将は臍を噛んだが、もはや彼の艦隊では落下は阻止できず、コロニー落としによる史上未曾有の惨害はもはや阻止する者も無いかに思われた。

 そして、宇宙の一角にあるデラーズの戦艦グワデンでは、ガトーら将校達が軌道上で計画的に爆破される予定で、ユーラシアと北米大陸に落下するはずのコロニーが引き起こすはずの人類飢餓作戦の成功に祝杯を挙げていた。彼らによれば、コロニーの中にいた人間は注入したG3ガスで全て死に絶えているはずだった。自らの手でウラキを殺害したことに会合に参加していたギャレットは罪の意識を感じるが、ガトーの言葉により殉教者だと信じることにする。しかし、本当は彼らは死んではいなかったのだった。

 全ての生物が死に絶えたはずの「ジオン村」ではウラキとパープルトンが村の象徴である「松」の下にいた。ウラキが相談した農学者フジモリの開発した「G3ガス中和剤」とジオン農協が農機具から製作し、イートン時代に化学が得意だったマシュマーが製作に協力した化学装置、そしてパープルトンが製作した中和剤散布装置により、ギャレットが注入した毒ガスは注入直後にことごとく無力化されていたのだった。コロニー「アルンヘム」の皆殺し作戦に参加したウラキはガスによる住民殺戮を憎悪していた。マシュマーに唯一残った村長専用シャトルを与えたウラキは彼と同じく元兵士の村民を引き連れ、コロニーにセットされた核パルスエンジンを再点火し、コロニーをサイド5のあるラグランジュUの軌道に引き戻すことを画策する。マシュマーはシャトルでコロニーを脱出し、ルウム防衛隊に連絡を取る。同時期にウラキらを救助するため、ガーフィールド中佐指揮の旗艦「トーメンター」を中心に出撃するルウム防衛隊と連邦第5艦隊は同じくコロニーの軌道が変更されたことを見て動き出したデラーズ艦隊と鉢合わせ、ついに両軍は最後の戦いを始める。
(画像)上からニナ・パープルトン、エギーユ・デラーズ、アナベル・ガトー