Mobilesuit Gundam Magnificient Theaters
An another tale of Z reviews

宇宙戦艦ヤマト2202


第15話 テレサよ、デスラーのために泣け!

あらすじ
 テレサのコスモウェーブの影響でデスラーの過去が暴露される。ヤマトはデスラー艦隊と戦闘を始め、キーマンがデスラーと対峙する。

Aパート: デスラー兄の呪縛、引き籠もるテレサ
Bパート: ヤマト対デスラー艦隊、デスラー対キーマン

コメント
 ついにテレサの下に辿り着いた古代たちだったが、待っていたのはデスラーだった。前作ではテレサと邂逅したヤマト乗組員は彼女から白色彗星の正体を図解入りで説明を受け、地球の脅威と防衛軍本部に報告するのだが、2202ではそうはならず、デスラーは一人語り、古代らはニードルスレイブとの戦闘に突入していく。しかし、万難を排して超次元空間と交流できるテレザリウムに赴いたのに、聞かされたのが宗教話では。

 デスラーの過去は元々叔父が始め、兄が引き継ぐはずだったガミラス統一を弟のアベルトが引き継ぐことになり、叔父以来のガミラス星の秘密を抱えつつ、肉親や政敵を処刑して権力の座に登り詰めたというものだが、そういう人物にしてはアベルトは性格が遁世的で柔弱にすぎ、とてもそういう大事業を達成できる人物に見えないことがある。先の戦いでデスラー(アベルト)を失った彼のシンパは同じ血族のキーマン(ランハルト)を探し出し、次期総統の座に就けようとしていたが、アベルトの生存で事情が変わることとなる。

 全般的に2199テイストの強い話で、間奏曲も同じものが用いられ、ここは4章までのDVDの売れ行き不振と酷評を見た元2199スタッフが加勢して助言した感じである。14年前の演説のシーンで登壇したデスラーの周囲に侍っているのは3名ほどの氏名不詳を除けば左からドメル、ヒス、ギムレー、ディッツ、タラン兄弟、ゼーリックと2199の面子が顔を揃えている(ドメルとタラン兄弟はディッツの部下で閣僚級でない)。セレステラは忘れられたのかここにはおらず、直後のカットでマティウス妻を拘束しているのは2199では穏健派のはずのディッツと弟タランである。三年も経つと作った人間も誰がどの立場だったか忘れてしまうらしい。

カオルのひとこと
 テレサに呼ばれてきた古代と真田だが、ひとしきり説教が終わったそのとき現れたデスラーに話の筋を持っていかれ、本筋がどこにあったかさっぱり分からなくなる。デスラーがなぜ生きていたのか、など何の説明もないまま、28年前、22年前…と断片的なデスラーの過去が語られて、それはそれで興味深いが、おかげで古代ら本来の主人公が置き去りになり、結局一番のターニングポイントになるべき話が「デスラー」一色で終わってしまった。
 古代ら救出のため、陽動を行いながらキーマンの戦闘機を発進させるヤマトだが、それもこれも、断片的な場面の切り貼りだけで説明がなく、すべて視聴者が推測するほかない。読解力が求められるが、読み解いたとてさしたる筋書きもないため、見ていて疲れるだけである。

評点
★★★ デスラー裏話は面白いが、やっぱり方向性を見失った話。(小林)
★★ デスラーの過去話はそれなりに引き込まれる。(飛田)

用語解説

マティウス・デスラー
 2199ではデスラーは個人名ではなくガミラスの名族の家系で、ドイツの諸侯に似た有力貴族の一家となっている。モデルはホーレンツォレルン家、プロイセン王国の支配一家で、銀河英雄伝説ではゴールデンバウム家のモデルのため、王家の人間には善人から悪人まで数多くのおなじみのキャラ名が名を連ねる。辺境の一諸侯からドイツ帝国を築き上げた逸話は同時期に訪欧した大久保利通のほか、数多くの作家の創作意欲を刺激したが、実の所は歴代のプロイセン王にさほどの人物はおらず、ドイツ統一は配下のビスマルクに担がれた74歳のヴィルヘルム1世によるものである。そもそもウィルヘルム自体、兄の死によって高齢で即位したため、これがドイツを統一し、初代皇帝になる人物とは誰も思っていなかった。
 2199もほぼこのコンテクストを踏襲しており、大公のエーリクはマティウスやアベルトの叔父で、元々は大公位を継ぐ人物でなかったものが前大公(アベルトの父)の死で公位を継承したものと思われる。そのため、公位の正統性はアベルトの家系にあると思われるが、アベルトが定めたデスラー紀元がアベルト32歳の時点で103年であること、28年前の場面でのエーリクが70歳代の老人にはとても見えないことを考慮すると、これは前大公の生誕年と考えるのが妥当で、マティウスは前大公が50歳、アベルトは70歳の時の子となる。が、異母弟ではなく同母弟のため、おそらくは後妻で、マティウスは連れ子で前大公の養子と思われる。継承関係の先後からエーリクが大公位を継承したのはアベルトの年齢から30〜35年前と思われる。
 カットから前大公死後のガミラスは公弟エーリクを中心に諸侯の合議制で統治されていた様子が伺えるが、マティウスは前大公の領地を継承し、ゼーリックらと同格の諸侯として合議に参加していたようである。ガミラス滅亡の秘密を知り、軍事的才能に恵まれた彼がエーリクを補佐して統一を推し進めたと考えれば、その後のアベルトが諸侯を抑え、ガミラスの総統に就任するお膳立てはすでに整っていたことになる。


第16話 さらばテレサよ! 二人のデスラーに花束を

あらすじ
 キーマンの仕掛けた反波動格子によりエンジン停止したヤマトはガミラスに拿捕される。一方、テレザートを掌握したデスラーはズォーダーとの交渉を企図するがキーマンに邪魔される。

Aパート: 拿捕されたヤマト、鶴見の葬式
Bパート: キーマン造反、テレザート消失

コメント
 テレサの言う縁とは良く分からなかったが、要するに「成り行き任せ」というもののようである。キーマンの仕掛けた反波動格子でヤマトはエンジンを停止して拿捕されるが、後でこの格子が波動砲パワーアップの決め手になるので、彼女が言う「感じたこと」のままに行動していれば彗星要塞も滅び、万事めでたしめでたしとなるようである。で、元々ギムレーらに推された総統候補でデスラーの後釜に座るはずだったキーマンはテレサの言葉でアッサリと翻意を決める。これも後になれば「その方が良かった」的な話なのだろう。しかし、ストーリーとして予定調和を予定された話はこうもつまらないものか。

 テレサは高次元生命体であるが、テレサと同じ特殊能力はガトランティス人も持っているので、すでにミル=大帝=ガイレーンと異能者の系譜が分かっていることから、キーマンを迎えて和気藹々のヤマト乗員を透視したミルは自爆寸前の錯乱状態に陥る。この透視能力は少々都合が良すぎ、ストーリーを歯切れの悪い曖昧なものにしているが、この特殊能力につき、最も冷ややかな視線を向けているのがデスラーで、ミルを亜空間に封じ込めて通信可能か試したり、テレサに適当な質問をして冷笑するなど、どうも見慣れない新たな力につき、その限界を見極めようとしている感じである。

 正直、福井の作る話なので、こういう背後を考察しても徹底しきれない恨みがある。常にバックドア(言い逃れ)の余地を残しているこの作風の場合、作品の背骨になる筋がなく、考えることにも徒労感を感じるが、割としっかりした2199の設定をベースにしたこの辺の話は次の波動砲祭りに比べればまだ考える楽しみもある。あと、5章でまたエンディングが変わるが、最後に登場するガキは何とも言えずかわいくない。たぶん小林の写真だろうが、そういうお遊びは作品を真っ当に作ってこそ、初めて行う権利のあるものである。

カオルのひとこと
デスラーとキーマン、二人のガミラス星人の立場の違いが明らかになる回。ガミラス星の寿命が尽きんとする中、ガミラスを離れて長くは生きられないガミラス星人のために、可住惑星を探したかったデスラー、そしてテレサの力を借りて可住惑星を見つけようと、テレサに呼ばれたヤマトに便乗し、直前でヤマトを無力化してテレサの恩寵(?)を横取りしようとしたキーマン。そういう構図だが、もう完全にこの二人が主人公のような扱いである。肝心なこととして、テレサがヤマトの諸君を呼び出して何をしたかったのかさっぱり分からないまま話は進む。キーマンは結局テレサのいう「和」と「縁」でヤマトに残ることを選んだようだが、海中に墜落したキーマンを戦闘機で救出に向かった山本が、どうやって彼を海中から引き揚げたのか、謎である。

評点
★★★ 元2199スタッフの憤懣が良く分かる話。(小林)
★ 二人のデスラーの独白で話が進む。ヤマトは完全に背景化した。(飛田)

用語解説

ヤマト2199
 本サイトでは「凡作」と評価している1974年の宇宙戦艦ヤマトのリメイク作、元デザイナーで絵フェチの出渕裕がメガホンを握るという中途半端なリメイクで、絵が多少良くなった以外は女子キャラ乱舞による水着大会とか、旧ナチス趣味の敵幹部など出渕の趣味全開の作品である。が、出渕に加え、どんな屁理屈でも突き詰めるアスペルガー要員のむらかわみちおの貢献で設定については本編では紹介しきれないほどの多数が作られ、デスラー復権についても考えはあったと思われる。15話と16話の中盤までは古いこの設定をベースにした話である。その証拠にネタ切れの中盤以降はグダグダになり、結局ヤマトは何のためにテレザートに来たのかも分からずに地球に帰ることになる。また、2199では74年ヤマトのあの凄惨なガミラス星壊滅はなかったことにされているので、国としてのガミラスは存続しており、デスラーを追放して地球の同盟国になっている。ほか、制作の途中で東京電力から横槍が入ったことにより、放射能汚染の設定も排除され、あの意味不明のCRSは2199のはた迷惑な遺産である。しかし、元々前作には及ぶべくもない低レベルの作品のため、これと2202のどちらが優れているかという議論は五十歩百歩のする価値のない議論である。