<復刻版>作品紹介 宇宙戦艦ヤマト復活篇

「待っていろ、雪、必ず助けてやるからな。 が、その前に、地球を救わなければ、、」
ヤマト復活篇 筆者の選んだ台詞ベスト(古代進)

(2011年制作、2017年再編集)


目次
1.はじめに
2.作品全体として
3.ヤマトは再建か、それとも新造か?
4.キャラクター編
 4−1.ヤマト乗組員
  その1(古代、異次元星人)
  その2(大村、上条、小林)
  その3(折原、佐々木、桜井その他)
 4−2.地球防衛軍および関係者(真田ほか)
 4−3.大ウルップ星間都市連合
   構成国
   1.SUS
   2.アマール
   3.エトス
   4.ベルデル
   5.フリーデ
 4−4.取りこぼし
5.メカニック編
6.宇宙海戦

7.外部リンク
8.ディレクターズ・カット版について



1.はじめに



<ヤマト復活編・あらすじ>
 西暦2220年、太陽の300倍の質量を持ち、光をも飲み込む暗黒の天体、移動性ブラックホールが宇宙から地球へと迫っていた。地球連邦政府は、移民船団を組織。サイラム恒星系アマールへの移民を決行するが、謎の大艦隊の攻撃に遭い、船団が壊滅。古代進は移民船団の護衛艦隊司令としてヤマトに乗り込み、大艦隊に戦いを挑む。


 「宇宙戦艦ヤマト」と、言われても、ちょっと今の人にはピンと来ない作品かもしれません。「さらば〜♪ 地球よ〜♪」というヤマトの歌は時折NHK歌謡ショーで歌われ、一緒に演歌とか懐メロとかが流されることが多いので、「ああ、その時代の作品か」ということで、今の若い人には事実上無視ということで、実際、「復活編」の映画の評判もそんな感じだったようです。映画館に来るのは中年ばかり。

 しかし、やっぱ面白いですね。ストーリーも手際よくまとまっていたと思います。予算の制約で作画技術が一時代遅れなど、表面的な部分だけを見たのでは誉めるところの難しい作品ですが、続編の制作を期待する向きとして、本サイトでもレビューを載せておこうと思います。



2.作品全体として



 いわゆる前作の「ヤマト」は作中年代では17年前、実年代では27年前(当時筆者は中学生だった)に水惑星アクエリアスの引き起こす宇宙洪水から地球を守るために自爆して沈んだのですが、「復活編」ではそれは一つの事実として、それからかなり時間の経った時代が描かれます。ヤマトの時代では未知の技術だった波動エンジンは完全に消化され、人類は太陽系外に進出しています。民間船でもワープ航法が当たり前の時代になっていますが、前作を覚えている人には分かることとして、前の作品ではそれが地球連邦艦隊の旗艦アンドロメダでも作中でワープをした場面は一つもありませんでした。その点、割と平凡な船でも普通にワープ航法をしている本作の舞台は筆者としては結構衝撃でしたね。上のあらすじの通り、この話では宇宙洪水ではなく、「移動するブラックホール」が地球に近づいているので、地球防衛軍はイヤでも移民船を作り、全人類を乗せて他の星系(サイアム恒星系アマール)にワープしなければならなくなったわけです。

ヤマト復活篇オフィシャルサイト
ヤマトクルーオフィシャルサイト 資料等がある
その他のリンクはこちら

 それで、この時代の人類がどのくらいいるのかと筆者は思ったのですが、どうも移民船団は1次〜3次まであるようですから、作品中で生き残った移民の数を読み上げる描写がありますが、そこから換算すると、どうも10億人程度のようです(一船団三億人とコメントあるため)。今と比べるとだいぶ少ないのですが、前作のヤマトでは地球は放射能漬けにされたり、超巨大戦艦に砲撃されたり、占領されたり、太陽核融合の異常増進で干上がったり、ディンギル星人に襲われたりしていましたから、それを考えると妥当な数ではないかと思います。いずれにしてもまだ厖大な人数で、これだけの数の人間が地球を脱出して恒星間航行を経験したとなると、それはそれですごい話でしょうね。

 また、この時代の人類はどうも他の星系の宇宙人と交流があるようで、この辺でも「宇宙人=敵」であった前作とは異なっています。2時間の作品ですが、その世界は前作と比べるとかなり多様性に富んでいます。この辺は、この作品が前作の「ヤマト」の最大の弱点、「主人公が若いうちに宇宙人が地球を侵略する続編を作らなければならない」からは完全に切れ、より息の長いシリーズ制作が可能な、独自のよりオーソドックスな世界観を練り上げていた証拠になります。

 地球以外の宇宙に目を遣ると、前作は割とこの辺は大ざっぱで、宇宙には侵略者とガミラス星人しかいなかったのですが、「星間国家連合」という複数国の連合軍が登場します。これはエンターティメントで描くのは難しいもので、最初に聞いた筆者も「うまく行くのかな」と思いましたが、作品では中心のSUS国以外に4国が登場しますが、この辺の描写も前作のような「絶対悪、絶対強」ではなく、作品の中心である地球文明と比較して論じることができる存在になっています。



3.ヤマトは再建か、それとも新造か?



 17年前にアクエリアスの海に沈んだ宇宙戦艦ヤマトですが、「復活編」というタイトルですので、新ヤマトが登場します。しかし、この戦艦、作品では「再建した」、「ここまでにした」という台詞があり、それだけ聞いていると、どうも前の船を直したようなのですが、作品の描写ぶりを見るとどうも新造戦艦っぽい。他の地球戦艦より一回り大きいですし、だいたい使っている武器が「6連波動砲」とかで、ワープも速いし、これはどう見ても昔のヤマトじゃない。それに艦体も以前のヤマトよりもより原型の戦艦大和に近い感じで太くなっているんですよね。これはやっぱり新鋭艦じゃないかと思いますが、だったらわざわざ旧ヤマトの沈んだアクエリアスの氷塊で建造する必要は無いわけで、どっちなんだろう? と、不思議に思います。続編の制作を期待したいところですね。


個人的には歴代ヤマト中最も戦艦らしいと考える復活ヤマトの船体



4.キャラクター編

 面白いので紹介したいのは確かなものの、どう紹介しようかと筆者も苦慮していた「ヤマト復活編」ですが、ま、技術的には見るべきところは無いですね。以前の「ヤマト」は今の「ガンダム」と同じく、その当時最高水準のアニメーションの集大成だったのですが、その印象で復活編を見ると失望します。CGもあのくらいのCGだったらどこでも作れます。現に筆者もガンダムの戦艦をデザインし直してCGを作っていましたから、そんなんじゃ自慢にならない。この作品が図抜けているのは何と言ってもキャラクターです。以下、組織別に順を追って紹介しましょう。



4−1.ヤマト乗組員

 やはり最初はこれが穏当な線でしょう、古代、徳川といった古参のキャラもいますが、大部分は新人の乗組員で占められています。キャラの紹介と印象的な台詞を取り上げます。なお、「ナンバー(階級相当)」は各カテゴリーにおける作品での重要度を現しています。「階級相当」は筆者の推測した作中でのそのキャラのステータスを現します。

ナンバー1(ヤマト艦長): 古代 進



(紹介)
 言わずと知れた前作の主役キャラ、しかし地球に馴染めず、17年後の世界では宇宙貨物船の船長に身を落としている。前作のヒロイン雪との間に娘美雪がいるが、妻とは別居状態で三年間宇宙を放浪していた。科学局長官(防衛軍長官と兼務らしい)に出世していた元部下の真田志郎の懇願でヤマトに乗り込む。復活編ではヤマト全作中初の海辺の高台にある瀟洒な「古代の持ち家(たぶん設計は森ユキ)」が登場し、貨物船でもオフの時にはブランデーを煽るなど、前作からは想像できないほどの大人びた古代が登場する。放浪中の間は髭を蓄えており、その容貌はほとんどヤマト前艦長の沖田そっくりである。しかし、沖田はインテリで宇宙物理学者だったが、古代は貨物船の船長というあたり、二人の間にある越えがたい壁を感じさせる。なお、新ヤマトの艦長席の直上には相も変わらず沖田のレリーフが飾られている。また、三年も放浪していたため地球情報に疎く、ブラックホールの接近と宇宙移民を知らなかった。ヤマト艦内での仇名は「おっさん」。あと、特筆すべき事項として地球人類でただ一人異次元人に名前を覚えられる。年齢38歳



 服装は貨物船時代はユニクロ風コート、艦長以降は沖田などが着用していた威厳のある艦長服ではなく、以前の赤矢印の戦闘班長服の上にアディダス製(と思われる)ジャケットを羽織っている。服装にはあまりこだわりが無いらしく、ユニクロ服とアディダス服のほか、バーゲン品の手提げバックとネズミ色のコートを所有し、後者は娘美雪に着用させている。愛用の携帯はガラケー。

(筆者コメント)
 作品中で真田長官を前に「逃げ回っていた」という台詞を呟く古代君ですが、いったい何から逃げ回っていたのか気になるところです。逃げていたといっても貨物船の名前は「ゆき(古代の妻の名)」ですし、「伝説のヤマト艦長」と昔の栄光もまだあるようですから、元々ヤマトでは真田長官の上官で貨物船に好きな名前を付けて宇宙を放浪できるあたり、実は地球にいると防衛軍長官になれとか地球艦隊司令をやれとか政治家になれとかいろいろ五月蠅かったのかもしれません(この作中古代より若い国会議員は山ほどいることもある)。そんなに虚無的でも荒れている様子もありませんので、真相は次回作待ちということですが、たぶん、そんなことだったんだろうと思います。なお、新ヤマトは乗員不足のまま発進したせいか持ち場に欠員が生じることが多く、古代艦長は艦隊司令と艦長業務のほか、ヤマトの操縦やコスモゼロの操縦、波動砲の発射まで担当させられ、艦長といっても実情は雑用係、いや、マルチな多才ぶりを見せつけています。機関部員まではやっていませんでしたが、次回作があれば額に汗して波動エンジンを操る古代艦長の勇姿が見られるかも知れません。また、新ヤマトの場合は医療班も欠員が生じがちなので、その辺でも彼の活躍の場があるかも知れません。


古代が艦長席に座りたがらない理由(宇宙戦艦ヤマトの防御上の欠陥) @艦橋に被弾→A艦長室崩壊→B瓦礫が直通エレベータの通路を伝って第一艦橋の艦長席に落下→C艦長負傷、殉職(絵は山南艦長)


このヤマト防御禍で殉職した艦長はシリーズで二名に及ぶ(歴代艦長の二人に一人が下敷きになり死亡)。左は山南、右は土方(さらば)

(名台詞:古代進)※筆者記憶のため細かい部分は相違あるかも
 「三年も地球から逃げ回っていた男です、あの頃とは違います。」 (真田さんに移民船団司令を打診されて)
 「おかえり。」(ショートスカートの娘美雪を出迎える場面)
 「(ヤマトの)操艦は俺がやろう。」(操縦手がコスモパルサーで勝手に飛び出したため)
 「うろたえるな!」(戦闘狂のヤマト戦闘隊長上条を殴り倒す場面)
 「離艦は許さんぞ!」(操縦手兼ブラックタイガー乗員の小林と上条を怒鳴りつける場面)
 「トランジッション波動砲の目標は、あの太陽だ。」 (天体を指差す艦長に古代以外が呆気にとられる場面)
 「結局、俺たちは負けたんだ。」(最後の移民船と共に地球を離れつつ)
 「どけっ! 上条! 俺がやる!」(波動砲のトリガーを引く場面)
 「お母さんはまだ死んでいない。この宇宙のどこかで生きている。」(娘美雪に説教する場面)
 「生き残るべきはヤマトではない、地球だ!」 (CMにも使われた名台詞)

サブキャラ: 古代 美雪



(紹介)
 古代と前作のヒロイン森雪の間に生まれた娘、色白とスタイルの良さは母親譲り。年齢は推定16歳だが、品行方正な二人の娘にしては異様なほど丈の短いショートスカートで登場する。古代や佐渡の台詞と、高校には通っておらず動物病院で働いていることから、たぶんグレており、母親ユキの指図で更生中と思われる(「命を粗末にするな」という古代の台詞、実は美雪ちゃんは命を粗末にするようなことは何もしていない)。彼女の家庭を崩壊させた宇宙戦艦ヤマトが嫌い。後に動物病院から避難中の輸送艇が墜落し、古代に助けられてヤマトに乗り込むが、父の知り合いである異次元星人との対面やブラックホールに突っ込んでの波動砲発射に立ち会わされるなど、娘の知らない父進の幅広い交友関係、行動に驚愕する。動物扱いに長けており、子ジャガーなど獰猛な肉食動物の子供を抱き上げても平気である。

(筆者コメント)
 墜落した輸送艇に乗っていた美雪以外のクルーがどうなったか非常に気になる。

(名台詞)
 「お父さんはヤマトに縛られている!」(帰宅した父進と対面して)
 「父にはヤマトがありますから。」(ヤマトがアマール星に着いたと佐渡先生に知らされて)
 「お母さんひとり助けられなかった。」(母ユキの遭難で父古代を難詰する場面)
 「ヤマトはもう沈んだの、あの海で眠ってるの!」(いつまでもヤマトに囚われている父進に)
 「行けば。」(防衛軍に呼び出された父古代を送り出す場面)

ナンバー2(ヤマト副長<扱>): 異次元星人

 → 

(紹介)
 ヤマトの敵SUSのメッツラー氏(画像)に憑依していたのか、あるいはメッツラー氏自身なのか判然としない、地球人類とは違う次元に住むという異種異魂の生命体(自称)、艦長古代の友人ヤマト艦橋にしか出現しないので、便宜上ヤマト乗組員としておく。新ヤマトの地縛霊という説もある。第一艦橋天井のビデオパネルを定宿とするが、床から現れることもある。紫色の男性体で、全身に刺青状の紋様が描かれている。目は赤色で、鼻の無い容貌と頑丈な顎と鋭い歯が特徴である。地球次元の生命物質を欲し、移動性ブラックホールを作って地球に突進させたのだが、一通り(地球消滅計画の)解説を終えた後に、古代に「人の作ったものだ」とブラックホールの仕掛けを看破されていることから、本当に異次元星人がどうかはやや怪しい。ストーリーの黒幕ということから、出現場所も勘案してナンバー2とした。「つかわされし者」と自己紹介していることから、たぶんメッツラー氏同様の異次元界の中間管理職と思われる。分類では副長クラスとしたが、本物のヤマト副長の大村(下画像)が影が薄いので、これは妥当なランクと思われる。



(筆者コメント)
 これの存在から、「ヤマトで倒せるのか」と、復活編を疑問視する声が多いことは知っていますが、筆者にはそれほど抵抗も無かったですね。

(名台詞)
 「我々はおまえたちとは違う、異種異魂の生命体。」(自己紹介)
 「この世界はおまえたちにくれてやる、支配するがいい。」(SUS要塞をヤマトに壊されて)
 「さらばだ、コダーイ。」(古代の名前を覚えていたシーン、古代は名乗っていない)

 第一艦橋の続きはまだありますが、とにかくこの作品、ガンダムなどと比べると話の割にキャラクターが異様に豪華で、脇役まで含めてかなり沢山いますので、追々紹介していきます。次は大村、上条、小林、折原など、ヤマト第一艦橋のメインを紹介します。


ヤマト乗組員(つづき)
 ネットの批評では「新キャラに魅力がない」、「絵がひどい」と散々な言われようのヤマト乗組員ですが、実のところはかなり個性的な集団で、新ヤマトの乗員は結構すごいメンバーがいます。では、前回の続きをご紹介しましょう。

ナンバー3(ヤマト副長): 大村 耕作



(紹介)
 戦艦ヤマトの真の支配者、艦長古代(ナンバー1)と異次元星人(ナンバー2)の下に位置するヤマトの副長。副長以前は落ちぶれた古代の宇宙貨物船「ゆき」で副船長をしていた。貨物船からソツなく大型戦艦の副長に抜擢されたあたり、「実は軍人だったのでは」と、ヤマトのファンサイトで囁かれているが、年齢の割に老けすぎの外見を持ち、「宇宙戦士(ヤマト世界の軍人の呼称)」という肩書がこれほど似合わない副長もいない。また、SUSにやられると「〜ねえんだ」と方言を話すあたり、実は東北出身という噂もある。平時はヤマト作戦会議の司会をしているが、その司会ぶりは可もなく不可もなくといった様子である。物語後半のSUS要塞との決戦でミサイル艇「信濃」を試運転と称して持ち出し、そのまま要塞に体当たりして戦死する。彼の死亡後もヤマトは古代と新乗組員によって何の滞りも無く運航され、ラストでも折原の方がクローズアップされ、同じく戦死した彼の存在がほとんど無視され、惜しまれる場面すら無かったあたり、ある意味ヤマト一気の毒なキャラである。享年45歳。


「信濃」に乗る大村 状況からウィキペディアや一部ファンサイトでは「また特攻か」と彼の行動は批判されているが、当サイトでは艇の被弾による操縦不能とそれによる殉職と判断している。つまり、彼は特攻志向者でも戦死者でもない。

(筆者のコメント)
 確かにこの人はSUS要塞戦で信濃を「試運転」と言って持ち出したんですよねえ。「当然帰ってくる」と彼以外の誰もが思っていたはずですが、ちょっと飛んでくるだけのはずがSUSの攻撃でぬぼぼぼと炎を噴いたまま要塞に突っ込んでいく場面が大パネルに映ったときの乗員の反応はといえば、「ちょっとやばいぜ」「まずいんじゃないかこれは」といった雰囲気で、どう見ても特攻という感じじゃないんですよね。これは本当に船が故障して操縦不能になったか、SUS爆弾の直撃を受けて血まみれになった副長が遺言じみた内容を延々と話す場面がありますが、結構しんみりとする場面なんですが、諸般の状況を勘案すると、これはやっぱりできれば脱出したかったのではと。とにかく、画面に映っている限りでは信濃は敵のビーム弾を避けている様子は無いです。やはり故障して墜落した先がたまたま要塞だったのでしょうか。一応、敵の弱点を見つけたような台詞はありますが、その弱点が結局何だったのか彼以外の誰にも分からずについには映画自体が終了してしまいます。とにかく彼の死によって、ヤマトはSUS要塞に勝つことはできました。

(名台詞)※例によって記憶頼みなので多少の誤差はご容赦を
 「俺は副艦長の大村耕作だ。」(直後に副艦長だか九官鳥だかとやじられる)
 「地球をナメるなよ! 宇宙戦艦ヤマトをナメるなよ! 思い知らせてやる!」
  (直後にSUS要塞に体当たりして爆死)

ナンバー3(戦闘隊長・副長扱): 上条 了



(紹介)
 ヤマト以前は戦艦ブルーノアの戦闘隊長、第一次避難船団でSUS軍との初の交戦を経験し、その後ヤマトに配属される。弱冠21歳にして階級は一等空佐(自衛隊でいう大佐相当)と以前の古代を彷彿とさせる地球防衛軍のエリート士官。また、容貌は見ての通りのイケメンで長身、この点でも女性の目を引く存在である。しかし、誉められるのはここまでで、口を開けば、「ぶっ殺してやる」「ぶっ潰してやる」「てめえ」といった過激な発言を連発して周囲を凍らせる。時折暴走が行き過ぎて古代に殴られることもある。実は気の小さい人物でもあり、肝心なときに固まって波動砲のトリガーが引けなくなったり、桜井ですらビビらなかった異次元人の出現にビビる。公式ガイドでは人望は厚いと書いてあるが、女性隊員の折原は明らかに引いており、他の隊員からは孤立しているなど、作品の描写はどう見てもその逆である。女っ気ゼロ、孤高で偏屈な戦闘狂のヤマト戦闘班長。

(筆者のコメント)
 以前のヤマトには副長は二人いたので(真田と航海長の島)、古代と異次元人は別格として、彼の場合はそのキャラ立ちから、やはり大村と並ぶ副長格の扱いが適当でしょう。復活編はこの上条と古代と美雪さえいればあとはどうでも良いのではと思えるほど存在感の強いキャラで、しかも言動がアレですから、彼と美雪のシーンでは筆者も笑いをこらえるのが大変でした。穏当に行けば以前の古代が森雪と結婚したのですから、彼の場合は折原かと思いますが、そんな気配は微塵もありませんでしたね。

(名台詞)
 「畜生、ふざけやがって!」(戦艦ブルーノアで主砲を乱射する場面)
 「野郎! ただじゃおかねえ」(SUSにブチのめされ、救助に来た古代を射殺しようとする場面)
 「貴様!」(操縦手小林にバカにされ、逆上する場面)
 「見てろ、てめえら! ぶっ潰してやる!」(ブラックホール戦にて)
 「おまえらまとめてぶっ殺してやる!」(艦橋に被弾し逆上)
 「全艦戦闘配備だ!」(古代の不在時に副長を脅して戦争を始めようとする場面)
 「やりましょう! 反対する奴なんか誰もいませんよ!」
  (古代の特攻計画にいち早く賛意を示し、反対意見を封殺してブラックホールに突入)

ナンバー4(ヤマト操縦手): 小林 淳



(紹介)
 新ヤマトの人材不足を象徴するヤマト操縦手、元は戦闘機パイロットでヤマト再建計画に参加していた生粋のヤマトオタク、登場人物中彼だけがヤマトを「俺の」「俺たちの」と所有格で呼ぶ。作画と人格の安定しないキャラで、今風若者的な言動の多い前半の小林と後半の小林はほとんど別人であるが、後半のコスモパルサー隊隊長の方が本来の姿であると思われる。体型がモロに出る新ヤマト隊員服を忌み嫌っており、密かに旧ブラックタイガー隊の隊員服を持参して乗艦し(DC版では古代より譲渡)、後半はほとんどその服でヤマトの操縦桿を握っている。新ヤマト乗員の中で旧隊員服を着ているのは彼の他は艦長の古代だけである。戦闘を取れば人格も残らない戦闘班長の上条に比べればややバランスの取れた人格であると思われ、年上の医療班長佐々木美晴といい仲であるが分析員の折原真穂にも色目を使っており、折原もそれを悪からず思っている。艦長の古代と副長の大村を除けば、凶暴な戦闘班長上条にタメ口を叩ける唯一のヤマト普通隊員。上述のように上条の人格に問題があるので、新ヤマトの女性陣は彼の草刈り場、ヤマトは彼の天国である。

(筆者コメント)
 ナンバー4は折原か小林かと思ったのですが、折原は次回のトップにしたいので小林の方を先に出すことにしました。操縦桿や医療器具を放り出して戦闘機に乗り込む彼と佐々木女医には「ヤマトの部署はどうなっているんだ!」という批判がファンサイドからはありますが、新ヤマトは全般的に部署は融通が利くようですね。一応、何でもできる乗員が配属されているようで、彼も本職はパイロットでヤマトの操縦は副業のようです。作品ではあまり描写されませんでしたが、言動から察するに、彼は実は相当重傷のヤマトフェチヤマトヲタクのようです。コスプレも持っていましたから、自宅にはヤマトの模型とか森雪のフィギュアとかが置いてありそうです。たぶん旧航海班服(緑矢印)も持っていますが、古代に遠慮して着なかったようです。あと、仇名付けの名人で、「おっさん」、「九官鳥」、「口を開けば〜」など、彼に命名されたクルーはかなりの数に上ります。

(名台詞)
 「ヤマトに触るな! おっさん!」(初登場)
 「副艦長だか九官鳥だかしらねえが!」(大村に食ってかかる場面)
 「俺たちが直したヤマト。」(上条にイヤミ)
 「あんた! それでも人の親か!」(遭難した娘を救助しない艦長古代に)
 「俺たちの知らないヤマトがまだ、、」(ラスト)


ヤマト乗組員(つづき2)
 これだけ紹介してもまだ第一艦橋クルーというのがヤマトのすごいところです。艦橋編はこれで終わりですが、残りは地球防衛軍の面子にやはり敵、SUSやアマールの皆さんがいます。

ナンバー5(分析員): 折原 真帆



(紹介)
 以前の森雪のポジションを担当するヤマトの分析班チーフ。ユキと同じ白地に黒線の旧隊員服を着用するが、白服の折原のチーフという役柄からユキが完結編直前に昇進していたことが明らかになる。部下にやはり黄地に黒線の旧隊員服(森雪が完結編以前に着ていたもの)を着用した女性5人がいる。実は艦長古代を凌ぐヤマト一高価な椅子に座る女性で、戦闘時には椅子ごと部署の第一艦橋からおよそ3秒で第三艦橋にあるECIルーム(階下約90m)に移動する。その際の移動速度は時速100キロを優に超え、トップスピードは150キロ程度に達していると思われるが、地下への長いトンネルで何が起こっているかは彼女以外誰も知らない。いずれにせよ、90メートル上の第一艦橋から第三艦橋に降りた直後の折原は長髪も乱れず、冷や汗一つ掻かず、淡々と任務を遂行している。以前のユキと比べても破綻のないクールな勤務ぶりで、他の隊員のような感情を露わにする台詞は無く、最後は古代の特攻計画の最中にブラックタイガーから乗り替えた小林操縦手の自損で第三艦橋が大破して酸素が流出したため、他の女性隊員五人と共に酸欠で死亡する。ポジション的に以前のヒロインの地位だっただけに、また、古代以上に凶暴な戦闘班長上条や操縦手小林との恋愛模様が期待されていただけに、薄幸で早すぎる死が惜しまれるキャラである。

(筆者コメント)
 実は以前のヤマトは森ユキの相手は古代と島の二人だけが争っていて、残りのメンバーはこの二人の押しの強さから戦線参加前に離脱と行った感じだったのですが、彼女の場合はモテます。何せ一番候補の戦闘班長上条がいろいろな意味で問題ありすぎですから、この上条と以前の島のポジションである操縦手小林は定番として、元古代の部下の航海手桜井君、通信班の中西君、果ては地味な技師長の木下郷田まで射程距離に入ってきそうな勢いです。雰囲気としては凶暴な上条よりも控えめな桜井君に好感を持っていたような感じで、互いに庇い会う場面などあったようですが、いずれにしても死んでしまいましたので今となっては分かりません。ファンサイトでは彼女の復活を要望する声が高いようですが、あの様子で生きているとは思えませんし、彼女を復活させたら一緒に死んだ他のオペレータ五人も復活させないと辻褄が合いませんから、この作品では彼女はやっぱり事故死でしょう。

(名台詞)
 「何とかなるかも知れません。」(上条と小林にイジめられていた桜井君に助け船を出す場面)
 「速度99宇宙ノットを維持。」(輸送船団を誘導して)
 「ヤマトの船体が持つかどうか、、」(古代の特攻計画に異議、この直後に死亡)

ナンバー5(医者): 佐々木 美晴



(紹介)
 何かと物議を醸す26歳のヤマトの問題女医、ファンの間でも意見が割れており、戦闘時にコスモパルサーで勝手に出撃してしまう彼女の行動に、「負傷者が出たらどうするんだ!」という非難は結構ありましたが、新ヤマトは非常に頑丈で彼女が出撃しているときにはほとんど壊れませんから、これが損傷するような激しい攻撃の際には彼女はちゃんと白衣を着て艦内にいます。そういうわけで、実は女医として働いていると思いますが、それでも相当無理のある設定であることは否めません。「女医がパイロット」ではなく、実は「医者の資格も持っているパイロット」というのが正解では無いでしょうか。たぶん第二部以降は医者に専念するか、別の軍医が配属されることになると思いますが、この佐々木医師といい、やはりブラックタイガー乗りの操縦手小林といい、新ヤマトがあり合わせの人員を寄せ集めて発進したことが分かるキャラです。

(筆者コメント)
 やっぱ彼女が出撃している間に負傷者が出たらまずいとは筆者も思いますね。それに彼女の場合は出撃しても操縦はそれほど上手くなく、ベルデル戦闘機にいつも追い回されて小林に助けられるというパターンですから、戦力としてもちょっとと思います。ヤマトには他に一機で敵艦を沈める重爆乗りとか彼女以上に腕の立つパイロットはいますので、これは素直に飛行機を降りて医者に専念した方が良いと思います。ですが、新ヤマトは以前よりもずっと頑丈で、敵艦百隻程度の集中攻撃では壊れませんから、医者に専念といっても、彼女はたぶんヒマでしょうねえ、、年齢と存在感の強さからヒロインの折原と同格のナンバー5としました。

(名台詞)
 「あんたが応急措置しときな。」(出撃時の台詞)
 「私、本職はパイロットなんです。」(古代に事情を説明)


ナンバー6(航海士その他): 桜井、中西、木下、郷田、徳川、天間

     

(紹介・筆者コメント)
 どのキャラも個性的なんですが、この調子で全部はとても紹介しきれません。桜井君は商船学校卒と上条や小林にバカにされつつも、何げに折原といい仲でしたね。ぶっ殺して戦闘狂ヤマトフェチのこの二人よりは彼の方がずっとまともでしょう。中西君は腹減った以外に何かあったのかと、砲術長の郷田は以前の南部同様いないと困るのですが、いても影の薄いキャラです。旧キャラの徳川太助は機関長に昇格していますが、この徳川と艦長古代、年配の副長ないし工場長の三人で長老格というのは以前のヤマトでもシリーズを通じて維持されていた安定感のある構図です。以前の真田さんの地位には木下がいますが、完全に折原にキャラを食われています。意外と良かったのが機関部員の天間兄弟で、最初はいかにも軽いキャラだったのですが、作品後半では結構いい味を出していました。

(名台詞)
 「だが、できないことはない!」 (桜井・ブラックホール突破を進言、直後上条と小林にバカにされる)
 「あの星を地球とは、やっぱ呼べないよね。」 (桜井・アマール星を眺めて折原と良い感じの場面、5メートル横で孤立する上条)
 「通信パネルが反応しています!」(中西・異次元星人とのファーストコンタクト)
 「波動砲では弾道が曲げられるかも知れません。」 (木下・古代の特攻計画に参画して)
 「軍人としての規律がちょっと、、」 (徳川・ヤマト再建中に古代と会話)
 「スパナの使い方もしらんのか!」 (徳川・天間兄弟を叱りとばす)
 「エネルギー充填120%! 全弾、発射態勢!」 (天間兄弟・古代の特攻計画にて)

 ヤマト乗員はこれで終わりですが、後は防衛軍のメンバーに若干触れた後、いよいよ敵の宇宙人連合軍に入ります。



4−2.地球防衛軍および関係者
 ヤマト乗員以外にも地球関係者はいますが、これはヤマトのようなタテ社会では無いのでランキングは付けずに紹介します。また、キャラ多数のため筆者コメントも省略します。

真田 志郎(宇宙科学局長官)



(紹介)
 かつてのヤマトの技師長兼副長、復活編では防衛艦隊も統括する宇宙科学局長官。数多くの発明を行い、幾度となくヤマトと地球を窮地から救っている。三年前に移動性ブラックホールの存在を察知した彼は前作で戦死した島大介の弟次郎と共に一万隻の移民船を建造して人類をアマール星に移住させるプロジェクトを推進している。前作のヤマトとその乗組員は幾度となく地球を窮地から救っているため、彼の前任者、故藤堂平九郎長官の時代から防衛軍には「ヤマト利権」というべき独自の人脈とコネクションが形成されている。前作では過去の事故で両手両足を失ったことから義手義足を装着し、常に手袋を被っていたが、今作では手袋は着用していない。これは完結編以降の時間の流れから、iPS細胞による手足再生手術が成功したものと思われる。したがって、前作では真田名物だった義手義足に仕込んだ手足爆弾のパフォーマンスは今回は見られないものになっている。古代を防衛艦隊司令に起用し、最後の移民船団をアマール星に送り出した。


前作でのヤマト最大の守護者、故・藤堂平九郎長官

(名台詞)
 「宇宙戦艦ヤマトがお前の帰りを待っているんだよ。」(古代にヤマト復活を告げる場面)
 「私はね、科学者として私たちのこの地球がどうなるのか見届けたいと思っているんだよ。」
 (島らを送り出し、地球に居残る場面)
 「頼むぞ、ヤマト。任せたぞ、古代。」(ヤマト発進を見て)

 あと、画面には登場しないものの、真田同様、旧作つながりで以下の人物は復活編の舞台裏で活躍していたものと思われる。

相原 義一(元ヤマト通信班長)



(紹介)
 復活編では登場しないが移民船には乗っていたはずの元ヤマト隊員。前長官藤堂の孫娘と結婚し、復活編での佐渡先生の描写から推測すると、防衛軍や連邦政府で結構幅を利かせているものと思われる。軍人としては登場しないことから、おそらく政治家に立候補したものと思われる。


藤堂晶子(現在は相原) 公式には相原が南十字島に出張した折、島の空港で知り合い恋仲になった女性ということであるが、どことなく嘘くさく、東北出身の相原が縁もゆかりもない熱帯の小島に出張させられていたこと(辞令は長官)、晶子がその時の押し花を手帳に挟んでいかにも後生大事に取っていたこと、祖父に同行してのヤマト訪問など、実は「ヤマト閥」の元締、祖父の平九郎が仕組んだ計画結婚の気配が濃厚である。現在は夫義一の妻として、地球の政財界で賢夫人として夫をサポートしていると思われる。なお、義一にとっては30年ぶりの復活編であるが、現在の義一は同僚の南部康夫と同じくメタボ体型のため、南部同様、視聴者のイメージを壊すことを恐れて画面には登場しなかった。

南部 康夫(元ヤマト砲術長)



(紹介)
 やはり移民船に乗っていたはずの元ヤマト隊員。初代ヤマトを建造した南部重工業の御曹司で、復活編の時代には父親の跡を継いで大財閥の総帥の地位に収まっていると思われる。移民船一万隻の建造はエンジニアの真田だけの力では不可能なはずで、巨大な政治力を持ち、造船能力を持つ彼の工場が活躍したはずである。しかし、やはりヤマト隊員の頃と違って実業家が板についたのか、同時に地球艦隊まで十倍に拡大するよう真田に強請している。そのため、以前の規模ならばそれほど脅威にもならなかったものの、総数一千隻に近い全艦波動砲装備の大艦隊は宇宙人連合、特に盟主のSUSに恐れられるようになり、結果、船団は連合に襲われることになった。ある意味、ヤマト復活編の影の張本人。

揚羽 武(元ヤマト戦闘機パイロット)



(紹介)
 揚羽本人はヤマトVでボラー連邦との戦いで戦死するが、これも地球屈指の大財閥の出身で父親(蝶一郎)は連邦政府に働きかけてヤマトの任務を左右するほどの権力を持つ。やはり一万隻の大船団の建造には息子の遺志を継いだ揚羽氏本人の意向が強く働いたものと思われる。移住先のアマール星が星間国家連合の一員であったことが船団の進発まで地球側に知られていなかったことは復活編最大のナゾであるが、それは莫大な財力を持つ揚羽氏が以前から交流のあったアマール商人を通じた賄賂で大臣を買収し、二重惑星であるアマール星の一星を割譲する計画を推し進め、都合の悪い事実は全て隠蔽したためである。アマールのイリア女王はSUSとの関係からこの移民計画に難色を示していたが、揚羽一族に買収されたアマール議会の決定を覆すことはできなかった。また、星間国家連合と地球艦隊の交戦が始まった後は、息子の形見であるヤマトの活躍を記録したビデオ映像を大量にアマール星に持ち込み、「伝説の宇宙戦艦ヤマト」の名を喧伝して住民をヤマトと地球の味方にすることに成功している。ある意味、南部と並ぶ移住計画成功の最大の立役者。あと、二万光年先でしがない宇宙貨物船船長をしていた古代がいきなり帰還してヤマト艦長に就任したのも、実は星間航路を所有するこの揚羽氏の差し金があったためといわれている。

島 次郎(移民計画責任者)



(紹介)
 弱冠二八歳で移民計画の総責任者に起用された島は一七年前の戦いで戦死したヤマト操縦手・島大介の弟である。科学局長官真田の文字通り片腕であるが、全人類を移住させるという重要ポストの責任者にしては若すぎる年齢のため、おそらく地球市民には人気のあるヤマトつながりの客寄せパンダとして起用されたものと思われる。失言のフォローは抜群なものの、失言それ自体は避けられない真田と異なり、防衛軍キャリアで既に惑星落ちした冥王星の直径をも暗記している明晰な頭脳、戦死したヤマト乗員の弟という悲劇性、そして周辺に折原真帆など美人オペレータ揃いの防衛軍の中にあって浮き名を流さない身の堅さが起用のおそらく理由だが、肝心なところでテレサと失踪したり上甲板に出て撃たれたりといった粗忽な兄と異なり、これは最後まで大過なく緻密さと冷静さが必要な任務をやりおおせている。なお、ヤマト完結編では少年時代の次郎が登場し、ヤマト2にも登場している。

(名台詞)
 「直径2454キロメートルの冥王星がっ!」(何げに記憶力の良さを披露)

佐渡 酒造(フィールドパーク園長)



(紹介)
 元ヤマトの艦医だが、現在は退職して郊外のフィールドパーク(野外動物園)の園長を務めている。なお、動物園の名前は「佐渡フィールドパーク」。宇宙戦艦ヤマトの勤務は度重なる宇宙侵略と宇宙の深淵まで進出しての危険な任務のため、生存した佐渡元医師はイスカンダルまでの旅も含めたワープ手当、毎週毎週引き起こされた彗星帝国ほかの宇宙艦隊との交戦による危険手当、そして元艦医としての退職金、年金などがあり、莫大な資産を手にしている。またヤマト唯一の医療従事者だったため、隊員の健康保険料、社会保険料の手続もほとんど彼一人の手で行われ、その手数料収入も莫大であった。復活編の時点では佐渡以外の同様の経歴を持つヤマトの主要人物はほとんどが死亡しており、また、生存者も最年長の真田が四八歳と引退には程遠いことから、佐渡先生は生存中に退職金を手にした唯一のヤマト乗組員である。そういう理由から、彼の「佐渡フィールドパーク」は画面に映っただけで数十人の獣医、飼育係を雇用しており、実はいっぱしの事業家である。事業の傍ら、不良化した古代の娘美雪を引き取って動物セラピー療法を施している。

(名台詞)
 「若い子は難しいのう、、」(美雪に父古代のアマール着を告げる場面)
 「ええい! 面倒じゃ!」(真田同様地球に居残る場面)
 「最初にあった時、お前確か十八じゃったのう。」(過去のヤマトと古代を回想する場面)

アナライザー(ヤマト分析ロボ)



(紹介)
 前作では全ての旅路に同行したヤマトの分析ロボット。ロボットでありながら人格を持っており、初恋の相手は森ユキ。現役を引退した復活編の時代では佐渡と共にフィールドパークで暮らしている。しかし、ヤマトの艦載機器より高性能であった彼に代わる高性能なロボットが地球艦隊で使われている様子もない。美雪のアニマルセラピー助手兼佐渡の晩酌相手。

 地球関係者はこのくらいにしておきますが、次はいよいよ侵略者ですが、ずっとキャラ紹介ばかりやっているのも単調ですし、飽きますので、次は少し趣向を変えようと思います。



4−3.SUSと愉快な同盟国たち
 この辺は一つ一つやっていると辞書になってしまいますので、まとめて紹介します。

大ウルップ星間国家連合
 名前は大げさですが、「SUSとその属国たち」と言った方が通りの良い反地球の宇宙人同盟です。これまでの宇宙人達と異なるところは、この連合軍はかつてのように地球を侵略に来るのではなく、「地球人に侵略されることを恐れて」、地球人類攻撃の挙に出るところでしょうか。中心となっているのはSUS国ですが、様子を見ているとどうも中身は怪しげです。


構成国1 SUS国
 星間都市連合の盟主、が、その実態は異次元から来た異次元星人に操られている強権国家。これが元々異次元人の国なのか、普通の宇宙人国家が異次元人に乗っ取られたのかは作品からは判然としない。メッツラーとバルスマンの二人が名前付きで登場する。肌は紫色、蒼い目に尖った耳が特徴であるが、異次元化すると目が赤くなる。

メッツラー: SUS国総督

 → 

 総督という肩書きですからこれは文官でSUS本国から派遣されてきた中間管理職だと思いますが、司令官とも呼ばれているので軍人かも知れません。SUS艦が他の同盟国の戦艦と比べると数は多くても弱いため、戦いは専ら同盟国にやらせて自らは後方で観戦するのを得意とします。その不真面目な態度に怒り狂ったエトス軍のゴルイ提督に旗艦を沈められ遁走。バルスマンの要塞に立て籠もるがヤマトに要塞も破壊される。異次元人が憑依しており、要塞崩壊時に意外な正体を見せる。

(名台詞)
 「地球艦隊殲滅を決議する。」(作戦会議)
 「星間国家連合の決定はSUSの決定だ。」(アマール国を攻撃中)

バルスマン: SUS国司令官



 雰囲気ではメッツラーより偉そうなSUS軍の司令官。見た目はメッツラー以上に厳ついが、意外と穏健な性格で命令に背いたゴルイを処断せずにチャンスを与えるなどメッツラーより器の大きい人物。地球人を猿と呼んでSUS要塞からハイパーニュートロン砲を地球艦隊に浴びせかけるが、ヤマトの反撃で要塞は破壊され行方不明となる。

(名台詞)
 「猿どもの最期はいつ見られるのだ!」(対ヤマト戦)

SUS戦艦


 楔形のSUSの主力戦艦、ビヨヨーンと独特の効果音と共に集団攻撃で敵に襲いかかる。しかし1隻では弱く、他の同盟国の艦がヤマトの主砲一発で撃破されるのに対し、この艦は一発で三隻以上が撃破される。ヤマト以外でも反乱を起こしたゴルイのエトス艦隊と戦った際には旗艦を守りきれずゴルイ艦に跳ね飛ばされた上に旗艦も沈められるという、本当に星間国家の盟主国の戦艦なのかと思えるほど低性能の戦艦である。が、数だけはやたらと多く、連合軍の過半、地球艦隊の三倍ほどの数が存在する。

SUS航空機
 密かにSUSを裏切ったアマール星を爆撃したSUSの戦闘爆撃機、同じく同盟国のベルデル戦闘機と比べると運動性の悪さが際だっており、ヤマトミサイルをまず避けることができない。SUS戦車と共にアマール星を攻撃したが、着水したまま移動すらしていないヤマトに全機撃ち落とされる。ヤマト艦載機コスモパルサーとは比較しうべくもない低機能の航空機。

SUS戦車
 スターウォーズのサンドキャリアに似たSUSの戦車。かなりの大型車両でのそのそと走行するが、バズーカ砲など軽火器しか持たないアマール陸軍には無敵であった。が、反撃に出たヤマトのコスモパルサー隊にあえなく撃破される。

SUS要塞


 CMでもPRされた「全長3キロの超巨大要塞」、しかし、地球連邦の移民船は2.8キロとほぼ同じ大きさであり、実はそんなに大きくない。波動砲クラスの五門のハイパーニュートロン砲を装備しており、連続射撃できるのが取り柄といえば取り柄である。ヤマトの六連波動砲によって崩壊。この程度の軍事力しかないSUSが同盟国に次々と裏切られたのはある意味必然であった。

SUS潜宙艦
 SUS要塞に格納されているヤマトよりでかい次元潜宙艦。陽気なマーチと共に攻撃し、ミサイルやビームでヤマトを攻撃する。二隻の盾船を備えており、ロケットで投射してヤマトを挟み撃ちにするなど遠回しな戦法を取るが盾船はヤマトの側面ミサイルに破壊され、本体もエネルギー源の人工太陽の破壊と同時に消滅する。

SUS人工太陽
 SUS要塞の背後にある超小型の人工太陽、SUS要塞や潜宙艦にエネルギーを供給している。要塞の攻撃力が増すと輝きが増すなど不審な挙動で古代に人工物と見破られる。ヤマトの波動砲攻撃で破壊。崩壊と共にブラックホール化し、要塞の残骸などSUS軍の後始末を全部律儀に行って消滅するという、ある意味ヤマト史上最も行儀の良い敵メカ。

(筆者コメント)
 星間国家連合は又の名を裏切り連合と言いたくなるくらい身内同士の裏切りが多い連合なのですが、それは盟主のSUSのこの弱さもあるでしょう。敵宇宙人のくせに単独で地球軍と張り合える国がSUSも含めて一国もないというのがこの連合の変なところです。


構成国2 アマール国
 SUSを裏切って地球移民を受け容れた国家連合の一国、ある意味復活編最大のナゾの行動であるが、おそらくこれは盟主のSUSがいろいろ言う割に実力が大したことないので、強力なヤマトと地球艦隊を見た女王イリアが両者を両天秤に掛けた結果かも知れません。最終的には地球側に味方し、ヤマトと共にSUS要塞戦で共闘します。連合国の中でも特に中世風のエキゾチズムに溢れた文化を持ち(スターウォーズのナブー国に酷似)、褐色の肌と黒色又はアイスブルーの瞳のほとんど地球人(特にアラブ系)と似た容貌の宇宙人です。帆船に類似したフォルムで諸所に金銀の装飾を施したアマール艦は復活編一優美な戦艦。

イリア: アマール国女王



 心の底からSUS嫌いのアマール星の女王、地球移民を喜んで受け容れる。古代を国賓として迎え、伴星の一つを丸ごと地球人に提供するなど気前の良さがSUSの逆鱗に触れ、武力制裁を受ける羽目になる。口癖は「憎むべきはSUS」だが、同時期に彼女の忠臣パスカル将軍は要塞に出張し、そのSUS主宰の作戦会議に出席していた。エトス星のゴルイ将軍が裏切ったことを幸いにヤマトとの同盟を宣言「最後の一人まで戦う」と過激な督戦思想をノリが良く血の気の多い国民に吹き込んだ。碧玉の瞳を持ち、気品ある物腰、容貌を持つが、SUS勢力のうちにあって、その反SUSの過激思想はヤマト戦闘班長上条に匹敵するものである。

 (名台詞)
 「憎むべきはSUS。」(古代と対談)
 「星間国家連合、いやSUSと戦いを。」(ヤマト有利を見てSUSに宣戦布告)
 「パスカル、この声をどう思いますか。」(民衆の支持を背景にパスカル将軍にヤマト同盟を強要)
 「ありがとう、宇宙戦艦ヤマト。」(ヤマトに解放された後)

パスカル: アマール国将軍



 過激な女王イリアとSUSの板挟みに遭っている不幸なアマールの将軍。現実主義者で女王思想に従っていては地球共々アマール国は滅亡してしまうので、その緩和とメッツラー、バルスマンとの調停に心身を磨り減らしていたが、ヤマトの出現で全ての努力が水泡に帰すことになる。最後はイリアの命令で(たぶん本人の思想信条とは裏腹に)やけくそのようにSUS要塞に突撃し、ハイパーニュートロン砲の露と消えた。アマール唯一の穏健派。

 (名台詞)
 「頼む、帰ってくれ古代艦長。」(アマール星に来た古代に懇願)
 「この星ごと消されてしまうのだ。」(SUSの武力制裁を警告)
 「ええい! ヤマトを守れ! 全速前進!」(直後ニュートロンビームで死亡)

アマール国民
 色黒で中東系の容貌を持つアマール国住民。SUSの攻撃を受けて多数の死傷者を出し、女王イリアにヤマトとの同盟を嘆願する。何千隻もある地球船団の唯一隻であるヤマトの名を知っているあたり、やはり地球による事前の水面下の謀略揚羽氏の宣伝活動が功を奏した結果のようである。

(名台詞)
 「アマールは独立を!」(SUSに爆撃されイリア宮殿に逃げ込む場面)
 「ヤマトと共に戦おう!」
(プラガードを持って女王にヤマト同盟を連呼)
 「おお! ヤマトが、ヤマトが帰って行くぞ!」
(ヤマトに救われ歓呼する場面)
 「オオーッ! ヤマトォォーッ!」(同上)


構成国3: エトス国
 おそらくSUS国に次ぐ連合二位の軍事大国。独特のエトス星武士道を奉じ、しばしばその教義が星間国家連合の決議に優先することもある。司令官バルスマンの寛大さで度重なる命令違反は見逃されているものの、ヤマトの闘志に感じ入り、同盟国の熾烈な砲火に割って入って砲撃を止めさせるなど他の同盟国にとっては「またか」「言っても分からないからな」と半ば諦めの目で見られている軍事国家である。戦艦は強く、エトス戦艦はベルデル戦艦、フリーデ戦艦を凌ぐ戦闘力と頑丈さで地球軍のスーパーアンドロメダ(と呼ばれているカッコ悪い船)と互角以上に渡り合っている。

ゴルイ: エトス星提督



 エトス軍の髭面のエイハブ船長顔の強面司令官。独特のエトス星武士道の権化のような性格で、その教義に則った美学を追究する行動はしばしば彼の上官、SUS司令官のバルスマンを困惑させる。最初は他の同盟軍と共に地球艦隊攻撃に参加するが、ヤマトのために変節する。寛大なバルスマンと違い、その行動を理解できなかったメッツラー司令官によって討伐の憂き目を見るが、逆にメッツラー艦を沈めてメッツラーを逃亡に追い込み、SUS艦隊をほぼ半壊させて撤退させる。その戦闘でゴルイの艦も沈むが、その際にメッツラーと共に脱出しているシャトルの絵はエトス艦の様式なので、たぶん生きていると思われる。独特の美学に生きる彼の崇拝者は多く、旗艦艦長のほか、同盟国であるベルデル星、フリーデ星にも一目置かれているようである。連合の多くと同じく、やはりSUSを軽蔑しており、「成り上がり者」「豚」と連合の盟主SUSを蔑視する発言を繰り返している。なお、ゴルイの声はデスラー、艦長は子安武人とエトス軍は声優陣は異様に豪華である。

 (名台詞)
 「それが成り上がりのSUSに脅されて。」(艦長にSUSの悪口)
 「エトス星武士道の伝統に従ったまでだ。」(不満を言うバルスマンに)
 「見事な戦いぶりに敬服いたす。」(古代と対面)
 「豚と交わって豚に成り下がった己に気づいたのよ」(SUSを豚と罵倒)

戦艦シーガル艦長


 ゴルイの旗艦、戦艦シーガルの若い艦長。ゴルイに心酔しており、彼のエトス星武士道に敬意を払っているがSUSには敬意を払っていない。度重なる上官(ゴルイ)の命令違反に喜々として従っているように見え、ゴルイ対メッツラーのアマール上空戦では旗艦シーガルを自艦に数倍するメッツラーの旗艦マヤに衝突させて沈める荒技を見せた。ゴルイ同様脱出し、生存しているものと思われる。

(名台詞)
 「人間、生まれ方は選べませんが、死に方は選べます。」(ゴルイのSUS攻撃計画に賛意)

(筆者コメント)
 アマールといい、良くこんなのが同盟をやっているなあ。


構成国4: ベルデル国


 スズメバチの巣のようなベルデル戦艦を中心とする連合の一国。緑色の肌のSUSと同じ異星人系の外見を持つ種族。SUS、同盟全軍を通じて唯一の地球軍に対抗できる艦載戦闘機「ベルデルファイター」を装備しており、航空戦力のない連合軍には頼れる存在である。が、戦闘意欲は明らかに低く、ゴルイに止められて停戦し、SUS要塞戦では要塞砲に撃たれて撤退するなど全般的にいやいや戦っている観が拭えない。いくらビームを撃ち込んでもヤマトにかすり傷一つ与えられないなど、戦艦の性能はエトス艦、地球艦に比べると劣っていると思われる。

ベルデル星将軍


 名前は無いが実は策士のベルデル艦隊司令官。復活編に参加した連合軍の将軍では唯一人彼だけが旗艦も沈められず戦死(ゴルイは生死不明)もせずに生き残った。唯一の航空戦力であるベルデルファイターの扱いに長けており、自軍より強いヤマトやスーパーアンドロメダはゴルイお人好しのフリーデ星将軍に任せ、ヤマトにズダボロにやられているフリーデ軍がヤマトの注意をベルデル軍に逸らそうとすると、すかさずベルデルファイターを送り、自国への影響は最小限に保ったまま、疲弊したフリーデ軍にヤマトとの戦いをさらに続けさせるなど、数ある復活編の将軍の中ではトップクラスの指揮能力を見せつけている。また、「裏切り連合」の面目躍如として、SUS要塞戦におけるフリーデ軍を誘った機を見るに敏な(SUSを見捨てた)撤退の判断など、宇宙人にしておくには惜しいほどの見事な采配ぶりである。名前はないが実はその能力はゴルイ以上と思われ、無論古代よりも優れていると思われる。メッツラーは言うまでも無い。

 (名台詞)
 「本格的な侵略が始まるな。」(ダチのフリーデ将軍を対ヤマト戦に引きずり込む場面)

ベルデルファイター


 連合軍唯一のまっとうな航空戦力でベルデル艦より発進する。機銃一門の潔い武装で二名のパイロットが操縦する。収納がコンパクトなため、一隻のベルデル艦に多数を収納でき、その点では地球軍のコスモパルサーに勝ると思われる。しかし、誘導ミサイル装備を欠き、特に被弾に強くもなく、視界も側面だけと悪く、機銃の威力も低いため、2〜3発でベルデル機を撃墜でき、視界が良く、パイロットを保護する重力制御装置を持ち、さらに空対空ミサイルまで装備しているコスモパルサー相手では乗員虐殺用の機体以外の何ものでもなかった。


構成国5: フリーデ国


 赤色の菱形を組み合わせた鋭角的な外見を持つフリーデ戦艦を中心とする連合国の一員。実はエトス国と並んでほとんど地球人の外見を持ち、地球の宇宙侵略を恐れている。ベルデル同様あまりやる気のない同盟国。戦艦の性能はSUSよりは上という程度だが、航空戦力はベルデル軍に依存している。エトス、ベルデルの二国と共にブラックホール近辺で地球艦隊と交戦するが、相対したのがヤマトだったことがこの国にとっての不運だった。連合国初の司令官戦死はこのフリーデ国である。

フリーデ星司令官


 普段はローブを纏っているが出陣時には独特の甲冑を着込んで出陣する人の良いフリーデ艦隊司令官。ベルデル将軍とは仲が良く、共に地球の宇宙侵略を憂慮しているが、ベルデルを同盟国と思っている彼に対し、ベルデル将軍は利用し合う関係と理解している。エトス、ベルデルとの駆け引きの結果、艦隊戦では中央に布陣することになり、不運にもヤマトと相対したことが彼の悲劇であった。ヤマトの攻撃で艦隊はほぼ壊滅し、彼も三隻のフリーデ船を率いて移民船攻撃を試みるが、ヤマト重爆機の攻撃で戦死する。外見上も地球人とほぼ同じで、好戦的な発言は少なかったことから、実は話せば分かる相手では無かったかと惜しまれる人物である。

 (名台詞)
 「やはり地球は、、」(実は平和主義者の心証を垣間見させる場面)

フリーデ戦艦艦長
 フリーデ軍司令官に直卒する戦艦の艦長。人格者の司令官よりはくだけた性格のようであり、ノリ良く移民船をミサイル攻撃したがヤマト重爆機に爆撃されて爆死。



4−4.取りこぼし
 ヤマトのキャラは復活編でも多いです。各々かなり個性的なので、ここでは所属陣営に関わらず先の紹介で取りこぼしたキャラを紹介します。

古代 雪


 言わずと知れた主人公古代の妻。この紹介を書くまで筆者も存在を忘れていた元ヤマトのヒロイン。第一次移民船団に同行し、護衛艦でSUSの攻撃を受ける。その後行方不明。夫進の育児放棄で人生の目的を見失った娘美雪を佐渡先生の更生施設に預けるなど、実はしっかり者の妻像が伺える。「宇宙の海は俺の海」など、ヤマト没後にSF講談物を読みふけった影響で育児放棄と地球逃亡の元となったハーロック思想※に染まった夫進にも理解を示し、三ヶ月おきに書いている手紙では優しい言葉を掛けている。なお、余計なことだがSUSに攻撃された際に、昔の時代劇(眠り狂四郎とか必殺仕事人とか)ではおなじみの「帯グルグルストリップショー」を披露し(しかも二回も)、年老いたファンにサービスする気配りも見せている。ただ、作画の問題上、そんなに美しいシーンではなかったのが惜しまれるところである。


SUSに襲われる雪

(名台詞)
 「無事にお帰りになる日を美雪と二人で待ってます。」(古代への手紙)
 「あなたの勇気がいつも地球を救った。」(古代の回想場面)
 「ワープ!」(直後被弾して行方不明)


※ハーロック思想 「宇宙の海は俺の海」、「命を捨てて俺は生きる」といった言葉をスローガンとし、地球を「明日のない星」とみなして宇宙で放浪し、厭世的に生きることを旨とする旧ヤマト時代に幅を利かした危険思想。やはり古代の兄守が感染している。

重爆機パイロット
 ヤマトに搭載されている複座の「重爆機(コスモパルサー重爆型)」は機体全長ほどもある巨大爆弾を二発搭載し、その威力は一撃でフリーデ戦艦を破壊する。ヘルメット越しに東洋系の顔立ちを持つ無名のヤマト隊員である重爆機パイロットはブラックホールの戦いでヤマトが討ち洩らしたフリーデ戦艦を追撃し、巨大爆弾で完全にとどめを刺した。その華麗さと職人的な腕前は名前付きパイロットの小林や美晴を完全に凌いでいる。数あるヤマト隊員の中でも、いぶし銀の存在感を放つ彼は隠れたヤマトのエースである。

羊飼いのおじさん
 見たところスイス人と思われる山岳地で羊を飼う初老の男性。さらに父親とおぼしき人物と老け顔の年長の妻がいる。アルプスの牧場から発進する移民船団を見送るが、手塩に掛けて育てた羊たちが船団に乗船できないことを不憫に思い、羊と一緒にブラックホール迫る地球に居残る。結局ヤマトの活躍で助かったはずだが、帽子を胸に置き、妻と共に空を見上げる彼の凛とした視線はセリフ無しキャラとはいえ、彼のそれまでの生き様、信条をも感じさせる名場面である。

チベットの僧
 チベットに住む高僧の一団。希薄大気のヒマラヤの山上から船団の無事を祈っていた。一次と二次は祈りは通じなかったが、高山病にもめげずに祈り続けた祈りは神に聞き入れられ、第三次船団には通じたようである。羊飼いのおじさんや真田さん同様地球に居残ることを選んだが、ヤマトの活躍により生存したと思われる。その後彼らが元寇襲来時に同様に祈祷を行った比叡山の僧同様、地球防衛軍に祈祷料を請求したかどうかは不明である。

戦艦ブルーノア艦長
 第一次船団の護衛艦隊の旗艦、ブルーノアの艦長。上条の師匠。過激で暴力的な部下に危険思想を吹き込んだ張本人。SUS軍の奇襲を受け、戦死したものと思われるが、緒戦から「撃って撃って撃ちまくれ」という威勢の良さは「この弟子にしてこの師あり」と後の上条に大いに影響したように思われる。

ライオン、ゾウ、キリンほか動物たち
 復活編は他のヤマトに比べても動物の登場シーンが多い作品だが、移民船団に乗せられず、地球に残ったこれらの可憐な動物たちは作品のテーマが従来のヤマトよりも拡がり、地球人類の生命ばかりでなく、全ての生物の「いのち」こそが尊いのだという復活編の深遠なテーマを示している。特に中心動物ライオンは冒頭から登場し、ブラックホール迫る天に向かってガォーガォーと吠えるシーンは作品に感動的なメッセージ性を付加している。クジラタンチョウヅルなど数百匹が登場しているが、彼ら動物たちが一堂に会したアフリカのサバンナにはバッファローはいないはずであることは突っ込んではいけないことである。

(名台詞)
 「ガォーッ! ガォォーッ!」(ライオン)
 「フエッフエッフエーッ!」(クジラ)
 「パオーン! パオーン!」(ゾウ)

 以上でキャラ紹介は一巡しましたが、改めて見てみるとやはりどのキャラも造型がしっかりしていますね。割とマイナー、出番の少ないキャラ、動物たちにも一本筋の通ったものを感じるのは、やはりこの作品の優れたところです。



5.メカニック
 復活編には大したメカニックはないです。敵味方双方ともそれほど魅力的なメカは登場しないので、この項目は割愛しようかと思いましたが、とりあえず簡単に触れることとします。敵軍メカはキャラクター欄で大方触れたので、地球防衛軍のメカが中心となります。

<地球防衛軍・宇宙戦艦>

@宇宙戦艦ヤマト
 タイトルの地球防衛軍の歴戦の宇宙戦艦。一七年前の戦いで自爆してアクエリアスの海に沈んだが同所で新造されて復活する(一応、このサイトでは新造説を採る。あまりにも性能が違いすぎるため)。全長は前ヤマトは265メートルだが、新ヤマトは300メートル超、全幅は60メートル近い大戦艦と思われる。映像で表現される限りでは地球最大、最強の宇宙戦艦。新型波動エンジンを装備し、以前のヤマトより格段に上の戦闘力、防御力を誇っている。さらにホログラムを用いた戦闘管制システムECIが第三艦橋に装備され、艦橋自体も大型化している。

(筆者コメント)
 以前のヤマトの危険部署といえば第三艦橋と副砲だったのですが、比較的堅くなった新ヤマトとはいえ、その伝統はしっかりと踏襲されたようです。特に第三艦橋は作品の度に落ちる、壊れると有名な部署で、しかも使われたのは全シリーズを通して一度だけというヤマトの盲腸なのですが、今回の復活編ではこれも役立たずの第二艦橋を凌ぐ有用さを見せつけます。

<ヤマトの新装備>

新型波動エンジン
 以前のヤマトは波動エンジン一基で航行していたが、復活ヤマトは六基のエンジンを円筒状に配してメインエンジンとしている(噴射口は一基)。大きさ的に一基は従来の補助エンジンと同じ大きさであることから、新ヤマトは波動砲回路を持つ六基のエンジンと補助動力用の二基、合計八基の波動エンジンで駆動していると思われ、以前より相当パワーアップしている。

六連波動砲
 正式名は「六連装トランジッション(レボルバー式)波動砲」、名前の通り回転拳銃のように六基のストライカーボルトが回転しながら波動砲の連続発射ができる新型波動砲。この方式だと六連発のうち一発だけ波動エネルギーを充填し、カラカラカラと廻して止まったところで撃つ「ロシアンルーレット式波動砲」も可能なはずだが、SUS旗艦との一騎打ちで古代が地球の命運を掛けた波動砲ルーレットを廻すことは無く、その旗艦はゴルイに沈められた。一定のコードが入力されることで六連装全てのエネルギーを解放する「斉射」も可能であり、これはラストで用いられた。しかし、この斉射モードは艦に与える負荷が絶大で、事実上一度しか用いることができないものである。

ECI(Electronic Command Interface)
 ヤマトが装備する全てのセンサー・コンピュータを統合したホログラムを多用した戦闘管制システム。第三艦橋に装備される。オペレータは直径およそ10メートルの球形状のこの部屋で艦長のいる第一艦橋と緊密に連携しつつ、半径数光年の宙域の動向を精査する。以前のヤマトの探知機器は輝点しか映らない球形状のレーダースクリーンで、それも二人がかりで操作していたが、新システムは誘導ミサイル士官のほか、波動砲コントロールにまで情報を送ることができることが作品で確認されている。

※この艦橋内部の表現は筆者も感心した点で、ヤマトは以前の造形がやや古いのでECIといっても絵柄は前とあまり変わりませんが、戦艦ブルーノアなどはほとんどホログラムで艦橋設備が構成されていて、この三次元映像の多用された運航空間はまさに未来の戦艦のものです。実は筆者も自分の作品で「三次元ホログラム」は指揮装置の一つとして出しているのですが、実際にどういった絵になるかまではイメージしていませんでした。そのあたりが良く表現されており、ECIの表現は作品でも結構力の入ったものです。

新型次元羅針盤
 以前の次元羅針盤はガラスの球形ケースの中にヤマトの模型が入っていて進路を表示していたが、新ヤマトでは完全にホログラム化されており、ドック時には羅針盤の球体は消えている。

新型中央作戦室
 床に巨大な映像が表示される方式は以前と同じだが、オペレーションには脳波コントロールが用いられ、ヘッドギアから論理的思考を読み取ることでオペレータは任意の情報を取りだして表示することが可能である。また、大型パネルが正面に一枚装備され、艦内各所と連絡を取ることができる。

防御ミサイル
 艦首と艦尾のヤマト大型ミサイルは前作でも白色彗星の基地を一撃で粉砕してキノコ雲を生じさせるなどほとんど核兵器だったが、新ヤマトのミサイルは加えて散弾機能や展開してのバリヤー機能を装備している。地球連邦の輸送船はヤマトより大型であるが、この装備によりヤマト一艦で輸送船全体を守るバリヤーの構築が可能になった。SUSビームやフリーデミサイルでは貫くことはできないが、バリヤー内側からのヤマト主砲攻撃は可能である。

<廃止された装備>

ヤマト艦内工場
 前作では天才技術者真田があらゆる新兵器を開発したヤマト工場だが、今作では真田は科学局長官に昇進してヤマトに乗艦しないため、工場のスペースはミサイル艇信濃の格納庫に作り替えられた。同じスペースがあるならば、こんな自爆艇ではなく、もっと有益な使用方法があるものをと思うのは筆者だけではないだろう。

第一艦橋地球儀
 以前のヤマトでは艦長席の左右に巨大な地球儀が半球ごとに左右に置かれていたが、これは誰が見ても無意味な装備のため、新ヤマトでは廃止されている。

波動爆雷
 波動エネルギーを封入して異空間に放つヤマトの対潜兵器。怪しい浄水器のネーミングではない。波動カートリッジ弾の応用編で、ヤマト3でガルマン艦隊の次元潜航艇相手に用いられた。このように戦艦ヤマトには異空間相手の敵に対する戦闘能力は元々あるのだが、新ヤマトではこの兵器は用いられていないことから、取り外されたものと思われる。

<地球防衛軍・護衛艦>

A戦艦ブルーノア
 冒頭に登場して数分で撃破された防衛艦隊の旗艦、一応戦艦に分類しようとかと思ったが、上条を救出した古代が「護衛艦」と発言しているので護衛艦にしておく。エンジン以外はヤマトよりヤワな金属で作られており、SUS戦艦のビームで艦橋が壊れるなどヤマトでは考えられない脆さを見せる。実は旧ヤマトの暗黒史、「ヤマト2520」に未来の戦艦として登場した艦の焼き直しであり、元のデザインはシド・ミード。が、著作権の都合かミードのデザインをいくぶん改悪しており、特に取って付けたようなデルタ翼は黄金バットを彷彿とさせる醜悪さである。

(筆者コメント)
 コメントするほどのデザインじゃないです。

Bスーパーアンドロメダ級護衛艦
 これを「アンドロメダ」と呼んでいるのは松本零士監修の大山トチローが出るしょぼいゲーム(プレステ)の関係者と「大ヤマト零号」も作っているパチンコ業界の方々だけなので、元のアンドロメダとは似ても似つかない不細工なこのデザインの戦艦を当サイトでは「アンドロメダ」とは決して呼ばないことにしたい。大型護衛艦とか。実は装備も旧アンドロメダより主砲の数が減るなど劣っており、大きさもヤマトより小さい戦艦である。なお、筆者がこの項で「戦艦」と書くのは「戦闘艦」という意味であって、キャピタル・シップ(大型戦艦)の意味ではない。

C主力護衛艦


 以前の主力戦艦に似たフォルムの拡散波動砲装備の護衛艦。元の主力戦艦がそれほど大したデザインでは無かったが、復活編のそれはさらに悪くなり、ほとんど空飛ぶ筆箱である。スーパー何とか型より少し小さい艦である。こんなデザインならガキでもできる。

<地球防衛軍・艦載機>

Dコスモパルサー


 以前のコスモタイガーに比べると格段に宇宙戦闘機らしくなった(カッコ悪くなった)ヤマトの艦載機、ヤマト以外にもかなり広汎に用いられているようであり、大型爆弾を積んだ複座型は重爆機、カーゴユニットを搭載した機体は救命艇として用いることもできるようである。標準的な武装として機首に大口径の機関砲を二門装備し、さらに対地攻撃しかできなかったコスモタイガーと異なり、対空ミサイルとして用いることもできるチョップスティック型ミサイルを16発装備している。また、収納性にも優れており、翼を折り畳むことでこれまで何かと収納能力を疑問視されていたヤマト格納庫にスペック通りの20〜30機の搭載が可能になっている。特にミサイルの威力は凄まじく、機体全長の3分の1とどう見ても対空用には過剰すぎる爆薬量が搭載されているように見え、これほどの大型ミサイルとなると付近で爆発しただけでベルデル戦闘機なら木っ端微塵にできるようであり、映画でもそういう表現になっている。この辺のミサイル設計思想は誘導装置の開発に後れを取ったために大火薬量を用いたロシア製ミサイルに通じるものがある。それが16発も搭載されている上に、なお運動性はベルデル戦闘機を凌いでいるのだから、事実上、全軍を通して無敵の戦闘機である。

<その他>

E信濃
 以前の暗黒星団帝国の戦闘機に似た、イモムシ状のヤマト大型機。ヤマト艦底に収納され、事実上副長の大村専用機である。ゴルバを一撃で仕留めた波動カートリッジ弾を24発搭載するが、この装備といいフォルムといい、全般的に暗黒星団色が強く漂うヤマト搭載兵器の一つである。SUS要塞の攻撃を受けて制御不能になり波動カート弾頭ごと要塞に墜落。結果としてSUS要塞の防御バリヤーは砕かれたが、これが地球上でなくて本当に良かったと思える大惨事である。なお、この事故で副長の大村は殉職した。

F移民輸送船
 ヤマトが護衛する全長3キロ(2.8キロ)の巨大輸送船、ヤマト史上最大の地球側船舶で(それまでの最大は完結編に登場したやはり移民船の1.2キロメートル)、10万人の避難民を乗せてアマール星に向かう。移民船団は1船団につきこの移民船が三千隻ほどで構成されており、各々二百隻程度の護衛艦に守られている(数が少ないという向きがあるが、船団を球形状に並べてみて、そこに護衛船を配してもらいたい、十分な数である)。実は意外と頑丈な船で、少なくともスーパー何とかとか筆箱戦艦とかブルーノアなど護衛艦よりははるかに丈夫である。護衛艦隊がほぼ全滅した第一次、二次の避難船団でもおよそ半数が生き残り、アマール星に到着していたことが作中の古代の台詞から判明する。合理的で簡素なフォルムだが、側面に展望窓を多く配するなど優美な作りで、乗客一人あたりのスペースも百平米以上(150u)と余裕があることから、実は各々の避難民に個室スペースが割り当てられ、おそらくショッピングモールや娯楽場などもある、かなり快適な船舶であると思われる。なお、これは「機動戦士ガンダム」のスペースコロニー(30u/人・公式設定)よりはるかに快適な居住空間である。その速度は旧ヤマトよりもはるかに速く、およそ1ヶ月(長距離ワープ併用なら半月)で3万光年先のアマール星に到着する。これだけの船舶を短期間に大量建造できる地球にSUSが敵わないのはある意味当然であった。

(筆者コメント)
 この船はかなり良いです。できれば二部以降ではこの船でも話を作って欲しいですね。

G戦艦マヤ
 メッツラーの旗艦の縦長十字架形状の超大型戦艦。もちろんヤマトよりも大きく、ゴルイの旗艦シーガルより大きい。全長は400メートル程度だが、縦長はその3倍程度に達する。何かの表彰会でもらうオブジェのような形状の戦艦である。ゴルイの戦艦シーガルの体当たりを受け炎上し、そのまま爆沈。視聴者に実は段ボールで作られているのではと思わせた。作品中で主砲はおろか対空ビームさえ撃たずに沈められた唯一の戦艦。なお、SUS語で「マヤ」とは「見かけ倒し」の意味である。

Hコスモゼロ
 ヤマトのカタパルトから発進する旧作以来の古代の専用機、ヤマト後部のカタパルトから発進する。「完結編」で複座機であることが明らかになるが、機銃主体のドックファイターでミサイル母機でも無いのに後方にレーダー手を必要とする設計はこの機体がイスカンダル以前の旧い地球の技術で作られていることの証左になる。復活編のコスモゼロは胴体部分から大きく折り曲がることから改良型ないし新型と思われるが、今回は戦闘には参加せず、専ら美雪ちゃんをヤマトに運ぶために用いられたのでやはり複座機である。

I次元転移装置
 移動性ブラックホールの正体である異次元星人の作った物質収集機、その影響半径はほぼ木星の二倍の大きさを持ち、惑星でも何でも吸い込んでは物質不足の異次元界のエネルギー源にしている。移動速度は光速の十分の一。測定された質量は太陽の300倍だが、これはおそらく理論値で周辺に及ぶ影響はこの数値よりかなり小さく、太陽系の惑星の軌道もずれず、ヤマトが接近しても別に吸い込まれないため、その辺は空間エネルギーとか別の説明があるものと思われる。



6.宇宙海戦
 解説しなくても作品を見た方がと思いますが、作品のイベントとして簡単に解説します。

@第一次移民船団襲撃
 星間国家連合と地球防衛軍の最初の戦い。参加兵力はSUS軍九百隻、地球軍二百隻、あと、三千隻の移民船団。サーチネットで陣形を把握され、近距離ワープで奇襲を受けた地球艦隊はなす術もなく崩壊、移民船は半数が撃破される。大破した旗艦ブルーノアは近辺の古代のいる辺境星系に逃れ、上条が拾われる

A辺境星系の戦い
 大破した旗艦ブルーノアで上条からSUS軍の情報を受けた古代がブルーノアを追跡してきたSUS艦と交戦。上条と共同して撃退する。その後、古代らは地球に帰還するが、第二次船団は既に進発していた。戦力比は地球側がブルーノア(大破)に対しSUS戦艦三隻。

B第二次移民船団攻撃
 一次に引き続く連合軍の船団攻撃、エトス、フリーデ、ベルデルの三軍が共同して地球艦隊を攻撃する。戦法は一次とほぼ同じ。連合同盟国の艦はSUS艦より攻撃力が高いため、参加兵力は連合軍三百隻、地球側二百隻、移民船も前回と同じ三千隻、やはり護衛艦隊は壊滅し、移民船の半数が撃破される。

C星間国家連合、地球艦隊撃滅決議
 二度の戦いで地球軍を敗退させた連合軍はSUS要塞で作戦会議を開き、メッツラーの提案で地球軍撃滅が決議される。以下は実況中継、何だか社民党の集会っぽい。

(連合会議実況中継)
 場所:連合国の趣味の悪い赤色の集会室
司会者: 「星間国家連合会議議長、SUS代表、メッツラー総督閣下! 登壇!」
 ワーワーキャーキャーキエー(群衆の声)、メッツラー、ナヨナヨと手を振って応える。デスラーほどには決まらない。
メッツラー: 「我らを脅かす宇宙の邪悪、地球が動き出した、、」
 その後、地球軍になす術もなくやられるSUS艦(当たり前だが)の映像が映され、全会一致で地球軍撃滅の決議


 「登壇!」とか、どこの共産党かと思いますが、このノリが連合軍です。

(筆者コメント)
 先にご紹介した通り、地球軍の移民船はかなりでかい船です。一隻でSUS艦の十倍以上の大きさがあり、これが三千隻もいるのですから、普通に考えるとヤマトに跳ね返されるしょぼいビームしか無いSUS軍が九百隻いても物量的に全部沈められるとは思えません。また、@〜Bまでを見ると、戦力不足なら全軍一緒に攻撃すれば良いものを、最初はSUS、次は連合三国とバラバラで攻撃しているんですね。連合軍の艦はSUS艦より強力ですが、それでも数が足りません。思うに、最初の二回の戦いは彼らにとっては邀撃戦で、本格的に全滅させるつもりは無かったのではないでしょうか。

 と、なると、Cの作戦会議が重要で、ここで初めてバラバラに戦っていた連合軍が一体化して、共同で地球軍を迎え撃つ体制ができたことになります。所詮アニメですから深入りは禁物ですが、筆者には一連の事件はこういう文脈で読むこともできると思います。各々総掛かりで戦いを挑んでも、護衛艦隊はともかく船団撃滅はできなかったのですから、彼らが地球軍に恐怖するのも無理のないことです。また、護衛艦隊との交戦で特にSUSはかなり(百隻ほど)やられていますから、場末の護衛艦隊相手に一回の交戦で戦力の10%以上も失っては(しかも不意打ちとSUS有利の状況で)、同盟国を戦いに引き込みたくなるのも分かるような気がします。おそらく最初は地球船団の動向を察知したSUSが単独で、二回目はその戦いぶりを見た同盟国が呼応して五月雨式に戦いを始めたのでしょう。

Dブラックホール護衛戦
 復活編前半のキモになる戦い。ようやくサーチネットの存在を察知した地球軍がネットを迂回して近郊のブラックホールに赴き、そこで生じた戦い。エトス、フリーデ、ベルデル、SUSと連合軍の全軍が出動している。地球側の旗艦は宇宙戦艦ヤマト、護衛艦、移民船団の規模は一次、二次と同じ。ヤマトの活躍で移民船団は避難に成功し、護衛艦隊とヤマトも戦いつつ離脱に成功し、対連合戦で初の地球側の勝利になる。連合軍はフリーデ星司令官が戦死。SUS艦隊は参戦せず。

(筆者コメント)
 実はこの戦い、映像にする前に机上でよく練られていると思います。ブラックホールを利用したスイングバイですが、「120宇宙ノット」で船団は長距離ワープに必要な高速度を得るわけですが、確かヤマトの世界では100宇宙ノットは光速なんですよね。これは光すら歪むブラックホールの時象の地平面に入り込むほどの超高速だからこそ可能な速度で、一時的にですが船団は光速以上の速度を出しています。まずこのプロットが西崎さんえらい。

 続いては、サーチネットを迂回したということですね。このことでヤマト艦隊はブルーノアみたいな直近からのワープ攻撃を受ける可能性が無くなり、敵がやってくるにしろ、ある程度の距離を置いて余裕を持って迎え撃つことが可能になった。そして、布陣としてブラックホールを後背に艦隊を展開したことですね。これで戦力で勝る敵に包囲される可能性も無くなったわけです。さらにいえば操船の難しい宙域ですから、大兵力だから有利とは必ずしも言えません。結局、SUS軍は周囲をウロチョロするだけで展開できる場所が無く参戦してませんからね。SUS艦の性能を考えれば無理もない話でしょう。

 ゴルイの行動ですが、戦いの推移を見ていると、どうも彼は移民船の過半がワープに成功した時点で作戦の失敗を悟ったようです。そこで停戦するわけですが、この場合、ヤマトと若干の護衛船を沈めても勝敗は既についていますから、彼の行動は必ずしも彼の奉ずる武士道のヒロイズムだけではなく、後々の戦力温存を図ったという考え方もできます。演出についていえば、シーガル艦長がヤマトの戦いぶりを誉める場面がありますが、そういったシーンでは例えばヤマトが迫り来るフリーデ艦を立て続けに撃破するとか、「らしい」場面を挿入して欲しかったと思います。

Eアマール星空襲戦&連合軍同士討ち(エトス vs.SUS)
 アマール星に到着した地球艦隊には連合軍はなぜか手出しができないらしく、メッツラーの命令で少数のSUS航空機と戦車がイリア女王の王宮周辺の下町を爆撃するなどイヤガラセ的な攻撃をする。宇宙戦艦も持っているアマール軍には陸軍は無く、アマール兵はバズーカ砲などで応戦するが戦車には歯が立たず蹂躙される。同盟国を攻撃するSUSを見たエトス星のゴルイ提督がメッツラーを非難して同盟は決裂、アマール上空でエトス艦隊とSUS艦隊の戦いも始まる。最終的にはヤマトも参戦し、SUS側は旗艦マヤが撃破され、エトス軍はゴルイの旗艦、戦艦シーガルが失われる。アマール市街を襲っていたSUS航空機はヤマトの対空ミサイルで撃退される。その後、アマールのイリア女王はヤマトとの同盟を宣言する。

(筆者コメント)
 基本的にはメッツラーが決議違反の独断攻撃を行ってゴルイに返り討ちという戦いでしょう。SUSは横暴な国ですが、連合諸国は一応相互利益と防衛のためという連合の性格の違いが出ているエピソードです。

FSUS要塞戦
 アマールと同盟した地球艦隊がSUS軍の本拠、メッツラーの逃げ込んだSUS要塞に戦いを挑む戦い。地球側はアマール艦隊を併せて二百隻程度、連合軍はSUS軍のほかフリーデ軍、ベルデル軍を加えて三百隻程度、エトス軍は離脱、先に戦いがあったことから、両勢力ともかなり戦力が低下している。艦隊戦の開始直後にバルスマンの要塞がハイパーニュートロン砲を掃射し、双方とも大打撃を受けてフリーデ、ベルデルが戦線を離脱する。このニュートロン砲攻撃でアマールのパスカル将軍が戦死。その後、副長大村の特攻とヤマトの波動砲攻撃で要塞は破壊され、切り札のSUS潜宙艦もエネルギー源の太陽型発電機(たぶん人工ホワイトホール)を破壊されて撃破される。ヤマトは地球に帰還、残りの艦隊は画面では全滅したように見えるが、おそらく少数は生き残っており、ヤマトの命令で船団守備のためアマール星に後退したと思われる。

(筆者コメント)
 作品のクライマックスの戦いなのですが、ハイパーニュートロン砲と波動砲の大ざっぱな撃ち合いという感じで、もう少し細かい演出の欲しかった戦いだと思います。地球艦隊はたぶん全滅まではしていませんが、画面ではそうにしか見えず、要塞戦の後半はほとんどヤマト一隻だけで戦っているように見えますが、この作品全般に言えることですが、せっかく大艦隊を出したならそれらしく動かして欲しかったという恨みはありますね。

G美雪救出作戦
 SUS要塞を破り、地球に帰還したヤマトだが、最後の移民船に乗り込む予定だった古代の娘、美雪の乗った輸送艇が落雷を受けて墜落してしまう。救出に向かおうとする上条と小林を抑え、古代は単身コスモゼロで発進する。

(筆者コメント)
 一番ツッコミ所のある場面じゃないでしょうか。古代君があの隊員服(白地に赤矢印)を着た姿で美雪ちゃんとホームドラマをやっている場面はそれはそれで意外性もあり良い場面だと思うのですが、何といっても最初の乗船時に美雪と一緒に乗って墜落した、見たところ20〜30人の「佐渡フィールドパーク」の方々はどうなったんでしょう? まさか美雪以外は全員死んだとか、ありえないですよね。美雪ちゃんカスリ傷でしたし。

 これはですね、やっぱり大人の太っ腹な解釈が必要かと思います。飛行機は不時着して壊れたのですが、美雪以外のフィールドパーク員はちゃんと生き残ってですね、古代のコスモゼロを現場に誘導したんです。そこで「まだ機内に人がいるんだ!」ということで古代君は美雪ちゃんを発見、救出してヤマトに連れ帰り、残りの方々はヤマトからのヘリコプターで救助されたと解釈しましょう。しかし、その場面は尺の都合でカットされていたとか。

H移動性ブラックホール迎撃戦
 異次元星人のヒントで移動性ブラックホールが実は異星人の作った次元転移装置であることを知った古代がヤマトを突入させて波動砲で装置を破壊しようとした戦い。通常波動砲では威力不足のため、6連斉射を古代は命じるが、それはヤマトの船体の限界を超え、艦が分解する危険があるため、ヤマトを再建した真田が禁忌として封印した発射モードだった。折原の計算で封印が解除され、6連斉射が可能になったヤマトは全速力でいよいよ地球近辺に迫ったブラックホールに突入する。



7.外部リンク

 既にいろいろなコメント、動画が出ていますが、目に付いたものだけ紹介します。

@動画
岡田斗司夫の「ひとりテレビ」宇宙戦艦ヤマト復活編
深読み、お葬式の音楽&俺が死んだらヤマトな・・・
宇宙戦艦ヤマト復活篇・その魅力のすべて1/3
Star Blazers Rebirth / 宇宙戦艦ヤマト 復活篇(プロモーション映像)
宇宙戦艦ヤマト復活編 特報 予告編16:9
宇宙戦艦ヤマト 復活篇 特報2&予告2

A作品紹介
ウィキペディア・ヤマト復活編 どことなく悪意を感じる紹介文
アンサイクロペディア・宇宙戦艦ヤマト これで「ユーモア」と言われてもね。実はウィキと同じ面子、同じ会社
復活篇ノベライズ 最初は公式作品の原案かと思いましたが、オリジナルのノベライズです。

B評論・ファンサイト(ポジティブ評価)
M19981-KOBE ヤマト関連では老舗のサイト
宇宙戦艦ヤマト 復活篇 - 前田有一
末広響子のきょうこの頃
近藤スパ太郎の『Riding High 〜♪』
ヤマト復活篇 雪奪還篇 復活篇の続編のオリジナル小説
「宇宙戦艦ヤマト 復活篇」みた。
宇宙戦艦ヤマト 旅の続き ネット上の評価より、ご自身で判断された方が良いかと思います。

C評論・ファンサイト(ネガティブ評価)
「宇宙戦艦ヤマト復活編」は黒羽出身・西崎義展氏の復活劇だ
わしはこんなヤマト、みとうはなかった。映画「宇宙戦艦ヤマト 復活篇」
『宇宙戦艦ヤマト 復活編』の制作費未払いのせいで、アニメーション制作会社XEBECが倒れそうな件について
宇宙戦艦ヤマト復活編 [映画鑑賞]  納得できる話が、何一つ無い!
【映画2009】宇宙戦艦ヤマト 復活篇 脳みそにウジがわいたようなぞんざいな脚本



8.ディレクターズ・カット版について(2017年)

 このヤマト復活編についてはDC版と呼ばれる、最初の公開から3年後に公開された再編集版がありますが、製作者の西崎義展氏はこの作品の1年後に亡くなっていましたし、それから2年後というと製作者のカラーはだいぶ希薄なもの、むしろファンが最初の公開時には用いることのできなかった昔のヤマトの音楽、効果音を使って編集したものという印象です。もちろん、このコラムよりもだいぶ後の話です。

 DC版の中身はほとんど変わっておらず、せいぜい地球がヤマトによって救われるか(本コラムの作品)、カスケードブラックホールに飲み込まれて続編に続くか(DC版)の違いです。ですが、西崎氏が亡くなった以上、また、この作品自体のポテンシャルからしても続編が制作される可能性はほとんどないでしょう。

 DC版については、筆者も一度目を通しましたが、例えば小林が後半で旧ブラックタイガー隊の服を着用する理由とか、上条に両親がいてSUSの攻撃で死亡したことなど、最初の公開時にはカットされた細かい話は補完されていますが、その程度の話であり、別に金を払って見るほどのものじゃありません。このDC版が評価されているのは別の理由によります。

 DC版では最後に地球が真田さんや佐渡先生共々ブラックホールに飲み込まれ(ヤマトは突入しない)、茫漠となった空間に残存地球艦隊が徐々に集まり、ブラックホールから別の宇宙に飛ばされた地球の行方を艦隊の一艦ムサシが探知して古代が地球のある銀河中心部にヤマトを発進させるというエンドですが(折原は死なない)、この「残存」艦隊が全ヤマト作品のダイジェストとも言うべき群像で、最初のレーザー突撃艦から完結編の矢矧級巡洋艦まで、退役したアンドロメダ級戦艦も含むヤマトのほぼ全艦がテロップ付きで登場する場面はそれはそれで壮観なのですが、正直、もういいよという気分になったことも本当です。

 案外忘れられていることですが、荒唐無稽が当たり前だったアニメSFの世界にリアリティを持ち込んだのはガンダムではなくヤマトが最初です。実際のヤマトはそれでもファンタジーやロマンの香りを残すものでしたが、パート1に見られたごとく、とにかくヤマト乗員が頑張らないと「あと〜日」で地球が滅びてしまうというのは、当時作品にはなかったリアリティです。この作品の支持者は多少話を膨らませても許しますが、基本的には作品に「現実的に説明のできる」筋が通っていることを求めます。

 現実の国家や軍隊は模型愛好者の趣味で維持されるものではなく、ヤマトも荒唐無稽ですがそのリアリズムは押さえていました。それは侵略とか征服、地球防衛など目的のために存在しており、「無駄なメカ」はなかった記憶があります。作品で描かれた宇宙戦争を考えると、完結編やさらばの軍艦までなら再登場はまだ許せるにしろ、沖田艦やミサイル艦17号はないだろうと白けたというのが本当です。もしこれがDC版再販の理由だとしたら、「たったそれだけ?」と首を傾げたくなるというのが本当です。

 筆者としては、復活編は先の2520同様、ヤマトにしてヤマトにあらずと思っています。元になったシリーズとの繋がりは希薄で、それは古代や真田など前作のキャラは登場するものの、彼らを取り巻く世界に前作との連続性は全くありません。ですから、この作品にヤマトの音楽や効果音は全く似合いませんし、そうした所で筆者が2520に感じたような「場違い」感、違和感を感じることになります。そういう作品は前作のレガシーに頼らず独自の世界を探求すべきであり、DC版は筆者に言わせれば「蛇足」ということでしょうか。