Mobilesuit Gundam Magnificient Theaters
An another tale of Z reviews

宇宙戦艦ヤマト2202


第1話 西暦2202年 甦れ宇宙戦艦ヤマト

あらすじ
 西暦2202年、復興成った地球はガミラスの同盟国としてガミラシア宙域でガトランティスと交戦していた。ガトランティスの大帝ズォーダーはテレザート星を蹂躙し、戦いでは新戦艦アンドロメダが来援し、拡散波動砲で敵軍を一掃する。

Aパート: テレザート壊滅、ガミラシア宙域の死闘
Bパート: アンドロメダ登場、沖田の亡霊

コメント
 2007年に福井晴敏氏がガンダムUCを企画した際、彼はうず高く積み重なった設定を整理して隙間を見つけたと言い(その作業自体福井のそれではない)、コソコソ泥棒猫のように「俺にもやれそうだな」と参画の正当性を説明していたが、10年後の2202では元となる作品はすでにあり、前年の2199という作品もあったことから、これは隙間どころか本編そのもので、2199同様、2202は「リメイク」で30年前の作品を上書きするものであるが、今回も「俺にもやれそう」と脚本を担当している。

 が、できあがった作品を見るに、UCにしろ2199にしろ、要は何らかの方法で作品の執筆権を得た福井が原作へのリスペクトも何もなく、自分勝手に「俺作品」を開陳しただけのものであり、当時の説明にもあった「大人の事情」とは視聴者を煙に巻く、まなじりを決したファンの鋭い斬り込みを逃れるだけの方便でしかないことが分かっている。そしてこの詭弁とはぐらかし、視聴者(主権者)に対する不誠実な態度は2018年当時の腐敗した自民党政権の答弁にも通じるものがある。そして脚本の福井と副監督の小林は私生活でも7月の水害で被災地を肴に酒宴に嵩じる堕落した権力の片棒担ぎのような自尊心に欠ける言動と行動が目立つ(小林ツイッター)。

 と、最初から非難轟々だが、実は期待していたのである。2199はあまりにもひどかった。前作のテイストはほぼ無視、中途半端なミリヲタに見る影もなくヘタれた敵味方、水着大会の女子キャラ乱舞に辟易していたこちらとしては、続く作品はこの作品を「ほぼ無視」して欲しかったし、できそうな雰囲気もあった。なにせこの2199と来たら、地球が滅亡しかかり、荒れた星に置き去りにされた地球市民は塗炭の苦しみを舐めているというのに、それを横にヤマトビールで仮装大会に興じる乗員の姿を描いていた上に、ビーメラー星ではさらにその市民を見捨て、ヤマトのみで人類生存を図ろうとした反乱分子をさも正当性があるかのように描いたのだから、この感受性の欠如はこれは彼らを雇った人間と彼らそのものの姿だったのだろう。

 第1話について述べると、当レビューでは最初の話では作品解説をしないが、冒頭のガミラシア戦の時点で匙を投げたというのが本当である。視聴者は別に戦艦ヤマトの世界で現在の日米同盟に似た世界観や国際問題を提示してもらいたいのではない。40年前の作品の世界観に則って必要な部分はアップデートし、無理のある部分については現代に通用する、機知に富んだ解釈を求めたのであり、「地球とガミラスの同盟」という、前作2199に照らしても無理のある話は制作者が状況をトレースするばかりで自ら考える頭を持たないこと、縁故絡みのエゴを自分に都合の良い解釈でゴリ押しすることがせいぜいで、物事を理解できるほどの高度な知性を持たないことを如実に示している。

カオルのひとこと
 私の知っていた「ヤマト」の世界では、リメイクの2199も含めて地球の戦艦=ヤマト一隻というのが基本だったが、いきなり大艦隊が対峙するナゾの展開に面食らう。しかも一方が宇宙征服をたくらむガトランティスであるのはわかるとして、もう一方がガミラスで、古代の言葉によれば地球の「同盟国」というので思考が停止してしまった。
 撤退する敵艦隊にアンドロメダの拡散波動砲を浴びせてやっつけたかと思えば、敵の大戦艦が地球に落下していくのを古代の「ゆきかぜ」が食い止めるという展開、「銀河英雄伝説」や「逆襲のシャア」など過去の別作品に出てきた場面のツギハギというのがいかにも福井氏らしいが、いきなりクライマックスのような盛り上がりにまったくついていけず。そもそもほとんど主人公をはじめとする人間はただメカを動かしているだけみたいな話で、「ヤマト」で連想されるドラマを期待するのははじめから諦めた方がよさげである。

評点
★ 失笑しかないオープニング、ヤマトでなければ次週で打ち切りだろう(小林)。
★ 状況説明が何もされないまま話が始まる。作者の自己満足か?(飛田)


用語解説

地イ和親条約
 前作2199の時点で地球とイスカンダルの間に結ばれた平和条約、ヤマトの目的たるCRS(コスモリバースシステム)引き渡しの前提条件であり、波動砲の封印を主な内容とする。2202世界ではそもそも2199年の戦艦ヤマトには全権使節が乗艦しておらず、艦長沖田が独断で結んだこの条約は無効という解釈であるが、だったら2199年の時点でイスカンダルに到着したヤマトは特使が来るまで同星に滞在せよということになり、その場合は時間切れで地球が滅亡したことは状況から疑いなく、ヤマトの航海の性格から、同星での外交をスムーズにするため、沖田には信任状(クレデンシャルズ)が出帆前に与えられていたと見るのが当然である。これも外交オンチの2202スタッフがおバカの累乗ででっち上げたアホ解釈の一つといえ、そういう手続を要求するなら、信任状も確認せずに場末の一艦長と条約のようなものを結び、喜々としてCRSを引き渡したスターシャはアホということになる。が、これについては2199でスターシャがことガミラス相手の外交では総統デスラーも含めそつなくこなしている光景が描かれており、そんなミスをするはずもないことは前作ですでに説明されている。つまり、地球政府の行動は明白な条約違反であり、イスカンダルのほか、ガミラスなど関係国の非難や対抗措置を免れないものである。