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An another tale of Z reviews

宇宙戦艦ヤマト2202


第2話 緊迫・月面大使館に急行せよ

あらすじ
 査問会の審問を受けた古代は森雪と再会し、ガミラス武官キーマンの接触を受ける。異様な速さで軍備拡張を進める地球政府に疑問を持ちつつ、古代はキーマンの誘いで月に向かう。

Aパート: アンドロメダ(型)進宙、英雄の丘
Bパート: テレサのメッセージ、キーマンとの接触

コメント
 2話から新オープニングが始まるが映像が前話のバンクの使い回しで見るからに白けてしまう。それと新見らがガトランティス兵士を取り調べている際に画面の端に映っている、「参謀本部検閲済」の文字、どうもこの世界は現代の中国と同様、法の支配も人権もないらしいと分かる。細部に凝るのは結構だが、そこの官僚的修辞に惑わされ、事の本質を見失うのをヲタク、又はバカという。それと軍規違反を犯した古代を審問した裁判所の「大法廷」、普通は大法廷とは15人(国による)の裁判官が出揃い、判例変更を言い渡す場合に開かれるものである。考証担当、少し間抜けが過ぎないか? なお、その間に自爆したガトランティス兵士により新見が負傷する。

 英雄の丘の場面は前作通り、赤穂浪士の南部坂の別れと同じ型通りの映像だが、会合を主催する佐渡の服装は少々だらしない。靖国神社の戦友会の会合で元軍医がドテラに下駄の格好で出席するなどあり得るだろうか。宇宙戦艦ヤマトという物語が戦前と戦後の地平にある物語である以上、粛然と哀愁のパトスはこの物語の背骨にあるものである。「ダンス・ウィズ・ウルフズ」で主人公のコスナーが出立に際し、軍服のボタンを磨き上げる場面があるが、この自律と挟持こそ、一部戦前を引きずったヤマトの宇宙戦士たちにあったものである。が、彼らは大戦艦との戦闘中に見たという謎のテレパシー(霊話)に興じていく。どうも謎の宇宙人がテレパシー通信をヤマト乗員に送ったらしい。なぜか森雪だけが通信を受けなかったが、この特別扱いは2199の同様の演出のマネである。

 「中身の薄い話」というのが正直な感想で、旧作で説明された部分については別に聞かなくても内容は分かるし、新たに付け加えられた部分については掘り下げがない上に興味の沸かない内容でそのまま見過ごしても良いような散漫さであった。ナレーションが廃された影響も大きく、前作では視聴者の頭の中に精密に位置付けされた侵略者と関係者の人間関係や立ち位置がアバウトに画面から想像するしかなくなっており、これも興味の沸かなさに拍車をかけている。

カオルのひとこと
 真田との連携でナゾの大戦艦を撃退した古代を出迎えるユキとの会話は、織田裕二の代表作「ベスト・ガイ」を彷彿させる寒さで神経がやられる。説明不足は相変わらずで古代とユキとの関係も曖昧なままである。霊界通信でヤマト乗組員を召集しているのは宇宙の彼方の裸族の祈り人らしいことが示されるが、作者の関心はむしろ月面でのドッグファイトにあるらしい。ナゾのメッセージの発信源を追究という展開になっていかないもどかしさに、どんどん心が物語から離れていく。
 それでもここまでは作者の感性の問題だが、怪しいガミラス人の男に、月面大使館に招待される古代という展開には疑問符をつけねばならない。大使館とは通常首都に置かれるもので、都市機能の見当たらない月面など日本で言えば釧路湿原のようなものだ。しかも「領空侵犯」とか、それは大使館ではなくガミラスの占領地ではないのかとツッコミたくなる。現在の時間軸の先にこの物語があるのなら、こういういい加減な設定は「SFだから」では済まされない。制作陣は誰も、大使館の機能について下調べをしなかったのだろうか。

評点
★ ここまで改悪しかない話も珍しい(小林)。
★ 話があちこちに振れて少しも筋が見えてこない。霊界通信にはドン引き(飛田)。

用語解説

コスモウェーブ
 テレサの発する原理不明の超光速テレパシー通信、強い指向性を持ち、どうやら特定人をロックオンして照射できるらしく、照射を受けた人間は脳に変調を来して故人の幻影やメッセージなど居ながらにして別次元の幻覚に囚われる。作品では旧ヤマト乗組員を中心に発せられ、そこで見た裸の女の幻影は彼らを集団脱走に駆り立てる契機となった。なお、この怪電波はテレサよりもむしろズォーダー大帝の方が使用に長けており、特に古代を狙い撃ちして用いられ、テレザートに向かう彼を苦しめることになった。本作ではズォーダーのほか、ミル、桂木透子やサーベラーも用いることができ、デスラーが興味を持った。