Mobilesuit Gundam Magnificient Theaters
An another tale of Z reviews

宇宙戦艦ヤマト2202


第3話 衝撃・コスモリバースの遺産

あらすじ
 月を訪れた古代にガミラス大使バレルはテレザートとテレサの神話を話す。

Aパート: テレザートの神話、雪の逡巡
Bパート: 時間断層、11番惑星被爆

コメント
 古代を呼びつけて「あの世とこの世を行き来する」テレサの民話を話すバレル大使だが、そんな説明なら学者でも古代に送れば良く、来訪した古代をシューティングゲームで試すなど、ガミラスの大使はずいぶん暇なのだなと思わせる。ついでにキーマンに「CRSの秘密」、通常の10倍の速さで時間が進む「時間断層」まで案内させているが、これは国民に秘密に原爆開発をやっていることのメタファーであろうか。進入に防護服が必要で、この圧倒的な力で地球を復興したCRSがアメリカから与えられた原子力技術であることは容易に推察できることである。

 ヤマト反乱の下りは原作でも解釈の難しい所で、そもそも正規軍である彼らが率先して自組織を裏切る下りは当時の映像を見ても苦しい所がある。新作では「霊」という概念を持ち込んだが、この辺の説明は宗教アニメのようであり、前作よりもさらに苦しい言い分になっている。なお、この回からオープニングがまた変わり、旧ソ連の前衛芸術のような止め絵になっているが、もちろんまるで合っていないし好みも分かれる絵である。

 この回で2199では最先任だった真田が古代に指揮権を移譲する。これは半可通のミリヲタでいろいろ引っ掻き回した出渕裕の後始末で、この作品はこういう辻褄合わせもついでにやっている。なお、侵略者、ガトランティス側の動向は今回は割愛されている。

カオルのひとこと
 ガミラスの月面大使館に呼びつけられた古代は、テレザード星に関する言い伝えを聞かされ、時間が10倍速く進むという時間断層の存在を知る。
 テレサに呼ばれたからには行かねばならない、という大使だが、それと時間断層、ガトランティスの野望など個々に提示されるトピックのつながりがさっぱりわからず、ストレスがたまる。ガミラスの攻撃で壊滅した地球が、わずか3年でアンドロメダをはじめとする多数の艦艇が建造できたのは時間断層のおかげ、というわけだが、記憶を持たないユキが悩んだ末に訪れる佐渡先生の自宅の昭和レトロな調度品(やかんの載っただるまストーブや花柄の魔法瓶などなど)はいったいどうやって再生されたのか。何もかも失った地球にしては、風景が郷愁的にすぎ、かえって製作者がメカ以外の様々なことについて、深く考察することなくその場のイメージで描きあげていることがいやでも目に付く。
 これが復興か、とショックを受ける古代だが、見ているこちらはむしろ「これがリメイクかーー!」と愕然とする。確かに地球の復興は異様に早かったが、そこに時間断層などというトンデモ設定で理屈をつけたところで、話が深まるわけでもない。その労力を作劇に回せといいたい。

評点
★ 時間断層は要らない設定(小林)。
★ オリジナルの設定をほじくり返して謎を生み出す労力が無駄(飛田)。

用語解説

アケーリアス文明
 壮大なスペースコロニーとチャチな宇宙戦艦やガンダムとのアンバランスが著しかった機動戦士ガンダムではあった方が見やすいが、ヤマトの世界では不要の先史時代の現代の文明を超える超文明。人類やガミラス人、ガトランティス人を創造して銀河にばら撒いた。元は統合戦争同様、超時空要塞マクロスの設定。レドラウズ教授はガトランティス人の助手(桂木)と共に調査船を仕立てて遺跡の調査に向かうが土方に邪魔される。後に別次元からエネルギーを汲み出している遺跡が惑星シュトラバーゼに登場し、ズォーダー劇場の舞台となる。



第4話 未知への発進!

あらすじ
 メッセージの謎を解明するため、各々の持ち場を離れた乗員はヤマトに集結する。

Aパート: ヤマト乗員集結、福井特殊部隊の攻撃
Bパート: 山崎たちとの別れ、ヤマト発進

コメント
 それにしても、と、思うのはこの作品、制作者の嗜好か疑問点がナレーションや真田の説明でくどいほどに説明されていた前作と異なり、「あなたたちに全てが、、」とか、「覚悟を示せ、、」、「それがあんたじゃ」、など、ぶつ切りで思わせぶりな台詞が目立つことである。前作でも問題のあったヤマト反乱の下りを納得させるにはかなり高い言語能力と編集能力を必要とするが、テレサの台詞ごときに逡巡する程度の連中に書けるわけがないことも自明の理である。なお、主としてアニメ製作者の嗜好の問題で、福井のダイス軍団(超法規的特殊部隊)により2199の岬、星名、桐生がヤマトから放逐される。

 情理を尽くした長官の説得に背き、この説得はシリーズにしては例外的に「まっとう」であったが、誰も下艦せずに発進したヤマトは先制攻撃で早速戦闘衛星を破壊する。福井の作風についてはイージス、UCから知っているが、基本的にこの人物や小林誠の思考は妄想過剰で臆病なのである。「撃たなければ先に撃たれる」から撃ったと彼らは強弁するだろうが、前作(ヤマト2)ではこれは戦闘衛星に先に撃たせている。それと福井の作品には必ず出てくる公安のエージェントや秘密部隊、これらは日本国憲法にも宇宙戦艦ヤマトの価値観にも合っていない。

 基本的には作品は「リメイク」なので、このあたりの筋は以前の作品と同様の展開で進む、しかし絵も良くなったのに2199同様ワクワク感が乏しいのは、元々の翻案力が低い上に、これでもかと余計なものを入れすぎているからである。

カオルのひとこと
 原作では地球連邦軍司令部の決定に背いて、反乱を起こす形で地球から旅立ったヤマト。そこには「かつて遠い異星から差し伸べられた手により我々は救われた、だから今度は我々が異星からの助けを求める声に応え、宇宙の平和に貢献すべき」という信念があった。本作はそうではなく、テレサが引き起こした霊界通信を受けたものは行かねばならないという屁理屈で、要するにヤマト乗組員らの自発的な意思ではないのだ。思うに福井氏という人は、信念に突き動かされる人が苦手なのだろう。
 そういうわけだから、島の逡巡や置いていかれるユキの思いなど、信念に動かされる人とその周囲に起こるドラマがあるはずもなく、島は特殊部隊のコスプレでヤマトに潜り込んでおり、設定とつじつまの合わない不要なキャラ(山崎、保科、岬)を降ろすためだけに作った筋書きが展開される。盛り上がらなさを自覚したのか、ヤマト発進で主題曲を流す力業もすべっており、何もかもが薄ら寒かった。

評点
★ 長官の説得以外見るべき点なし(小林)。
★ 地球防衛軍の戦闘衛星を先制攻撃で撃ち落とす暴挙に呆れる(飛田)。

用語解説

時間断層
 冒頭でアンドロメダを登場させることと、小林誠が出渕裕デザインのゼルグード戦艦をポンコツ扱いすること以外に意味も必然性もない地球ガミラス同盟を正当化するためにスタッフの提案を福井が採用した超次元空間。空間が反転し通常の10倍の時間で時間が進む。広さは分からないがどうも世田谷区くらいの大きさ。地球では専ら軍事用に用いているようであり、アンドロメダなど地球艦のほか、使用権を譲渡してガミラス艦も建造している。理由としては福井らが「(前作のように)2年で大艦隊を作れるのはおかしい」、「復興が早すぎる」と強弁しているが、宇宙戦艦ヤマトでそれを言うのはナンセンスである。