第7話 光芒一閃!波動砲の輝き!
あらすじ
ナスカの合体ビームで11番惑星の地表に封ぜられたヤマト、続々出現する天文学的数の敵艦に救出された斉藤は古代に波動砲の使用を迫る。
Aパート: ガトランティス250万隻艦隊、合体ビームの脅威
Bパート: 逡巡する古代、250万隻艦隊全滅
コメント
この辺制作姿勢の問題だと思うのだが、最初に11番惑星を襲ったナスカと後に現れた提督メーザーは役割が被っている。後の話でどちらもデスラーに始末されるので無意味な割り当てといえ、これはプロの制作者らしからぬ杜撰さである。なお、メーザーとはヤマト2では捕虜になったガトランティス兵の名前だが、本作ではナスカの上官として登場している。
タイトルがあるので救助された斉藤は古代に波動砲を使うことを迫るが、これも左記の割り当て同様不自然な台詞と言え、例えば海上自衛艦に救助された一般市民が艦長にトマホークミサイルの使用を迫るかといえば、兵器の使用判断は専門家である軍人の専権で、部外者がそんなことを言うはずがなく、こういう無理な筋立てはドラマを陳腐に見せる。が、この辺の変さ加減も直後の「250万隻艦隊」で開いた口が塞がらなくなる。どうも無理矢理波動砲を使いたがっているように見えて仕方がない。なお、ヤマト2では19話でこの惑星にこれを撃っているので、いずれにしろ11番惑星はぶっ壊される運命なのである。
それにしても、と、思うが、36年前の超時空要塞マクロスでは「450万隻」の艦隊が登場し、リン・ミンメイの歌で掃討されたが、この作品を作った大学生が多分に中二病で、設定倒れも多々あったことを見れば、少なくとも「宇宙海戦」であるヤマトで250万隻はナンセンスといえ、また、この戦いそれ自体のプロットも詰めが甘い。2の11番惑星は空間騎兵隊しかいない最前線の星だったが、2202のそれは植民星で、仮にヤマト1隻が着桟しても民間人の全員を収容しきれなかった可能性が大だからだ。加えて食料なども与えなければならず、この星に立ち寄った時点でテレザートへの航海は物資を使いつくされ、中途で頓挫した可能性が高い。
カオルのひとこと
11番惑星でヤマトに救助された斎藤は、波動砲を使って敵を撃破するよう艦長代理の古代に迫る。しかし古代はイスカンダルの旅で沖田艦長がスターシャとした約束を破り波動砲の封印を解くことを躊躇し、悩み続ける。そうする間にガトランティスは250万隻の艦艇を筒状に密集させて並べ、そのビームで地球を撃とうとする。
地球の危機を目前にしても悩み続ける古代の逡巡を解いたのはまたしてもキーマンで、そこが一つの人間ドラマ(?)の見せ場なのだろうが、そもそも古代の悩みや独白にまったく共感できない。そのうえ強者のガトランティスが、絵本の「スイミー」よろしく寄せ集めた艦艇で合体ビームという「弱者の戦法」で向かってくるのも滑稽としかいえない。そもそも、ガトランティスは地球を踏みつぶしたいのか征服したいのか、それさえもまだ聞いていない気がする。上っ面だけの話で中身がないため、いくらピンチで煽ってみても、見ているこっちはテンションが少しも上がらないままである。
評点
★ 無理のある論理に無理のある展開、制作者は発達障害か?(小林)
★ ヤマトが波動砲を撃つまで一糸乱れず待っている250万艦が哀れ。(飛田)
用語解説
レギオネル・カノーネ
ドイツ語読みで「田舎(レギオン)の大砲(カノーネ)」というガトランティスの戦略兵器、数百万隻の大戦艦(1隻でアンドロメダ以下の連合艦隊を翻弄した巨艦)の雷撃旋回砲を交互に用いることで惑星間レベルの戦略ビーム攻撃が可能になる。が、構築に時間がかかりすぎ、エネルギーも敵の人工太陽に依存するなど、「クーラーを買ったが電気代がなかった」的な間抜けな兵器である。使用にはズォーダーの裁可が必要で、発射の様子は旗艦から実況中継される。地球を標的にしていたが、もちろん使われることなくヤマトの攻撃で宇宙の藻屑となった。
第8話 惑星シュトラバーゼの罠!
あらすじ
11番惑星を離れたヤマトはキーマンの提案で惑星シュトラバーゼに向かう。惑星でヤマトはガミラス反乱勢力に遭遇し、アケーリアスの遺跡でズォーダーに憑依されたレドラウズ教授が古代を追い詰める。
Aパート: 雪との再会、くだを巻く古代
Bパート: 惑星シュトラバーゼ、反デスラー派の攻撃
コメント
冒頭で損傷した艦を修理しないガトランティス乗員の様子に真田らは戸惑う。元がマクロスなので連中は小2程度の知能で修理という文化を持っていないのだという真田に納得する古代。去りゆくヤマトを見送りつつ(去るまでに10分以上かかったが)、プカプカ浮かぶ大戦艦でメーザーは不合理な感情に囚われる。収容した民間人は200人程度だが、ガミラス艦隊への引き渡しにヤマトは太陽系外の惑星シュトラバーゼに向かう。惑星で会合したキーマン派がキーマンに反波動格子(機動戦士ガンダムのミノフスキー粒子のようなもの)を渡し、どうも腹に一物あるらしいことが明かされる。
取ってつけたようにガミラスの反デスラー派がヤマトを攻撃するが、何か偏向混じりのパヨクのおっさんとその艦隊が古い出渕裕デザインのゼルグード戦艦に乗って突撃してくるさまは例によって陰湿な小林誠の前任デザイナーいじめだが、肝心の古代はレドラウズに誘い出されて桂木に殴られるとダメ指揮官ぶりを露呈している。気がついた古代にレドラウズに憑依したズォーダーが「愛を知る者」と紀州のドンファンが銀座のママさんを口説くような口調で自己紹介を始める。しかし、この場面は本当に必要か? やるなら定番通りヤマトのビデオパネルでやれば良いだろう。
雪の立ち位置は良く分からない。密航して古代に見咎められた後、許されてクルーの一員に加わったはずだが、次のカットでは避難民を引率してそのままガミラス艦に乗り組んでいることから、どうもそのまま送り返されたようだが、経緯から彼女がこの措置に納得するのも変だし、それで納得するくらいなら最初から密航などしないだろうといえる。理由は次の話でヒロインのスカイダイビング(ガンダムUC)を福井がやりたかったからで、そうとしか説明できない辻褄の合わなさである。どうも福井という人は場面をツギハギすればストーリーになると本気で思っているらしい。バカに付ける薬がないとはこのことを言うのだろう。
カオルのひとこと
密航してきたユキが古代と再会する場面は原作では印象深いところだが、そもそも2202の古代はユキがいない第一艦橋に何の違和感も感じておらず、したがって、見ている側にもユキのいない欠乏感が認識されてこなかった。そこで再会のドラマを中途半端に見せられても、正直何の感慨も湧いてこない。かように一つひとつのエピソードが唐突に表れてくるだけで、全体としての大きな物語の流れがないところに問題がある。
11番惑星で助けた避難民がこれからの航海の足かせになるとようやく気付き、またもやキーマンの提案でシュ何とかいう惑星でガミラス艦に移乗させることになる。前作ではヤマトを導いていたのは宇宙の危機を伝えるテレサだったが、本作では怪しさたっぷりのキーマンで、宇宙のロマンどころかきな臭さしか感じないのが残念でならない。どうもメガネ教授と共にいてしれっとヤマトに乗って来る女も胡散臭いが、こういう輩の陰謀めいた話で底の浅い話を深く見せようとしているのが鼻につく。
評点
★ とにかく内容の薄い話。(小林)
★ 見ているうちに、どんどんと感情が「無」になっていく。(飛田)
用語解説
蘇生体
前作でガトランティスがデスラーを蘇生させたことから翻案された2202独自のゾンビ人間、戦傷や事故で死亡した人間の身体を借り、コスモウェーブで思いのままに動かすことができる。レドラウズの様子から生前の本人の意思や記憶もある程度あるようだが、活動時間については不明で、用済みとなるとズォーダーによって自爆させられる。正直な話、こういう設定は宇宙戦艦ヤマトではなく聖闘士星矢のハーデス軍とか妖怪ウォッチの方がよりそれ向きといえる。なお、現代宇宙論の第一人者で、昨年他界したホーキング博士は霊や死後の世界の存在を認めておらず、死とは物理機械的な理由で脳が生理的に活動を停止することであり、魂などなく、自身も含めて魂の器としての肉体を否定している。2202では死後の世界は「別次元」として定義されており、テレサがその管理人であることから、その点でもオカルト的作風に拍車がかかっている。しかし、そこに赴くべきは宇宙戦艦や古代ではなくアテナの聖闘士だろう。