Mobilesuit Gundam Magnificient Theaters
An another tale of Z reviews

宇宙戦艦ヤマト2202


第9話 ズォーダー・悪魔の選択

あらすじ
 アケーリアスの遺跡でズォーダーと対峙した古代はガトランティスの正体を知り、選択を迫られる。

Aパート: ガミラス反乱軍との交戦、ズォーダーの説法
Bパート: 森雪スカイダイビング、ヤマト脱出

コメント
 パヨクの反乱軍と交戦するヤマトをよそにズォーダーの説教は続いている。しかし、ガトランティスの大帝というこの人物、つい先日まで存在すら知らなかった田舎惑星の一戦艦の乗組員を掴まえて何を説教したいのだろうか。それに出渕のポンコツ戦艦に乗るこのパヨクのおっさん、これは小林や福井から見た左翼運動家の像なのだろうが、そういうのを余計な夾雑物というのである。

 結構長い説法の間、ガトランティスの実体が明らかになるが、どうも彼らは先史文明に作られた人造人間らしく、他文明を見つけては攻撃し、恭順しない場合は根絶やしにすることが使命らしいと分かる。雪への感情に揺れる古代をズォーダーは名前まで調べ上げてネチネチと責め立てる。どう見ても地球防衛軍に蘇生体がいるだろう。が、彼の言う「恭順」とは良く分からない。これは足に鉄球を付けられて奴隷惑星で働かされることか。レドラウズを自爆させ、ズォーダーは同じ蘇生体が避難民を収容した3隻のガミラス艦に分乗していることを教える。そのうちの1隻に雪が乗っていることを知っている彼は古代に「1隻だけ」助けることを伝える。が、会話を盗み聞きしていた雪が飛び降りたことで古代はどの船も選ばずに雪を助けに飛び、怒ったズォーダーは蘇生体を自爆させる。

 もしここで古代が選択に従い雪の乗った船だけを助けたらどうなったかは推測するしかないが、これは多分福井的展開ではズォーダーへの屈服を意味し、全人類は無理でも古代たちはガトランティスに恭順となるのだろうが、これまでの所、ガトランティスが異星文明をその傘下に加えている描写がないので、たぶん全員蘇生体に改造されてしまうのだろう。どうもズォーダーの説法によると人類の苦しみは死なないと救われないようなので、地球人をポアしてテレサの世界に送ることが彼にとっては功徳を施したことになるのだろう。あと、ヤマトと戦っていたパヨクのおっさんは知らない間に死んでいた。とにかくスカイダイビングをやりたかっただけの回なので、これはそれだけ。

カオルのひとこと
 ガミラス艦へ避難民を移乗させているところへガミラス反乱軍が襲い掛かる。それはいいとして、避難民を統率する任務を与えられたのはユキで、せっかく密航してきたのに地球にトンボ帰りとなる。一体それではあの再会は何だったのかと白々しくなる。
 ユキのピンチに飛び出した古代はなぜか遺跡でズォーダーの説教を聞かされる羽目に。これが冗長で意味不明で睡魔に襲われる。古代の愛を試そうと、3隻の避難民収容船のうち1隻を選べという話で、当然ユキの搭乗した船を選べば他の2隻の船に乗った避難民の命は失われることになるが、慌てた古代は誰にもそのことを報告せずに飛び出し、ユキは「古代君に選ばせない」という謎の理由で投身自殺を図る。
 彼らのやっていることに理解も感情もついていかないので、最後の古代の長々とした告白まで、ポカーンと口を開けて見ているしかない。要は、密航してまでついてきたユキを受け入れるのに、これほどの尺が必要だったわけだ。結局人の思いはすべてト書きで説明するしかできない演出は最悪。

評点
★ スカイダイビング以外に見どころがない。(小林)
★ 設定について長々しゃべる福井氏の企画会議のような話。(飛田)

用語解説

パヨク
 ネトウヨやネトウヨ的傾向のある人物から見た左翼主義者の肖像、実在するものではない。専ら主観によって定まり、山口二郎のようなガチガチのマルキストから筆者のような善良なリベラルまで、幅広い階層を含んで揶揄される。なお、そういう本人は自分がネトウヨであることを否定することがほぼ100%である。彼らによりパヨクは基本的人権(ネトウヨ語では「人権」)や民族自決(彼らの用語では「反日」)など空疎なお題目を主張し、男女平等に賛成で、死刑に反対し、なんでも反対の反体制派として描かれるが、その実は我欲にまみれたエゴイストであり、学閥や一部の産業と結びつき、賛同するものを利用しては捨てる狡猾な人間性が強調される。が、筆者の見方ではそう誹謗する人間(ネトウヨ)の方がよほど非愛国的で狭量であり、匿名で個人を攻撃したり、人のプライバシーを侵害したり、地球温暖化の抑止など有益な計画を根拠不明の感情論で潰すなど、社会にとっての害悪を率先して行い、頭の悪い言動をこととしている人間のクズである。



第10話 幻惑・危機を呼ぶ宇宙ホタル

あらすじ
 ノルに訓練をつけるゴーランドは訓練の仕上げのため砂竜惑星に赴く。、一方ヤマトは防衛軍からテレザート途上にある白色彗星の調査を命ぜられる。

Aパート: ノルの訓練シーン、宇宙ホタルとの遭遇
Bパート: キーマン殺虫剤、ヤマト霊界突入

コメント
 前話から「ガトランティスとは何か」という問いに制作者が囚われているようであり、ゴーランド父子の間にある感情をガイレーンから指摘されたズォーダーは不機嫌な顔をする。「自らの愛情がエゴにすぎなかったことを証明し、ガミラスの艦隊もろとも」、やっぱり成仏させる気満々だったようで、たぶん古代が何を選択してもズォーダーは自爆ボタンをポチッとして始末してしまったようだ。

 宇宙ボタルのエピソードはデスラーの復帰一番のエピソードとしてヤマト乗員の動揺を誘うために用いられたが、本作では金属腐食作用に加え催眠作用もあり、催眠術で険悪な様子となった古代と斉藤は一触即発となる。が、キーマン殺虫剤でホタルは除虫され、直後にコスモウェーブを浴びたヤマトは乗員もろとも死後の世界にワープする。どうもホタルを撒いたのはデスラーではなく、色々と事情を説明したかった古代守と沖田だったようだ。共通の霊界体験をしたことでヤマト乗員と空間騎兵隊員の間に絆が生まれる。

 ヤマト乗員と空間騎兵隊の和解は前作ではそれなりに尺が取られたエピソードで、確かテレザート直前まで両者の関係はギクシャクしていたように思われるが、その間に古代との殴り合いや罵り合いなど出自も価値観もかなり違う両者の軋轢は幕間エピソードとしてはそれなりに見物だった。人間関係の溝を埋める、そういった面倒なしに「霊界体験」で和解してしまうのは安易といえ、また、「異常体験をしないとヤマトの仲間になれないのか」と引いた気分になってしまう。たぶん、まともな人間関係の構築というものを、この制作者は考えたことがないのだろう。そして、エンディングでデスラーが登場し、姑のようにチクチク古代をなぶっていたズォーダーの代わりにヤマト討伐の任に赴く。

カオルのひとこと
 赤い小さな光点にヤマトが包まれ、採取して調べるうちに乗組員たちが「ホタルに似ている」と鑑賞しはじめるが、次第に催眠状態に陥っていく。
 真田の機転で脳波に影響を与えた宇宙ホタルの赤い光が青に変わり彼らが催眠状態から抜け出た直後、佐渡先生の「殺虫剤」で退治して一件落着となるのだが、この宇宙ホタルの出どころも正体も、人体に何の影響があるのかも一切説明されずに終わってしまった。原作では確か金属を腐敗させるバクテリアという説明があったが、そういう物理的ピンチよりも精神への作用が描きたかったようだ。
 というのも、この後の展開が強烈だからである。ここにきて、ようやくテレサの姿が現れ呼びかけがなされるのだが、それがまさしく「霊界通信」で、これまでその通信を経験していなかった乗組員に対して、おまえも聞いたか、これで仲間だ、といううすら寒いノリで締めくくられるのだ。テレサの呼びかけは、本作全体の根幹となる重要な要素だが、その呼びかけに応えるヤマト乗組員の思いは、視聴者とともに共有されていた。しかしそれが個別の霊体験に置き換えられてしまったことで、視聴者はある意味完全に「蚊帳の外」に放り出されてしまったのである。

評点
★ ホタルの出所不明で間延びした話。(小林)
★ 制作者もきっと実物のホタルを見たことがないに違いない。(飛田)

用語解説

殺虫剤
 元は毒ガスの研究から生まれたことは良く知られているが、哺乳類に対する作用は低く、主として昆虫の神経系や代謝を撹乱し、それにより死に至らしめる薬剤の総称、農業用として有機リン系やカーバメート系が良く用いられるが、家庭用にはより作用の低いピレスロイド系が販売されている(キンチョールなど)。作用としては神経伝達作用を司るアセチルコリンの分泌撹乱や(ドリン剤やピレスロイド)、これを分解するアセチルコリンエステラーゼの作用阻害(有機リン系及びカーバメート系)、キチン(甲殻)の生成を阻害するブプロフェジン、ATPの生成を阻害するロテノイドなどがあるが、見ての通りほとんどが神経系(多細胞生物向け)の薬剤で、ロテノン以外はバクテリア(単細胞生物)やウィルス(2202はバクテリアと混同している)に対する作用を持たない。ヤマトに常備されていた殺虫剤がどのタイプかは不明だが、陸上自衛隊で使用されている殺虫剤は有機リン系である。つまり、アナライザーの殺虫剤は前作の宇宙ボタルにも本作のホタルにも効かない。