Mobilesuit Gundam Magnificient Theaters
An another tale of Z ATZ資料集(3)




2.超近代官庁都市クリスタル・シティ編

 ソロモン共和国、オルドリン市にある超近代官庁都市クリスタル・シティ、自走通路にチューブカーの走るハイテク都市ですが、作品では言葉だけの登場です。改訂前の第三部は実はここから始まっていました。アガスタ派兵に伴い、ハウスと地方自治省の官僚の共謀で派手すぎる説明会が企画されます。なお、ハウスの友人フランク・スズキの父ニーゲムは第二十八話に登場。




〇〇九八年二月二〇日 夕刻
ソロモン国防省 ハウスの執務室


※オーブル情勢を観測するハウス情報部長の下を以前の友人が訪れます。クリスタル・シティ関連のカットです。

面にアルカスルからの最新のニュース映像が映っている。最新といっても二週間前の映像で、凄惨な戦いとなったツェントル地域の激戦のことである。映像はオーブル逓信省が配信している。
「相変わらず狂ってるな、オーブルの連中は。」
 オーブル兵による英雄的自爆攻撃の映像を見たハウスが言った。
「爆薬を背負ってモビルスーツに飛びつくなんて、どうかしてますよ。」
「あれはモビルスーツじゃない。モビルファイターだ。」
 テレビを見ていたカーターの言葉をハウスが訂正した。
「言われてみればそうですね。チャンネル変えましょうか。」
 カーターはそう言い、リモコンのスイッチを押した。テレビの画像が切り替わり、アニメ番組の主題歌が流れる。
(燃え上がれ〜、燃え上がれ〜、ガ〜イア〜ン♪)
「懐かしいなあ、スターガイアンか。」
 テレビを見たハウスが感嘆して言った。彼も子供の頃、ダッシュで帰宅してテレビにかじりついた記憶がある。
(正義の〜、怒りを〜、ぶつけろ〜ガイア〜ン♪)
「時代違いますから、、それじゃ、私はこれで。」
 カーターが退出し、ハウスは執務室でテレビの続きを見た。「スターガイアン」は彼が子供の頃にハマったガイアTV制作の海外SFシリーズで、幼年向けヒーロー物という触れ込みとは裏腹に硬派なストーリー展開と贅沢な特殊効果で人気のあったSFドラマである。
 その時、研修生のジュンコ・ラントシュタインが客の来訪を告げた。
「地方自治省のフランク・スズキ?」
 ハウスはテレビを消すと背広を着て執務室を出た。すでに国防省の多くのフロアは灯が消えており、三階のマシュマーも退出している。ガイア情勢が緊迫化しているので情報を分析していたが、遅くまで残ってしまった。


〇〇九八年二月二〇日 夜
レミュール街 レストラン「レガリア」


※同じくクリスタル関連、このあたりがごっそりカットされたため、この場面もカットされています。フランクの父ニーゲムが特大プラモデルを買う場面やテレビ番組スターガイアンの説明は二八話本編にあります。

ウスと一緒にレストランのコンパートメントに入室したスズキがポークソテーをフォークで突き刺しながら饒舌に喋っている。
「スターガイアン、そうだよ、あれが僕たちの夢だった。僕は忘れない。クリスマスの夜、父さんが買ってくれた特大プラモデル「ガイアランド」の思い出を。」
「ニーゲム氏は元気なのか?」


 ソテーをつまみつつ、ハウスが言った。フランクの父ニーゲム・スズキは息子と同じく地方自治省の元官吏で、つい最近定年退職している。
「父は元気だ。ところでアンドリュー、君も見たようだが、どうしてあの番組(ガイアン)が今再放送されているか知っているかい。」
「まだ人気あるからだろう。」
「それもある、だが、君は番組最後のテロップを見なかったのかい。エヘン、提供「ソロモン共和国地方自治省」、何を隠そう、この企画を進めたのはこの私だ。」
 スズキは胸を張った。
「権力者になったものだな。確かに番組のガイアランドは超ハイテク都市だった。今で言うなら、クリスタル・シティか。」
 ハウスはスズキの職場である同盟時代に作られたハイテク役人都市について指摘した。ギラス首相の肝煎りで同盟成立直後に造成されたこの都市には、当時放映されていた「スターガイアン」の影響があるという。
「あれも悪くないが、今や少し古くてね。もっとすごい都市を計画している。「スターガイアン」再放送は国民の理解を得るための、いわば前宣伝だ。」
 そういえばスターガイアンの主人公ヘルズ・シロトリは宇宙建設省の建設公務員だった。建設反対の住民運動を扇動する悪の妨害を全滅させつつ、未だ未開の星の多い銀河系で宇宙高速道路建設に従事する主人公の姿がメイン・テーマだったが、、


〇〇九八年二月二一日
レミュール街 レストラン「レガリア」


※作家ジャミトフは当然エンターティメントにも関心があります。イザベル・バトレーユを女優の卵から引き抜いたり、映画を作ったり、テレビ界にも影響力のある彼ですが、モデルの人物と同じく、アニメの脚本もちゃんと書いています。

「よみがえれ〜、よみがえれ〜、ガ〜イア〜ン♪ 知っているかい、スターガイアンを、ヘルズ・シロトリは僕らのヒーローだった。父さんが買ってくれたガイアランドのプラモデルは今も大事に僕の官舎に飾ってあるよ。」
 地方自治省のフランク・スズキ課長補佐がレストランのコンパートメントでハウスに紹介されたベルトーチカに熱弁を振るっている。
「第一話は確かジャミトフの脚本なのね。」
 MCVのバッジを付けたベルトーチカが言った。
「もっとも、私の世代からは少しズレているけど。」
「一話、一六話、三七話、六〇話、それと最終回の二六七話はジャミトフの脚本だ。あと、エンディングの「おれの名はスターガイアン」の作詞もやっていた。意外と彼はああいうのが好きなようだ。

エンディング歌 「おれの名はスターガイアン」
作曲 ダニエル・ウィリアムズ
作詞 ジャミトフ・ハイマン

 銀河と共にやって来た
 (Come along with the Galaxy.)
 悪を蹴散らす工事の男
 (Man of the construction work to blow up the evil.)
 スターガイアン、正義の道路工事
 (Star Gaian, the road construction of justice.)
 廻せ! 砕け! ドリルを廻せ!
 (Turn! Crash! Turn the drill!)
 スピード全開! ガイアドーザー!
 (Full speed ahead! Gaiadozer!) 
 怒りを込めて、ぶち当たれ
 (With anger, knock down enemies!)
 社民主義者をぶちのめせ
 (Knock down the evil socialists!)
 ガイアーン、ガイアーン、スターガイアン
 (Gaian, Gaian, Star Gaian.)


※言うまでもなくこれは初代仮面ライダーのエンディングをもじったもの。

(つづく)




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