Mobilesuit Gundam Magnificient Theaters
An another tale of Z reviews

宇宙戦艦ヤマト2202


第11話 デスラーの挑戦!

あらすじ
 怒りに任せてヤマト追撃を命じたメーザーはデスラーによって処刑される。監視役のミルを欺きつつ、ヤマトを追い詰めるデスラーには裏切りの秘策があった。

Aパート: メーザーの最期、デスラーの攻撃
Bパート: プラズマ空間の戦い、ちくわ惑星の崩壊

コメント
 だいぶ前の話だが11番惑星に置き去りにされた250万隻艦隊のメーザーが再登場し、受けた屈辱を注ぐためヤマト追撃を始める。それを見たミルはデスラーに「(人間的な感情に汚染された)汚染艦隊」の討滅を依頼、放たれたデスラー砲はメーザーとナスカを宇宙の藻屑にする。デスラー艦のミルは「汚染源」であるヤマトに関わるデスラーに「ぞっとしない」と評する。しかし、こんなことで滅びるような軍隊なら、そもそもヤマトは無粋な軍艦で大した娯楽もなく、艦を送り出したのは地球であることから、これは芦沢や藤堂が気を利かせ、防衛軍本部での盆踊りの映像などを送れば艦隊どころか彗星までもが狂乱して消し飛ぶに違いない。

 小林誠のオリメカが鼻につくようになるのもこのあたりからで、そもそも前作のコスモタイガーUより山本が搭乗する小林デザインの折り紙細工のカトンボのようなコスモタイガーTの方がはるかに登場頻度もカットも多く、今回登場のデスラーの旗艦「ノイ・デウスーラ」も前作の流麗なデザインは見る影もない不細工な海底軍艦にされ、ヤマトの半分くらいある大型ミサイルで攻撃してくる。が、波動防壁のおかげで至近距離でもヤマトが消し飛びそうなミサイルはヤマトに傷一つ与えることができないようだ。「ヤマトの位置は敵に捕捉されているらしい」と真田が呟くが、そもそも捕捉されていなければミサイルは飛んでこない。ヤマトはワープで逃げるが、デスラーの計略で超新星のプラズマ空間に誘い込まれ、波動エンジンが使用不能になる。

 コスモウェーブを使えるミルをレーダー代わりに使い、易々とヤマトを再捕捉したデスラーは麾下の駆逐艦に攻撃を命じる。が、ヤマト同様の波動エンジンを持つガトランティス艦はエンジンを止めずに突撃したため、次々と自爆して爆発する。さらにデスラーはコスモウェーブの届かない円筒形天体にヤマトを誘い込む。「ヤマトなど何の意味もない」とうそぶくデスラーの狙いはヤマトよりガトランティス本星のコスモウェーブによる監視を断つことにあった。ミルは拘束され、デスラー砲の攻撃で円筒天体は消滅する。ヤマトは辛うじて逃れたが、ミルを監禁したデスラーはタランのガミラス艦隊と合流する。

カオルのひとこと
 原作では冒頭に登場し、いわば新参の敵ガトランティスにヤマトの「恐ろしさ」を伝えつつ先導役を果たしたデスラー総統が、ようやくここで登場である。もっとも2199でのデスラー総統の立ち位置がおかしなものになっているため、デスラーにとってどうかはともかく、ヤマトの諸君にとってのデスラーがどういう存在なのかはよくわからない。
 ヤマトを追い詰める執念を買われて艦隊を与えられたデスラーだが、その旗艦には痛車のように柄が描かれ、あまりのダサさに呆然とする。それでも、一瞬にして裏切りデスラー砲でガトランティス側の艦隊を始末、筒状天体にヤマトを追い込む手際は本作を見ながらはじめて、引き込まれるものを感じた。それは構成や演出というよりも、それを引き出すデスラーというキャラクターの土台によるものだろう。後付けの設定が邪魔をしなければ、それなりなのだが。

評点
★★ デスラー以外に見所がない。(小林)
★★ デスラーのもつ「地力」に引っ張られた回。(飛田)

用語解説

波動エンジン
 ヤマトに搭載されている波動エンジンは宇宙空間のエネルギーを取り込んで推進力を得る永久機関(厳密には違う)だが、本話で同型のエンジンはガトランティスの艦艇にも搭載されていることが明らかになる。エネルギー過剰の空間に突入した真田はエンジンを切るように進言するが、切らなかったラスコー級は溢出したエネルギーでエンジンを暴走させて自爆する。実は空間からエネルギーを取り込む機関は他にもあり、現代のジェットエンジンがそれである。やはり超音速では吸入気の運動エネルギーが過多となるため、ショックコーンを用いてこれを燃焼に必要な亜音速に減速し、残りはそのままバイパスさせて推進力として用いている。例えばSR−71偵察機に用いられているJ58エンジンは推力の80%をこのコーンから得ている。なお、ヤマトのエンジン始動手順とその用語はなぜか自動車のそれに酷似している。


第12話 驚異の白色彗星帝国・ヤマト強行突破!

あらすじ
 11番惑星からヤマトに乗り組んでいた桂木が実はサーベラーのコピーと判明。二人のサーベラーの共鳴にガトランティスとヤマトは翻弄される。

Aパート: 桂木の正体、ヤマト彗星突入
Bパート: 彗星昼メロドラマ、ズォーダーのサーベラー絞殺

コメント
 冒頭で桂木の正体がサーベラーの分身と分かるが、自身で「彗星都市帝国を操る唯一の存在」と称し、ズォーダーが髪を黒く染めてヤマトに送り込んだという話だが、この「都市帝国」という言葉、「さらば」で波動砲を使い彗星のガス体を吹き払った土方が現れた敵の宇宙ステーションを見て即興ででっち上げた言葉で(それまでは「彗星帝国」)、南部創案の「デスラー戦法」同様、劇中での呼び名がそのまま正式名称となってしまった例である。後で小林オリメカのこれは「都市ですらない」ことが分かるので、2202の例によって適当な言葉遣いの一つである。

 そもそもヤマトには福井の好きなドロドロお色気要員がいないので、「唯一の存在」と言えるサーベラーを福井がいいように料理しているが、どうもクローン体は同じ空間に二人いると都合悪いようで、ヤマトにいる桂木には手を出せないので、近い方のサーベラーをズォーダーは絞殺して始末する。どうもサーベラーは冷凍保存か何かされているオリジナルがおり、それをガイレーン(おそらくズォーダーの先代)がコピーして彗星の運転手としてズォーダーに侍らせているらしい。桂木がオリジナルかコピーかは分からないが、実はこのアイディア、この作品ではタブーの松本零士の迷作「メーテルレジェンド」のパクリである。この場合はオリジナルは肉体を捨て機械人間となっており、無数に用意されたクローンを除けば、生体としての雪野弥生(プロメシューム)は存在していなかった。今回もたぶんそのオチだろう。

 潜入した彗星にはバカみたいに多い艦隊と火星大の惑星などがあったが、全てサーベラーによって仕切られているらしく、彼女が人事不省になると活動を停止する。どうも制作者にとってこれらよりも、おそらくはスポンサーの意向の仏教説話の方により関心があるようである。しかし、12話も見てもちっとも「宇宙戦艦ヤマト」を見ている気がしないのはどういうことだろうか。

カオルのひとこと
 11番惑星からしれっとヤマトに乗り込んで看護師になりおおせている謎の女の主役回。その正体は実はサーベラーで、どうもガトランティスの白いもののけ姫みたいな女と同一の遺伝子を持つ者らしい。しかも純粋体と呼ばれる唯一無二の存在らしいのだが、具体的な説明がないので言葉尻をとらえて類推するよりほかにない。
 純粋体であるがためにシンクロして二人同時におかしくなっていくのだが、そこでズォーダーとのドロドロした愛憎劇が展開されてうんざりする。どうやらいつの間にまヤマトは白色彗星に飛び込んでいたりしてるらしい。本来主役はヤマトと古代ら乗組員のはずなのだが、戦う以外はほとんど見せ場のない彼らが哀れである。
 ズォーダーはやたらと自分たちのことを「作られし命」と言うが、ではそれを作ったのは誰か、という疑問が出てくる。そこを突き詰めていけば深い話になる錯覚にとらわれるが、そもそもそうした設定自体が物語の枝葉にすぎないことを忘れてはならない。一体この話の幹はどこへ行ったのか。

評点
★★ 人情浪花節としては月並み。(小林)
★ 2人のサーベラーが同調する場面がガンダムすぎて白ける。(飛田)

用語解説

純粋体
 ズォーダーらのようなクローン体とは異なる「純粋な」ガトランティス人とそのクローンを指すと思われ、その代表がズォーダーの寵臣シファル・サーベラー、ヤマトに乗り組んでいる桂木響子も純粋体であり、ズォーダーによってヤマト探索に差し向けられた。が、かなりご都合主義的な展開であり、そもそもこの女性は考古学者レドラウズ教授の助手の地球人としてヤマトとは縁もゆかりもない11番惑星におり、土方が理不尽に拒否しなければ教授とともに惑星シュトラバーゼの発掘に同行していたはずである。つまり、ヤマトとは全く出会わなかった可能性があり、なおスパイとすればやはりコスモウェーブによる予知能力か超能力があるとしか言いようのないものになっている。「彗星都市帝国」の運転免許を持つ唯一の存在で、玉座の間のオルガンを弾くことで彗星を操れるが、後ろ向きで前方不注視でも運転できるのはやはり超能力があるからなのだろう。その能力から二人の純粋体が同じ空間に存在することはできず、近接した場合は激しく共鳴してオリジナルの記憶が喚起される。が、その都度ズォーダーに絞殺されており、死体を見たガイレーンの嘆息から、純粋体が二人以上いることはガトランティスでも案外普通のことのようである。