Mobilesuit Gundam Magnificient Theaters
An another tale of Z reviews

宇宙戦艦ヤマト2202

第23話「愛の戦士たち」

あらすじ
 デスラー艦でデスラーとミルと対峙した古代とキーマン、森雪が撃たれ、ミルの言葉に古代は戦争終結の希望を見出す。地球に到達した彗星は地球人に全面降伏を促す。

Aパート:森雪負傷、ミルの死
Bパート:デスラー去る、彗星地球へ

コメント
 すでに多くの指摘があるが、説明台詞のウザ長さと飛び飛びの画面展開はもはや作品の体をなしていない。森雪はどこを撃たれたのか分からないし、ミルは小難しいことを言い始めたので終わる前に撃たれるなと思ったらやっぱり撃たれたし、それに場面の三分の二がデスラー艦の艦橋で、一場面にこんなに長く尺を取っては見ている側がダレてしまう。おかげで大帝継承の奥義というガトランティス最大の秘密が何の感傷もペーソスもなく流されてしまう。

 実は脚本の福井晴敏がその能力もないのに私物化して継承したとしている作品、機動戦士Ζガンダム以降のガンダム作品には、監督の分裂症から背景につき「まじめに説明をしない」という悪癖があった。重要な場面でも説明はせいぜいが10秒か20秒、すぐに銃弾が飛んできて講師が死ぬか行方不明になるかの場面は富野アニメでも最悪の演出の一つで、この種の場面を見る度に筆者などは「あ〜あ」とアクビが出るものでもある。そういうものだけはしっかりと踏襲しているので、実にヤマト的でないミル射殺の場面は文字通り「ミルまでもない」ものになっている。

 実は過去の作品では、リメイクして語ってもらいたいことはもっと他にあった。地球人と異なるがかなり似たところもあるガトランティス人の暮らしとか、首都が宇宙を超光速で疾駆している彗星帝国がどういう方法で帝国を維持しているかなど、前作では尺の都合で端折られ、説明不足の部分は他にあった。が、このスタッフはこの作品を再構築するのに必要な要素を全く分かっておらず、安直にどこかの作品からの登用借用で済ませてしまう。

カオルのひとこと
 デスラー艦とヤマトとの白兵戦で、ミルがズォーダーの後継者であることが明らかになる。引き金を引くかどうかの心理テスト、そこに古代が乱入し、ミルに和平交渉を申し入れる。引き金を引くか引かないかの話で逡巡する中ミルが引き金を引き、古代をかばって雪が負傷するお約束展開。その姿に何かを感じたらしいミルとズォーダーらの屁理屈が延々続くが、彼らの会話の何にフォーカスすればいいのかさっぱりわからず。結局ミルは古代と和解に至るが、その矢先ガミラスの雑兵に撃たれて死んでしまう。
 こうして、和平の道は絶たれ、どちらかが滅びるまで終わらない戦い、となっていくわけだが、そもそも地球は白色彗星帝国に比べて圧倒的な弱者である。和平などとは、それなりに対等な戦いをしている相手でなければ成り立たないであろう。
 そうこうしているうちに、白色彗星艦隊は地球全土を席巻する。ここにきて、地球の人々の「そうだ、我々にはヤマトがあるじゃないか」という展開。今も時間断層で宇宙戦艦を絶賛量産中なんですけど?!

評点
★ 構成が悪くアニメ作品として意味不明(小林)。
★ 話になっていない。福井某の作品構想を聞かされている感じ(カオル)。

脳を飛び交う電気信号
 ズォーダーの教えという人間の情報処理を表したミルの言葉、が、例によって中二病で半可通の福井の戯言のため、実際の脳の信号処理とはニュアンスがかなり異なっている。人間の脳はおよそ2千億個の神経細胞とその千倍のシナプスとから成り、細胞間の信号の伝達はシナプス間の電位差によるが、入力ニューロン(感覚神経節)と出力ニューロン(運動ニューロン、自律神経系の起始ニューロン)の間に中枢神経を構成する多数のニューロンが介在するため、刺激に対する反応はニューロンの数に応じて精妙に調整され、その選択肢は無数(不確定性の貯蔵庫)である。入力ニューロンが出力ニューロンと直接連絡している場合は反応速度の点で有利であるが、情報に応じて反応を細かく調整することはできず、多重処理が脳の特徴となっている。現代最高のスーパーコンピュータでは人間の1%程度の数(17億個)の神経回路のシミュレーションに成功しているが、これはネズミやモグラと同程度であり、この程度の数では最近流行のAIも含め、「こころ」を持つ人間の再現にはまだまだ及ばないものである。作品においてズォーダー(福井)の示す「選択」が視聴者にことごとく違和感を感じさせるのは、彼が不勉強で現代科学が到達している脳と心の仕組みを全く理解していないことによる。



第24話「ヤマト、彗星帝国を攻略せよ」

あらすじ
 トランジット波動砲を彗星都市に撃ち込んだヤマトはガミラス艦隊の協力を得て要塞都市の内部に潜入する。次々とクルーが倒れる中、ヤマトと古代はズォーダーの玉座に迫る。

Aパート:ウルトラ波動砲の攻撃、ガミラス艦隊来援
Bパート:土方ほか死亡、ズォーダー対古代

コメント
 テンプレ通りにヤマト乗員が敵の攻撃に倒れていくが、「さらば」と違い何の感慨もペーソスも感じないのは各々のキャラにつききちんと物語を積み上げてこなかったからである。これもテンプレ通りに天井が崩れて下敷きになる土方も「あ、そう」で済まされてしまうような軽さである。あと、加藤が長々と独白した後に死に、アナライザーが壊れるが佐渡は死なない。が、ロボットを愛惜する佐渡の心情も前作2199から実は描写もなかった。

 それと、物語とは関係ないこととして、設定担当の小林誠が再構成した彗星帝国の軍事力がなんとも見にくく分かりにくく、それゆえにフラーケンらの行動や土方の遺言も意味が分からず、絵としてもゴチャゴチャとして見にくいものになっている。この作品の脚本と副監督は才能のない者の常として前作についてはあれが悪いこれが悪いと誹謗するくせに、いざ自分で作るとなると前作すら実は理解しておらず、乗り越えられないことがある。

 前話からクローンであるガトランティス人が古代やデスラーの説得により人間であることに目覚めるという展開があるが、正直、この壮大なスペースオペラの基本的な筋にしては陳腐で単調すぎるものである。前回のレビューでリメイクしたら書くべきこととして、旧敵ガトランティスの補完を提案したが、それですべきはガトランティス帝国の単純化、ボッチ星人化ではなかった。

カオルのひとこと
 白色彗星前面に出たヤマトはトランジット波動砲を発射する。そのすさまじい威力によって白色彗星にダメージを与える。そこへガミラス艦隊が多数ワイプアウト。潜宙艦を使ってヤマトを白色彗星中枢部へ送り込む。徳川機関長、アナライザー、突然の苦戦で死傷者多数。落ちてきた沖田の銅像で頭を打った土方は次の艦長に古代を指名して果てる。
 そんなヤマトを導くのは桂木の念力という相変わらずのオカルト展開。超兵器ゴレムまで連れていってくれるという親切設計だが、さすがにそれでは容易すぎると思ったのか、桂木がやられて古代は苦境に。ヤケを起こしたズォーダーがゴレムを破壊して自決モードになってしまう。
 時折見られる原作準拠の場面やセリフが、かって唐突ツギハギ感を強めている。有無を言わさぬクライマックスだが、相変わらず何が起ころうとしているのか、見ている側は置いてけぼりである。

評点
★ キャラの死が軽い軽い(小林)。
★ メカメカがメカメカしすぎで、決戦場面なのにあまり人の気配がない(カオル)。

ニードルスレイブ&ヤマト最終決戦仕様
 高枝切りバサミ(イーター)と並ぶ小林誠のオリメカで、本作品ではヤマト乗員を最も殺害した小林ガトランティスの殊勲兵器。作品の最初から登場し、人型形態では棍棒のようなスティックを投擲して人間やコスモタイガーを刺し貫き、アーマー形態ではコスモタイガーを遥かに上回る機動性で目標に突撃する。波動防壁も易々と貫き、ズォーダーの脳波で目標とする人間を殺害するが、数も膨大であり、この攻撃にヤマトの防空兵器やコスモタイガーは為す術もなかった。土星海戦の一連の戦闘では用いられなかったが、対デスラー戦以降は大戦艦や上位モデルのイーター、超大型空母を凌ぐ活躍を見せ、土方、アナライザー、徳川、加藤を殺害したほか、ヤマトに協力した桂木透子も殺害し、ついでにガイレーンも殺してその有用性を見せつけた。ヤマト最終決戦仕様はAIによりこの攻撃を予期したヤマトがギンガの対空砲を増設した防空仕様だが、あまり役に立ったようには見えず、その後もスレイブの活躍は続き、ラスト付近ではキーマンと斉藤を殺害し、後に合体して滅びの方舟の一部となる。なお、簡単な安全装置が搭載されており、方法は分からないが、蘇生体やデスラーなどガトランティスの味方は攻撃しない機能が搭載されている。



第25話「さらば宇宙戦艦ヤマト」

あらすじ
 ゴレムが作動し、ガトランティスはズォーダーを残して死に絶える。自らを裁定者と自覚したズォーダーは滅びの方舟と一体化し、地球とヤマトの破壊を目論む。

Aパート:ゴレム作動、キーマン斉藤死す
Bパート:滅びの方舟逃げる、ヤマト特攻

コメント
 先ず、前作の宇宙戦艦ヤマトを考えると、この作品は宇宙空間を舞台にした太平洋戦争であった。だからこその「宇宙戦艦」であり、現代ではとっくに旧式化した巨艦が重々しく主砲を旋回させ、「宇宙空母」や「艦載機」が登場し、乗員たちが勇気と能力の限りを尽くして巨大な敵と戦う所に醍醐味があった。前作の都市帝国はそのフォーマットでは限界とも言える敵で、惑星規模の巨大要塞にヤマトの数百倍の巨艦がラスボスとして控え、それでは戦争にならないということでテレサによる「奇跡」を拝借したのである。それでも、古代が立ち向かった巨大戦艦ガトランティスは砲台の大きさはヤマト並みとはいえ、旋回式の砲塔を装備していた。つまり、ヤマト以上の究極兵器であるこの戦艦も煎じ詰めれば「第二次世界大戦様式」の戦闘を戦うように作られており、それがこの作品のルールだったはずである。

 ところが2202はどうであろう、桂木透子を殺し、加藤を撃墜したのは空飛ぶノコギリのような意味不明の兵器で、それが戦艦の撃墜能力を超えるような数で超高速で襲いかかり、敵の巨大戦艦は都市から生えてくる。そしてウルトラ波動砲で破壊された敵の要塞は「滅びの歌」とかいうわけの分からないメロディで破片から合体再編成され、ズォーダーは投身してメカと合体する。どれを取ってもこの作品の様式からかけ離れた内容で、何か光るものが敵の中枢といわれても、スライム合体の方舟に弱点も何もあるかと白けた気分になる。そもそも松本零士の作品では敵は異星人でも引きこもりや自殺志願者ではなく、巨大なエゴを持った生ける人間であった。

 型通りの演出が半ば義務感のように挿入され、何の感動もペーソスもなく、古代は森雪とともにヤマトで都市帝国のエネルギーコアに突撃する。予定通りテレサが出るが、女神の言い分も育児に失敗したダメ母親のようで、一応都市要塞は爆破されたようだが、三話も続いてとてもつまらなかったなあと思える宇宙戦艦ヤマトの最期である。

カオルのひとこと
 ズォーダーがゴレムを破壊したため、ガトランティス人はばたばたと倒れてゆく。おかげでヤマトは楽勝モードに突入するが、ズォーダーだけは死ねない展開である。そこで高らかに人間宣言をした彼は、滅びの方舟とやらを目覚めさせてしまう。ヤマトは都市帝国から脱出するが、真田さんは内部からの破壊を提案。キーマンが変なミサイルを抱えて攻撃しようとし、行かせるかどうかでだらだらと湿っぽい会話が繰り広げられる。しかし戦闘機の上に載って突っ込む斎藤のモビルスーツの絵はガンダムにしか見えず、特攻をかけるのがキーマンと斎藤という妙ちきりんな組み合わせなのも腑に落ちない。おまけにその特攻はまったくの無駄で、最終的に古代が一人でヤマトで突っ込むお約束の展開に。お涙頂戴な会話がてんこ盛りで、ただただ辟易。場面を作ってつなげるだけで、まったくお話になっていない。最後は、古代と雪のキスによってスーパーサイヤ人化するヤマト。そしてここから霊界通信の始まりなのだーーー!!??

評点
★ これが理解できなくても別に恥ではない(小林)。
★ なんでこーなるの?!(カオル)

超巨大戦艦
 前作では都市帝国の内部に格納されていた戦艦のカテゴリーを大きく凌駕する超大型の宇宙戦艦。艦名はガトランティス、都市帝国を破壊されたズォーダーが生き残りの兵士とともに乗り込み、巨大砲の威力で月をかち割った。2では地球をも砲撃し、その破壊力は真田をして星の機能が失われると絶望せしめた。スケールは要塞都市に収納されていたことから都市以上ということはありえず、公式設定では全長8キロ程度とされているが、ヤマト2での砲撃シーンを見る様子では乗員10万人、全長2キロ程度が妥当な大きさである。この大きさは後にスケールの肥大化が進んだヤマトシリーズでは同大の船が数多登場する程度のものである。ガトランティスでも非常脱出用で平時での運用は求められていないが、万が一に備え原型となる船からアップデートを続けていたものと思われる。
 2202では都市要塞の尖塔部分が酷似したデザインだが、スケールは地球並みとトチ狂ったものになっており、結局巨大戦艦としては登場せず、月を砕くなど同様の攻撃はしたものの、スケールと攻防力のバランスは前作よりもさらに悪いものになっている。ヤマトにより結局爆発したが、爆風はテレサの反物質により中和され、地球に被害はほとんどなかった。2202版は操船に乗員は必要なく、一体化したズォーダーの思念コントロールで大戦艦など残骸を吸収し、艦首のイボを除き様々な形に変形できるなどほとんどオカルト兵器になっている。



第26話「地球よ、ヤマトは、、」

あらすじ
 ガトランティスは滅び、生き残ったクルーは英雄の丘に集う。戦いから半年後、時間断層にヤマトが出現し、成仏できない古代と雪があの世とこの世の間をさまよっていた。真田とギンガの藤堂は二人の救出を目論み提案を国民投票に掛ける。

Aパート:ヤマト浮上、あの世の古代と雪
Bパート:真田の演説、古代と雪の帰還

コメント
 爆破されたヤマトに乗り組んでいた古代が迷い込んだ「スーパーあの世の世界」では数珠のような玉に様々な世界が映し出され、古代はズォーダーと心中という選択が唯一のものでなかったことを知って落ち込み、次元の狭間に引きこもる。そのことを知ったギンガ艦長の藤堂と真田は提案を国民投票に掛け、感動的な演説で世論を味方につけることに成功する。それは時間断層と引き換えにヤマトを「スーパーあの世の世界」に救出に向かわせる案であった。あの世に乗り込んだヤマトによって古代と雪は救出され、ラストはズォーダーのナレーションで閉める。

 「甘いなあ」と思えるのは、確かに古代を英雄ではなく地球市民の分身とした真田の演説はこの作品にしては例外的に感動的で英雄崇拝譚でないもう一つのヤマトを見た気分だが、それまで前作以上に「大人の事情」を優先させ、狡猾で偏狭な「オトナ」を描いてきた作風からすれば、そんな演説が通用するはずはなく、投票の結果は世論操作や組織票ですでに決まっているのだというのがこの作品の世界である。そうならなかったことは、この演説もまた「B級市民」を操作する世論操作のテクニックの一つと見え、人の心を弄ぶ脚本家に不愉快な気分になるのは筆者ならずともそうだろう。一言で言えば、これは分不相応な企画をゴリ押しで通した福井晴敏らスタッフの「事情」なのである。ここで念のため、10年ほど前の福井の一言を引いておきたい。

「、、ノーと言いきれる人はいまい。いたとしたら、友としては尊重するが、仕事仲間としてはおつきあいできないかもしれない。残念ながら、それが大人の世界だ。」

 なんとも傲慢な言葉である。ガンダムUC然り、このヤマト然り、この「大人の世界」とやらをひけらかして福井が小林誠と紡いだ作品はなんとも子供っぽく、とても大人の視聴に耐えるものではない。もう一度作り直すべきである。以前の2199とこの2202に意味があるとすれば、その「可能性」を提示したことだけであり、それ以外にこれら二作に作品としての価値などない。そして、もっと作品と真摯に向かい合う創作家に新たな作品作りを委ねるべきである。

カオルのひとこと
 なんと、最終回を前にヤマトが特攻してしまったのである。話は戦いから半年後。英雄の丘には、戦友の死を悼むヤマト乗組員たちの姿があった。ところが、地球にヤマトが戻ってくるのである。どうやら時間断層のさらに奥から帰ってきたらしいのだが、古代と雪は乗ってはいなかった。わかりやすくいうと「あの世」へ行ってしまったのである。これは「あの世」に行った二人を連れ戻そう、という話なのである。ただ、連れ戻すためには時間断層を壊さなければならない、といわけで時間断層をとるか、古代と雪を連れ戻すのをとるかで真田と芹沢がプレゼンする。
 引き金を引いてしまったことを悔やむ古代と、彼を連れ戻そうとする雪との会話だが、唐突にヤマトが現れて、地上では、時間断層を壊してでも古代と雪を助ける決断がなされたらしい。なぜこんな話を付け加えなければならなかったのだろうかと疑問に思うが、ご都合主義の権化である時間断層をそのままにして話を終わらせたくはなかったのだろう。古代の心の内側の葛藤に答えを与えたかったのだろうが、そんな深淵なテーマを語れるほど、古代という人間を描いてこなかったので、薄っぺらになるのも無理はない。

評点
★ そもそもレビューを書いたのが間違いだった(小林)。
★ まさか「あの世」から帰ってくる話がラストとは(カオル)。

リメイクアニメの階級制度
 前作ヤマトでは地球防衛軍の階級制度はほとんど語られず、艦長(司令官)・班長(隊長)・一般隊員の三階級しか描写されなかったが、2199では海上自衛隊と同じになり、司令官の沖田は宙将、艦長山南は一等宙佐、技師長の真田は三等宙佐で古代は一尉である。下士官・兵・軍属も設定され、訓練生(見習い)の北野と岬、遠山(戦死)は下士官(職業軍人)、藪と西条、岩田(戦死)は期間制の志願兵である。軍属(一般市民)はツバサの母親で看護師の原田がいる。
 このように階層と出自が厳格に区分されている場合、現実の海軍では長期航海における著しい士気の沈滞と任務遂行能力の低下が指摘されているが(60日が限度とされる)、より長い航海の場合は、イギリス海軍の例では上位者が鞭と棒を持って下位者を統率しており、処罰権を持つことから一階級の違いが極めて重要であった。それは海上自衛隊の範となった日本海軍も同様であり、軍隊とは極めて保守的な組織のため、鞭と棒による統御法は現代でも続いていると思われる。このように重要な違いのため、沖田発病時の潜宙艦の襲撃においては2199では古代より階級が上の真田が(戦術教育のない技師であるにも関わらず)全艦の指揮を執り、前作にあった艦長代理の任命はなされず、同戦闘で真田は命令に違反した古代を拘束して処罰している。
 2202ではヤマト乗員は主役の古代も含め乗員はただの一人も昇進しなかったので、描写されている階級章は前作リスペクトのコスプレで、古代も艦長代理に任命されたことから、このリジッドすぎる2199の階級制は廃されたかと思われたが、ラストの場面で戦死乗員の二階級特進の場面があり、同様の制度が維持されていたことが分かる。この場面では宙将の土方はそれ以上がないため戦死しても無昇進だったが、下士官の斎藤始は四階級特進の一等宙尉で戦死により最も昇進したキャラになっている。なお、生存乗員についてはガトランティス戦役を経てもなお島ほかの乗員は一人も昇進していない。
 前作ヤマト2での元乗員の扱いを現代の制度と比較すると科学局長の真田は大佐ないし将官級、小艦隊を指揮していた古代は将官、島は予備役佐官で長官秘書の森雪は部長級職員となる。特に古代は後に空母艦隊を指揮し、将官と思しき将校に攻撃機発進を命じていることから佐官ではありえず、土方は大将ないし元帥と、旧ヤマトの乗員についてはイスカンダルへの英雄的航海にふさわしい処遇が地球防衛軍によってなされている。