MUDDY WALKERS 

 ESSAY|2006WBC特集

勝利のツキが舞い降りた瞬間
奇跡のライトハンドで日本優勝! スモール・ベースボールで頂点に。


勝利のツキが舞い降りた瞬間

奇跡的に準決勝進出をはたし、三度韓国と対戦することになった日本。いや〜、すごかったですね。福留が打ったボールがぐんぐん伸びていくのを見て、「やった〜〜!」と叫んでしまいました。横で寝ていたチャーリーが、私のはしゃぎぶりにびっくりして飛び起き、一緒にはしゃいでくれました。

これまで2試合をいずれも1点差で負けている日本。今日も厳しい試合になるだろうと思っていました。教会に行っていたので中盤までは試合を見ることができず、こっそり携帯で速報を見ていましたが、ずーっと両者得点なし。終盤にもつれこむと、継投に難がある王監督だけに、厳しいなあ〜と思いつつ、家に帰ってテレビをつけました。7回表、ちょうど先頭バッターの松中が打席に入ったところでした。

松中がライト前ヒットでえっさ、ほっさと2塁へ滑り込んだとき、ベースをたたいて喜びを表現していましたね。一瞬、間に合わなくて悔しがっているのかと思いました。ここでいつもと違う流れになってくれるといいのだけれど・・・と思いましたが、次のバッターが多村。これまでさんざん失敗しているというのに、王監督はバントをさせます。

「勝ちに不思議の勝ちあれど」の不思議が、ここにあったんですね〜。勝因は何かと振り返ってみたときに、思い浮かぶのはこの場面。ここで多村がいつも通りにバントを失敗したことが、勝利のツキを呼び込んだといったら、ヘンでしょうか?
バントの構えをした多村を見て「あ〜、結局この負けパターンか?」と思ってしまった人も多かったのではないかと思いますが、案の定多村がバントを失敗して代打が福留、という時点で、気の短い私は「なんだ、もう思い出づくりに入ってるのか」と一瞬思ってしまいました。一言でいうと「ダメだこりゃ」って感じです。

だけど、ここが野球の面白いところです。同じ相手と3回もやると、相手のパターンが読めてくる。バントのヘタな多村にバントをさせて余裕で失敗、次が全然当たっていない福留、とくればもはや相手チームまで「ほっ」としてしまう。そういう一瞬のスキが出来たんじゃないかなと思います。0−0の厳しい投手戦で、この一瞬の安堵感で、エアポケットのような間ができた。ここに、相手投手にスキが生まれ、まるでバットに吸い寄せられるようなボールを、投げてしまったんですね〜。

そこでなぜ福留だったのか、これが不思議なところですけど、恐らく、メキシコの勝利で拾った奇跡的な準決勝進出、これで一番救われた思いをしたのが、福留だったのかもしれません。打順の変更で3番はイチローになり、汚名返上のチャンスを失いかけていたところに、7回表1アウト2塁で代打に出ることに。もし1本出れば、これまでのふがいなさをチャラにできるというビッグチャンスです。一旦スタメンからはずれて、ベンチからゲームを見ることで、「ダメだこりゃ」とう空気にのまれず、むしろ相手の「ほっ」とした空気をキャッチすることができて、よく言う「開き直り」が出来たんじゃないかと、思いました。

もし、バントが成功していたら、こういった空気の変化は生まれなかったのですから、意外にピッチャーも持ちこたえ、0点で終わっていたかもしれません。そう思うと、多村のバント失敗が、勝ちを読んだという、不思議な答えが出てくるんですよね。

福留にホームランを打たれたら、韓国の投手は一気に崩れてしまいました。小笠原に当たったデッドボールは、わざとでしょう。この時点で、もうこの投手は精神的に折れてしまったなと思いました。里崎の2ベースで小笠原もホームに帰り、川崎の進塁打で2アウト3塁、次に代打で入った宮本がしぶ〜く三遊間を抜くヒットで里崎が帰り、つづく西岡もラッキーなポテンヒットで宮本が3塁へ。そしてイチロー猛打賞となる3本目のヒットで宮本が帰って、このイニングで一気に5点を取りました。たたみかけるような見事な攻撃。日本らしい「つなぎの野球」がついに出た〜!と、もう笑いが止まりませんでした。

先発の上原も、7回裏しか投げているのを見られなかったけど、素晴らしかったですね。前回(いつだっけ? アメリカ戦だったか)見たときとはちがって、テンポよく、びしばしとストライクが決まっていました。心配された継投も、大量得点の後ということで安心して見ていられました。ブルペンに久保田の姿を見たときは、「それだけはやめて」と言いたくなりましたが。

勝利の後、なんとも爽やかな気持ちになりました。ちぐはぐな攻撃ながら何とか1点差で乗り切る、という勝ち方ではなく、鬱積していたものを全部出して、きれいにつながる打線を見ることができたのが、何よりうれしいです。決勝は厳しい試合になるでしょうが、最後のごちそうとして、松中の本塁打がまだ残っていますから、そこに期待しつつ、次の試合を楽しみに待ちたいと思います。(2006.3.19)

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