Mobilesuit Gundam Magnificient Theaters
An another tale of Z ATZ説話集(128)




35.フォルティナ工場見学

 第四部の連合軍の拠点となり、連合諸国の中でも特にユニークな国サイド6フォルティナ連邦、戦争体制に対するお国柄の比較です。34の補足。





〇一〇一年八月
ニューヨーク 連邦大統領府


合諸国はラブレーヌに艦隊を集結させ、各々の本国も戦争体制を確立しつつある。大統領の諮問に、経済顧問は戦争資金を確保するための増税と金融業の規制撤廃、雇用市場の流動性確保、加えて戦争関連企業の企業減税と現在議会で審議されている経営者報酬規制の先送りを主張した。
「金融緩和も進める必要があります。マクロ経済政策などは学者に議論させておけばよろしい。あんなものは無意味です。」
 マクロ経済政策の指標は概念的なもので実需とはミスマッチを起こしている。正しい指標を求める決め手はなく、膨大なミクロ経済分析を基礎としたDSGE・Goss(動的確率的一般均衡・ゴスプラン)の実験も失敗に帰した。戦争を着実に遂行するためにも、乗数効果の疑わしい財政政策より金融政策を中心とした戦争準備をすべきだと経済顧問は力説した。
「ゴスプランの失敗を繰り返すわけには行きません。すでにある有力企業と軍に経営資源と資金、人材を集約する必要があります。金融の規制緩和により勝利の暁の連合諸国に対する賠償金を担保とした戦争債を民間銀行に発行させることが可能になります。ここで金融緩和も同時に行えば、莫大な戦争資金を瞬時に調達できます。」
 経済顧問のアドバイスにバンカーはいちいち頷いた。
「要するにFCB(連邦中央銀行)のウィングマンに紙幣をじゃんじゃん刷れということだな。」
「そうですね、彼の名前がウィングマンですから、フェデリン札に羽根が生えるくらいですね。」
 同時に経済顧問は資産流動化の必要性も強調した。すでに使い古されているレバレッジ手法のほか、デフォルト互換の金融工学もあり、これらにより収税額の数倍、数十倍の資金を動かすことができる。
「これらは連合諸国はおしなべて禁圧している手法ですが、愚かなことです。」
 連合は投資さえさせないと経済顧問は彼の同僚たちの不平を大統領に伝えた。連合諸国には投資税があり、連合条約の締結以降、宇宙ではウォール街の投資銀行がおしなべて外為市場から締め出され、破綻しかけているのだ。
「連中は投資銀行と判断すれば通常の五倍、一〇倍の税金を平気で掛けてくる。私は五〇%以上の税率は勤労意欲を殺ぎ、連邦憲章の「人間らしく生きる権利」にも違反すると思うのですが、宇宙人(スペースノイド)たちは平気なようです。ソロモン共和国など九五%という例もある。」
 ほとんど禁止税だと教授は連合条約締結以降の外為市場を批判した。おかげで企業も派手に潰れている。報復として連合条約の鏡像適用(ミラー・イメージ・ルール)を連邦も援用すべきという意見もあり、現在、金融委員会で審議中である。国際金融の世界では戦争はすでに始まっていたのだと教授は大統領に力説した。
「生産性という指標がありますが、現在では地球連邦のそれは連合諸国よりも低い水準にとどまっています。しかし、労働規制を緩和し、一人の労働者がより多くの時間を働くように仕向ければ、現在は連合諸国に劣っている生産性は確実に向上します。」
 生産性とは労働者一人あたりが生み出す富のことである。一日八時間労働の労働者が一二時間働けば富は五〇%増加する道理だ。大統領の経済顧問バンブーキンは成果主義を徹底させることで残業代など無駄な割増報酬をカットし、一人あたり生産性を高めることを力説した。
「先の大戦では工場は三交代でGMを生産しましたが、今回は二交代を推奨すべきでしょう。その分労働者を他の工場に振り向けることができます。余分な福利厚生も必要ありません。」
 まずは戦争に勝つことだ。大統領の経済顧問バンブーキンはそう力説した。






〇一〇一年八月初旬
サイド6 コロニー「フランチェスカ」
SMK社工場


場のラインにザクVやガリバルディβ、バーザムなどのモビルスーツがずらりと並んでいる。全て損傷機で、先の戦いで被弾したり破損したりしたモビルスーツだ。工場を見学しているジュドーたちにフォルティナのカムラン・ブルーム外務次官がサイド6における連合の後方支援体制を説明している。一行の中にはベルトーチカの姿もある。
「もう何年も前から進めていたものですが、連合諸国のモビルスーツは各々の国の独自性に配慮しつつも、各種部品の規格化、共用化を進めて来ました。キーゼ博士が開発したソロモンのガリバルディβが嚆矢となったものですが、おかげで損傷機の修理も迅速に、このように本来その機体が生産された国でなくても行うことができます。」
「オレのザクVもここで修理したんだぜ。」
 ゴクリと息を呑み、ラインをじっと眺めているジュドーにビーチャが話しかける。サイド3の戦いで破損した彼のザクVは通りがかった戦艦ミネヴァに回収され、この工場に運び込まれて修理された。修理期間は三日もなかったとビーチャはジュドーに言った。ラインを眺める彼らを横目にカムランの説明は続いている。
「今は戦時ですので工場は三交代制を敷いています。ラインでは損傷機ばかりでなく補充機の組み立ても行いますので、現在の工場はフル稼働で、当面この状態が続きそうですね。」
 工員には女性も多いので託児所、病院、ショッピングセンターも建設したとカムランは見学者に説明した。連邦や一部の国では少なくない二交代制についてはカムランは人間性を破壊すると否定的な見解を示した。
「一日一二時間も会社に拘束されていては、家庭人として、また自律した個人としての尊厳や人格を維持できないのではないでしょうか。」
 そういう不正な方法によって調達された商品には連合諸国は経営懈怠税を掛けているとカムランは言った。確かに現在の工場は二四時間稼働だが、優先すべきはまず従業員の人格であり、その健常な発展だと外務次官は強調した。連合条約の締結により、以前は横行していた派遣労働は連合加盟国では割に合わないものになっている。
「従業員を使い捨てるような経営は結局、企業にも社会にも損失を与えます。非正規で一日一二時間も会社に拘束されている従業員が将来の計画を立てられるのか、また、会社以外では存在を否定された彼らがその生存に必要な最低限は別として、社会参加に積極的になるのかといえば、それは違うと思いますね。」
 マネジメントの不良で自ら窮境の原因を作っておきながら、いざとなればその責任を労働者個人に転嫁することができること、それが労働力を商品として見る見方の最大の欠陥だとカムランは指摘した。
「我々は違う行き方を採っています。それが戦争に勝ちうるものか否かは議論の余地がある所でしょうが、連合憲章で健康で文化的な最低限度の生活を保障している連合が仮に理想を失ってまでして勝利を求めても、それは意味のあるものにはならないのではないでしょうか。」
 最終的には戦争に勝つことだ。カムランはそう言い、一同を次の場所に案内した。


〇一〇一年八月初旬
地球 日本列島 UM社工場


争の勃発によりモビルスーツの増産が決まり、日本にあるUM社の工場でもジェガンの生産が始まっている。UM社は連邦の自動車メーカーで、ノースウェスト社からの委託でジェガンの四肢パーツの生産を始めているが、腕や足など個々のパーツの大きさそのものは同社の自動車とほぼ同じで、ラインに乗せて生産することはできるが、その生産は難渋している。特殊なモビルスーツの部品を生産するために同工場は派遣会社から経験者を集めているが、人数自体思うように集まらない上に、同時期に流行したインフルエンザにより日産三〇〇ユニットの生産は予定を下
(つづく)




Click!