◇MUDDY WALKERS
SF小説”An another tale of Z” 各話レビュー
ハマーンのテレビ出演で、過激な偏向報道に終止符が打たれ、スペースノイド糾弾の機運が高まっていた連邦の市民感情も変化しつつあった。 そんな中、故マイノル大統領の国葬が厳かに営まれる。葬列に並んだマシュマーとハマーンとは、悲しみに包まれた中、密かに視線を合わせるのだった。そんな二人の様子を目にしたリーデル首相は、そろそろマシュマーをこの任務から解放してやろうと決意する。 その頃、偏向報道対策にソロモンから呼び寄せられた情報部長のアンドリュー・フランシス・ハウスは、知り合ったばかりの人気キャスター、ベルトーチカ・イルマと某所にシケこんでいた。ベルトーチカは、女の勘でかぎつけたマシュマーとハマーンの関係を探ろうという腹である。大統領府ではジャミトフとバンカーが、ハマーンのテレビ演説後で変わった風向きに苦慮している。なんとかサイド5に逃れたエウーゴ艦隊は、月の廃都レスターブラウンで再集結に向け潜伏している。葬送の後の静けさの中、随所で次なる陰謀が静かに動き始めていた…。
姉マグダレナに養育を任せていた愛娘アイリスを引き取ることを決意したマシュマーは、彼女の国籍を連邦からソロモン共和国に移すために多額の金と時間を費やし、煩雑な手続きを済ませなければならなかった。つかの間の休日を終えて女帝業に戻ったハマーンは、ジオン大学のハインツ教授を呼び、連邦の反スペースノイド政策に対する見解を求めていた。その姿は、彼女と同様最近トップの座についたばかりのトム・バンカー大統領とは対照的であった。連邦制式艦隊の存在意義と果たすべき役割についてブルックス提督からの説明を聞いている彼は、要領を得ない返答を繰り返すばかりだった。 しかしそんな彼らの与り知らぬところで、新たな陰謀が静かに動き出していた。アクシズには反マハラジャ勢力「ジオン正常化同盟」の面々が集結し謀議している。そしてハマーンの元婚約者フリッツからの依頼を受けた狙撃手ゴールドマンもまた、仕事に取りかかろうとしていた…。
「ジオンの女王が狙撃されました、安否は不明。」 狙撃手ゴールドマンの恋人アイラ・フェートンは、勤務先の病院でこのニュースを耳にした。もっとも彼女は恋人の仕事についてはまったく知らない。自宅アパートに届いていたスイス銀行からの封書を開けた彼女は、自分名義の口座に驚くべき金額が振り込まれているのを知る。 マシュマーはこのニュースを、ソロモン国防省の食堂のテレビで知った。呆然と立ちすくむ彼だったが、娘のために新築した自邸に連絡を入れると、年若い家政婦チェーン・阿木に、今夜は帰りが遅くなることを伝える。ソロモン国防省では、共和国はじまっていらいの第一級の警戒指令が出されていた。ジオン公国では、クーデターの首謀者コルプ将軍が、本国艦隊司令官のドリス大将を味方につけることに成功。ソロモン政府に、在ソロモンのジュグノー大使の引き渡しを要求していた。リーデル首相は大使から事情聴取をすると、マシュマーに向かって言った。 「ジュグノー大使と共同し、女帝を救出せよ!」
ハマーンは外務大臣アスター・ダイクンらとともにコロニー「カールスバーグ」に逃れているという情報を得たマシュマーらは、ハマーン救出に向けてこのコロニーに潜入しようとしていた。特命を受けたベルテン情報社のイッアーク・ハイマンはハマーンを発見できないまま喫茶店に入ったが、そこで窓の外を歩く見覚えのある顔を見つける。 ハマーン救出の先遣隊に合流するために急いでいた「レイキャビク」は、知らないうちにジオンの「保全宙域」に入っていた。ジオンの巡洋艦「ムサリク」に発見され、マーロウ艦長は空気の読めないムサリク艦長ローゼン中佐のだらだらとした臨検に付き合わされることになる。その頃「リック・ディアス」に乗ったマシュマーは、ハマーンのいるコロニーに侵入。彼女を乗せた突撃艇を守って「レイキャビク」へ向かっていた…。
サイド3を脱出し、サイド5に亡命政権を樹立したハマーン。しかしバルザック大将率いるジオンの第一艦隊は、クーデター以降これといった動きもないままサイド3近郊で待機していた。意味のないパトロール任務で艦隊は分散。コルプ将軍側についたドリス大将の本国艦隊と対峙するどころか、傘下の艦艇が脱走するに任せている。エウーゴのクワトロ・バジーナはもう一つの立場、ジオン公国艦隊副司令官シャア・アズナブル大将に立ち返って第一艦隊の旗艦「グワンラン」に乗り込むと、女王陛下の命によってバルザックを解任、自ら艦隊の再編成に乗り出した。すでに地球連邦軍は、第三艦隊と第八艦隊を月のグラナダに集結させ、この内乱に乗じてジオンを再併合しようと動き出している。シャアによって再編された第一艦隊に合流すべく、戦艦グワンバンで出航するハマーンを見送ったマシュマーは、ソロモン共和国始まって以来となる大作戦「アライアンス02作戦」の発動を命じた。
ジオン内乱に介入しようと動き出した連邦軍に対してアライアンス作戦を発動したソロモン。これに呼応して、連邦軍第五艦隊がソロモン討伐に動き始めた。ソロモン駐留の第五艦隊はジャブロー事件後、艦隊の半数をサイド1に回さなければならなくなり、艦隊を集結させて再度ソロモンに到着するまでに5日間が必要だった。しかしソロモン軍は連邦第三・第八艦隊を迎え撃つため、すっかり本国を出払ってしまっていた。5日のうちに決着をつけられるのか? 頭を悩ませる作戦部長マシュマーのもとに、ハウスが新たな情報をもたらした。コルプ将軍率いる反乱軍が、ステルス戦艦「ケルベロス」にコロニー破壊用の核兵器Jミサイルを搭載し、首都星ズム・シチを狙っているというのだ。これは本国艦隊ドリス提督への恫喝だった。事態打開のため、マシュマーは決断を迫られる!
特命を受けたソロモン共和国軍のタケシ・ライヒ中佐は部下とともにズム・シチに潜入し、軟禁されていたドリス夫人と娘アルマを連れ出して、サイド5に送り届けるという少々厄介な任務に取りかかっていた。連邦艦隊と対峙していたソロモン艦隊のガーフィールド大将はマシュマーからの撤退命令を受け、本国に向かうことになる。ズム・シチを狙うミサイルを積んだ戦艦ケルベロスに対してレイキャビク艦長のマーロウはついに攻撃を命じるのだった。 イエガー中将率いるジオンの第二艦隊がズム・シチに近づいている。サイド3宙域にはシャアの率いる第一艦隊と連邦軍の第三・第八艦隊が残るのみとなったとき、反乱軍についていた本国艦隊司令のドリス大将は、ついに降伏を決意する。そして38日ぶりに、ハマーンはズム・シチにある宮殿のバルコニーに立ち、住民たちに歓呼をもって迎え入れられるのだった。
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