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An another tale of Z ATZ説話集(122)




34.キャデラック支隊

 第四部の主人公らの策源地で、連合の一国フォルティナは作中に登場する様々な国の中でも特に変わった国です。ファーストでのサイド6、本作では最終決戦の場のこの国についてはまだ設定が固まっていませんが、以前作成した挿話をまとめておきます。全6ページ。





〇一〇一年七月末
地球連邦軍 宇宙ステーション「ジュピトリス」
食糧貯蔵庫


ライト・ノア提督の旗艦テンプテーションがステーションに到着し、乗船した工作隊によって連邦艦隊では大量破壊兵器(マス・デストラクション)の取り外し作業が進行している。作業が進む間、各艦隊司令官は乗員に交替で休息を与えることにし、彼らにムーン教団が解放したジュピトリスのプロムナードには、カフェ、屋台、ダンスホールなどがあり、憩いを求める連邦艦隊の乗員で溢れている。
「へい、らっしゃい! お兄さん、たこ焼きいかが!」
「揚げたてのフィッシュ・アンド・フライもあるよ!」
「お兄さん、ちょっと遊んでく?」
 第五艦隊の記章を付けたその士官は喧騒から離れると、重力ブロックの外れにある食糧備蓄庫に足を運んだ。人気のない中、うず高く積まれているコンテナの近くに、待ち合わせていた女性の姿を見つけた彼は目を輝かせた。
「シンシア!」
「セバスチャン!」
 ブラウンの髪の士官は両腕を広げて走り寄る女性を受け止めると、その華奢な体をひしと抱いた。抱擁と熱い口づけの後、大尉の肩章を付けた士官は教団着の女性の瞳をジッと見つめた。
「会いたかった、、」
「私もよ、あなた、、」
 二人は見つめ合うと互いの手を取り、そのまま食糧倉庫の暗がりに消えていった。しばらく後、コンテナの陰から別の人影が姿を現した。手にスパナを持ったアムロ・レイ少将と、彼に同行しているエミー・ライオネル少佐である。
「まずいんじゃないか? これ。」
「これで七人目ですね。第五(フィフス)も第八(エイトス)もいます。」
「第二艦隊(セカンド)はいなかったが、それも時間の問題だと思う。」
 スパナを持ったアムロが不穏げに言った。ステーションでの教団員との交流に、彼は警戒感を持っている。
「あの教団ではセックスはどうなっているんですかね。」
「いきなり何を言うんだ、エミー。」
 部下の大胆な発言にアムロは引いた顔をする。普通宗教では禁止されているはずだ。還俗すればともかく、修業中はやはりダメなのではないか。部下の言葉にアムロは声を荒げた。
「そんなことは分からんよ!」
 とにかく、そんなことより目先の仕事だ。アムロは少佐に教団のことは忘れろと言うと、エレカで倉庫に運び込んだ「ブツ」の覆いを外した。ミサイルから取り外されてパイプやネジが剥き出した核爆弾は案外コンパクトだ。
「これだけで一メガトンある。」
「案外小さいですね。もっと大きいものだと思っていた。」
 エミーが恐る恐る爆弾の外被に触れた。起爆装置は取り外されているが、それでも内部に放射線を発する物質を封じ込めた物理パッケージであり、起爆すればこのステーションは吹き飛ぶ。コープ司令官は彼らに核爆弾二〇個を査察隊の目から逃れ、秘密裏に隠匿することを求めている。
「アアン、、あなた、、」
「始めるぞ、エミー、こいつは発電機だ。」
 広い倉庫のどこかで絡み合う男女の喘ぎ声を忌々しげに耳にしつつ、アムロがスパナで爆弾の偽装を始めた。先は食堂の花瓶に偽装した。他にもオブジェや変圧器、ダンプカーなど色々なものに化けさせたが、ブライトもまさかこれが核爆


弾だとは思うまい。空母イカロスの工場で自作したそれらしいパーツを組み付けつつ、アムロは少佐とともに運び込まれた爆弾を始末する作業を続けた。
「我ながら才能を感じるな。」
「ホント天才です、少将は。」
 大量破壊兵器から発電機に形を変えていく核爆弾を見つつ、アムロは自分の工作センスを自画自賛した。工作の内容はともかく、これは誰が見ても発電機にしか見えないだろう。
「アアッ! セバスチャン! もっと! もっと!」
 いつしか昂ぶっていく男女の声も作業に熱中する彼らの耳には入らなくなっていた。ゴーグルを被り、トーチを持ったアムロが部下に声を掛ける。
「エミー、パイプを取れ、今度は水圧ポンプだ。」
「イエス・サー。」
 少佐がエレカからパイプを取り上げ、受け取ったアムロはそれらしく作った外被にパイプを溶接した。
 ジジジジ、、、
 結局、彼らの作業は徒労に終わった。第一艦隊から来た彼らの査察官は、そんなごまかしが通用するような相手ではなかったのである。






〇一〇一年七月末
月面都市グラナダ


はりラブレーヌを攻撃するしかないのではありませんか。」
 グラナダ市長夫人アリッサに茶を給仕されたコープが夫人に礼をする。グラナダの戦いの際、彼女の夫レズローブは戦艦アーガマで逃走したが、実家にいた夫人とハイスクールに通っていた娘はそのまま残された。
「ひどい話ですわね。そもそも私は主人が『エウーゲ』の方々と付き合っていることも気に入らなかったのですけど。」
「エウーゲではなくエウーゴです。正確には不法戦闘部隊に対する対抗組織(アンチ・アンローフル・ガリソン・オーガニゼーション)です。その頭文字を取ってAUGO(エウーゴ)と言います、アリッサ夫人。」
 カップを皿に置いたコープが訂正する。
「難しいのね。主人はグラナダの独立がどうのとか言っていましたけど。」
 博識なコープに感心した夫人は自分は政治のことは分からないと言った。
「いつもお金がないらしく、エーユーゴーの方はお歳暮も寄越しませんのよ。」
「アリッサの言うことも一理ある。確かにオイゴ(AUGO)の連中は貧乏で、グラナダは連中の金づるだった。しかし、君らがここに居座ってくれるのも困る。」
 同席している連邦警備隊総監グリーン・ワイアット大将が三人の司令官に続発している連邦兵士による事件を説明した。
「すでに上陸した連邦艦隊の兵士による盗みやかっぱらい、交通事故、強盗及び強姦事件が多発している。」
「不祥事については厳正に対処している。」
 腕組みをしたジャクソンが言った。グラナダは第八艦隊の母港だが、三個艦隊を停泊させる規模はなく、兵舎が足りないため、上陸した連邦兵士はワイアットが手配したグラナダのホテルやモーテル、カプセルホテルに逗留している。が、兵舎ならともかく、娑婆に出た兵士が出来心で事件を起こすことはある意味やむを得ないことだ。
「上陸二日で事件が四〇〇件だ。警備隊総監の本職としては、第五、第二艦隊の兵士はグラナダには上陸させないでもらいたい。」
 そう言い、ワイアットは昨日とある女性宅に侵入した連邦兵の話をした。夜中、マンションに住む女性が目を覚ますとズボンを下ろした黒人兵が目の前に立っていたという。男は直ちに巡回していた連邦警備隊に捕らえられたが、同様の事件は他にも山ほどある。一昨日は女学生がアパートに連れ込まれた。
(つづく)




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